JPモルガンのミレニアル向けアプリ「Finn」が、金融スタートアップの脅威に

ジェイミー・ダイモン氏

JPモルガン・チェースのCEO、ジェイミー・ダイモン氏。

Thomson Reuters

  • JPモルガンは最近、実店舗を必要としない若いミレニアル世代向けのモバイル・バンキング・アプリをリリースした。
  • 実際に使ってみたところ、このアプリの一部機能は個人向け金融サービスを提供するスタートアップの脅威となりそうだ。

JPモルガンがミレニアル世代向けのモバイル・バンキング・アプリ「Finn」を立ち上げると聞いたとき、筆者は正直、大したことはないだろうと思っていた。

アプリ画面

Chase

しかし、この独立記念日の休暇中にアプリをダウンロードし、既存の銀行口座から一部の預金を移してみると、競合するフィンテック企業が夜眠れなくなるようなアプリであることが分かった。

徹底したモバイル・バンキング「Finn」がアメリカ全土でリリースされたのは、最近のことだ。当座預金と普通預金口座に加え、個人向け金融スタートアップの多くが提供するサービス同様の機能が利用できる。

ここで疑問が生じる。大手銀行が彼らの領域に進出してきたら、フィンテック業界はどうするのだろうか?

少額投資のスタートアップ「Acorns」がちょっとした小銭を取っておいて、それを株に投資できるアプリを立ち上げたとき、このサービスはミレニアル世代にもてはやされた。

同社のCEOノア・カーナー(Noah Kerner)氏は2017年、これは同社にとって「今もユニークな」機能だと語った。だが、Finnのアプリは似たようなサービスを、当座預金と普通預金の口座に結び付けて展開している。これはAcornsが提供していないものだ。別のスタートアップ「Stash」も、同じようなサービスを提供している。

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Chase

現在、Finnでは株への投資はできないが、AcornsやStashの機能を興味深い方法で拡大させている。

Finnでは、ユーザーがいつ預金を当座口座から普通口座へ移すか、ルールを決めておくことができる。「Work Hard, Save Smarter(一生懸命働き、賢く節約する)」を選択しておくと、給料日に決まった金額を分けておいてくれる。「The Limit Does Not Exist(限界なし)」を選択しておくと、一定の金額以上を使うたびに、あらかじめ決めておいた金額が自動的に貯蓄へ回される。

誤解のないように言っておくと、大半のオンライン銀行が提示する普通預金の金利は年率0.01%ほどで、株に投資する方が大きなリターンを得られる可能性は高い。

それでもこうしたサービスは、大きなリターンよりも手軽にお金を置いておける場所を求めているユーザーにとっては、魅力的なようだ。加えて、JPモルガンがアプリに株式市場への投資機能を付ける可能性も排除されていない。Finnの担当者、メリッサ・フェルドシャー(Melissa Feldsher)氏はBusiness Insiderに対し、アプリが今後、どう展開していくかについては具体的にコメントしなかったが、同社は「機能を進化させていく」ことに積極的だと述べた。

JMPセキュリティーズのアナリスト、デヴィン・ライアン(Devin Ryan)氏は、スタートアップは大手銀行から模倣され、彼らが開発したサービスをもとに改良されることに免疫がないと指摘する。

「今日の最も優れた機能は、既存のサービスをもとに作られている」ライアン氏は言う。「中には、自分たちでそれをやろうとしている既存のサービスもある」

一方で、スタートアップもJPモルガンのバンキング・サービスに対抗しようとしている。Acornsのデビットカードはその最たる例だ。しかし、大手銀行の領域にスタートアップが進出するハードルは高いと、スタートアップ「ベターメント(Betterment)」のCEO、ジョン・スタイン(Jon Stein)氏は言う。

「ここ30年で、大手銀行がいくつ生まれただろう? ほとんどない」スタイン氏は2017年、Business Insiderのインタビューで語った。

大手銀行の弱点をついて、スタートアップは次々と生まれている。ビリオネアのマーク・キューバン(Mark Cuban)氏が支援するスタートアップ「Dave」は、当座貸越手数料を回避しようとするもので、ユーザー数が50万人に達した後、4月には投資ラウンドで1300万ドル(約14億円)を調達したと発表した。しかし、Finnはそもそもこうした手数料を取っておらず、FinnのユーザーがDaveのようなアプリをダウンロードする必要はないだろう。

紙の小切手が面倒だという人をターゲットにしたスタートアップもある。スタートアップのデータベース「Crunchbase」によると、こうしたスタートアップの1つである「Checkbook.io」は、2度の投資ラウンドで資金調達をしている。Finnでは、ユーザーが自身の携帯電話から小切手を送ることが可能で、実際に使用した人は、数分で家賃を支払うことができたという。

戦略的な観点から、JPモルガンがそのアプリについて、スタートアップの後を追うことはなさそうだ。

同アプリは、JPモルガンの支店がなかったミズーリ州セントルイスで最初にデビューしたように、実店舗のない地域でJPモルガンの足掛かりを強化するだろうとフェルドシャー氏は言う。Finnは、6月末にApp Storeを通じてアメリカ全土で利用できるようになった。しかし、フェルドシャー氏によると、JPモルガンは実店舗が不要だとは考えていない。

「支店を置くことに意味がない、ということではない」同氏は言う。「(このアプリは)エンド・ツー・エンドの体験を求めている人向けに作られたもので、チェイスのもう1つのプロダクトとして我々は認識している」

同行の広報担当は、Finnの利用者数について明らかにしなかった。App Storeでは5段階で4.5の評価、513のレビューがついている。参考までに、アメリカの金融大手アリー・ファイナンシャル(Ally Financial)のアプリ「Ally Mobile」には、5段階で4.7の評価、6000以上のレビューがついている。

[原文:JPMorgan built an online bank for millennials, and it should have apps like Acorns and Stash worried]

(翻訳、編集:山口佳美)

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