創業50年の老舗酒屋をメディアベンチャーが買収した理由 ── ECサイトでオリジナル日本酒を販売

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SAKETIMESを運営する「Clear」が、老舗酒屋を買収。

出典:SAKETIMES

日本酒専門メディア「SAKETIMES」(サケタイムズ)を運営するClearは、1965年創業の老舗酒屋「川勇商店」(世田谷区)を完全子会社化した。7月5日、Clearが発表した。同社は、オリジナルの日本酒の開発・販売に参入、高価格帯の日本酒に特化したEコマース「SAKE100」を始める。

SAKE100が扱うのは、すべてがオリジナル商品。生駒龍史代表は「少数精鋭の高品質なラインナップにする」と話す。それぞれの商品にテーマを持たせ、共同開発する酒蔵を見つける。酒蔵とは、商品の価値観や考え方を共有し、「唯一無二のものかあるかどうか」を重視して商品開発を進めていく考えだ。

日本酒EC「SAKE100」で日本酒の新商品を毎月発表

Clearは、「100年誇れる1本を。」というテーマで、SAKE100で扱う全商品を酒蔵とオリジナルで開発。2018年7月中旬にサービス開始を予定、国内外に展開する。海外向けに輸出交渉を始めており、北米・アジア・ヨーロッパを中心に、輸出を考えている。

商品はサービス開始時は2種類、それ以降は、毎月、1種類程度を発表する。商品の酒類は最大でも15種類まで。国税庁「酒のしおり」によると、日本酒業界では近年、高価格帯の商品が好調で、海外輸出も伸びており、SAKE100の商品も、7000円〜数万円(720ml)と高価格帯を狙う。

従来の高価格帯の商品は、製造コストに依存して値段が上がっていたが、生駒代表は「(製造コストではなく)付加価値を提供するかどうかに値段をつけていきたい」と言う。

そのためにも商品には、それぞれ固有のテーマ、価値観を持たせる。酒蔵の技術だけでなく、哲学も含めて、それぞれの商品を実現する酒蔵とタイアップする。

最初の2種類の商品は、「百光-byakko-」(720mlで1万7800円)と「深豊」(シンホウ、商品の正式発表はSAKE100の開始時)。

百光は、楯の川酒造(山形県)と共同開発し、クラウドファンディング「Makuake」(マクアケ)で233本を先行販売した。プロジェクト開始から3時間で目標金額を達成、計390万円の支援を集めた。百光は、「上質な味わい」をテーマにした。

深豊は、「竹葉」の銘柄で知られる「数馬酒造」(石川県)と共同開発。「数馬酒造は、耕作放棄地を開墾して酒造りをしている。酒を作るほど田園が蘇り、地域が循環する」(生駒代表)。仕上がりは、「米のふくよかさ」を意識した。

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Clearが始まるECサービス「SAKE100」。

出典:Clear

川勇商店とClearは、同商店の店主の家族がサケタイムズの読者だったことから、縁ができた。買収に関し、川勇商店から「(自社を)有効活用してほしい」という意向を受け、協議を進めてきた。買収のリリースによると、Clearは「サケタイムズで培った全国の酒造メーカーのネットワーク、読者コミュニティ、マーケットへの知見を生かし、小売業への参入を検討」してきたという。

ECサイトでの日本酒の販売は、免許上の制限(※)があり、課税移出数量の多い、いわゆる大手メーカーと共同開発した商品を販売するには、1989年5月以前に発行された「酒類小売業免許」が必要になる。

川勇商店はこの免許を持っており、Clearは今回の買収により、販売できる酒類などの制限がなくなる。

免許上の制限(※):Eコマースで日本酒を販売するには、「通信販売酒類小売業免許」が必要。比較的安易に取得ができる。ただし、前会計年度の品目ごとの「課税移出数量」が3000キロリットル以上の国内酒造メーカーの酒類は扱えない。このため、扱うことができる国産の酒類は、一定の規模以下の醸造所でつくった製品に限られる。この制限がかからないのは、1989年5月以前に発行された酒類小売業免許になる(同社リリースより)。

(文・木許はるみ)

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