超人気TRUNK(HOTEL)運営のT&G全国にホテル10店開業へ —— マニュアルなし、リース物件で事業拡大

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TRUNK(HOTEL)のラウンジ。コワーキング、バー、カフェにもなる。利用者の比率は宿泊は7:3(日本:海外)だが、空気感を作るのは5:5くらいでは、と野尻会長。

渋谷の駅から原宿方面に向かう明治通りから一歩入ったところに位置するTRUNK(HOTEL)(渋谷、以下TRUNK)。渋谷駅から徒歩10分と、決して便利とは言えない立地にもかかわらず、絶好調だ。

2017年5月に開業したTRUNKは、日本で本格的に「ブティックホテル」を持ち込んだ。

開業1年目の稼働率は91%(2018年4月実績)を記録。宿泊だけでなく、企業の新商品発表会やイベントでも人気だ。1階のラウンジは思い思いに過ごす人で溢れ、独特の“世界観”ができ上がっている。

運営元「テイクアンドギヴ・ニーズ」(T&G)は、2027年までに全国に10店のホテル開業を予定し、ホテル事業の売上高300〜400億円を目指す。

このTRUNKブランドを支えるのは、「マニュアルのない」運営と「リース契約」の出店形態だという。T&Gの野尻佳孝会長は2018年7月上旬、経営方針の発表会の後、Business Inside Japanの取材に応じた。

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「ブティックホテルに、マニュアルはない」と野尻会長。宿泊客も、観光のパッケージを利用せず、自ら行きたいところを見つける傾向にあるという。

ブティックホテルとは、唯一無二なホテル

野尻会長は、2018年7月の経営方針の説明会で、そうプレゼンした。

ホテルの業態が多様化する中、「一番注目されているのは、ブティックホテル」だという。

ラジュグアリーホテルがチェーン展開し、マニュアルを重要視する中、旅慣れた人たちは画一的なサービスに飽き始めた。ミラノで泊まるなら、ミラノの地域をシェアしたい、ミラノの空気をシェアしたいと求める旅人が増えた」(野尻会長)。ブティックホテルとは、デザインや独創性にこだわった高品質・高価格帯のホテルだ。

野尻会長は、世界に広がるブティックホテルを紹介。特に、1999年にシアトルで1号店を開業した「Ace HOTEL」(エースホテル)は、「サードプレイスをホテルカルチャーに入れた」と説明した。

TRUNK、稼働率は91%。直接予約は6割以上

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TRUNKホテルの実績。客室単価が高いが、稼働率も高い。旅行の滞在期間の長い欧米の層を、多く取り込んでいる。

サードプレイスを求めるように、TRUNKの1階には国内外の人々が集まる。ソファに寝転がったり、パソコンを広げて仕事をしたり。wi-fiや電源もある。

TRUNKは、「ソーシャライジング(自分らしく社会的な目的を持って生活すること)」をコンセプトに、2017年5月に開業した。開業1年目から、国内外のアワードを受賞。世界のラグジュアリーホテルやブティックホテルが選出される「Design Hotels」に加盟した。

「Design Hotelsに選ばれると、稼働率は5から10年は維持されると言われている」(野尻会長)

客室は15室と少ないが、平均客室単価は5万6919円と高め。にもかかわからず稼働率は91%と高い。宿泊者の国籍は85%が海外、うち欧米が66%、アジアが19%。婚礼・宴会の利用は2017年5月のオープンから2018年3月までで1000件以上あった。

特徴は電話やメールによる「直予約」が多いことだ。インバウンドの予約は「直予約」が64%を占める。野尻会長は、「宿を重視する人は自分で宿を調べる。ブティックホテルの検索は、口コミ、自分で調べ、探す傾向にある」と話す。

地方の一等地でブティックホテル

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ホテル事業の出店候補地。ホテル事業のROI(投資回収指標)は、33%(投資回収年数は3年)と掲げる。高い目標を持てる理由は、物件の形態にある。

T&Gは地方の政令指定都市を中心に、TRUNKブランドと別の新ブランドのホテルを開業する予定。ブティックホテルのスタイルを取り、今後10年で10店舗をオープンする予定だ。渋谷のTRUNKは、渋谷駅から徒歩10分ほどだが、地方では「百貨店の真横などの一等地」を検討、新築で100室前後を想定している。

今はブティックホテルにトラックレコードがなく、『ラブホテル?』と言われてしまう。(T&Gが日本に広めた)ハウスウェディングの時もそうでした。『家?』と。だから、ブティックホテルだけど、コンサバティブなわかりやすいものを、(地方の)一等地に出したい」(野尻会長)

TRUNKブランドも今後、都内で10店舗に拡大したい考えだ。新ブランドは新築が中心だが、TRUNKブランドは、海外のブティックホテルが歴史的建造物を活用しているように、「リノベーションもあると思います。料亭旅館、ラブホテル、古民家などを改装する可能性も出てくるかもしれないし、対象物は幅広いです。いい物件に出合えるかどうかです」と野尻会長は話す。

ホテル事業の売り上げは2027年には300〜400億円を目指す。国内ウェディング事業は2027年で500億円を目指しているので、ホテル事業はこれに迫る勢いだ。

予算も、規則も、研修もマニュアルはない

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TRUNKのキーワードは、「環境」「ローカル優先主義」「多様性」「健康」「文化」。施設内には、地元アーティストの作品や障害者のアート作品もある。

“第1号”のTRUNKの好調ぶりを支えたのは、「マニュアルのない」運営だ。「日本はマニュアルを重要視してきた。評価するポイントもマニュアル通りにできているか、だった。ブティックホテルは逆。マニュアルをなくし、オーナーシップ、創造性を徹底的に強化することが必要」と言う。

マニュアルのないスタイルは、接客に限らない。予算は全社員が策定に関わり、就業規則、研修も社員で決める。

2017年の年末年始も社員たちの希望で休みにした。社員1人当たりに約40万円の成長予算が付き、研修の計画は自分で決める。社員は、自分で決めた海外研修の様子を「#trunkstudy」でインスタグラムに投稿する。

社員の採用の基準は「『独創・革新・誠実・貢献』のコアバリュー、価値観が同じかどうか」という。

「コアバリューさえ同じなら、平均点が悪くても面白い能力が高ければ採用する。例えば、うちは、タトゥー率は15%ぐらいですよ。世界中の役者で、タトゥーがない人はいますか。エンタメに近いホテル業で、どうしてタトゥーがあったらダメなんですか。同じ価値観を持った人間は、夢を語ると似る。権限を全部渡すから、好きなことやってもらう。基本性善説です」(野尻会長)

物件はリース。初期費用を抑え、投資回収を早める

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TRUNKホテルの1階ラウンジ。野尻会長は「今のままでは旅館は淘汰される」と警鐘。マニュアル通りに、朝夕食の時間を聞き、時間を限定されるスタイルは多様性を求めるユーザーには合っていないという。

欧米やアジア、世界各地で広がるブティックホテル。

日本では、2017年にTRUNKが開業、2019年に、上記のエースホテルが京都で開業を予定。エースホテルを参考にしたとされる「hotel koe tokyo」が、2018年2年にオープンした。

国内でも、徐々に新しいコンセプトのホテルが誕生しているが、野尻会長は、「(日本では)ホテル事業のプレイヤーが少ない」と言う。

その理由について、「日本ではホテルは儲からないという概念が強かった。不動産を建てるのがホテル業だと思われていたから。鉄道系企業がホテルを経営することも多く、不動産の有効活用として、大手がホテルを経営していた。不動産業と一体と考えると、投資回収年数がすごく長くなる」と野尻会長。海外では不動産のプロが不動産を所有し、運営はパークハイアットに業務委託、というのが通常だという。

従来の日本のホテルは所有、経営、運営までを行う「一体型」がメインだというが、T&GはTRUNKをはじめ、ホテル事業では不動産は所有せず、所有者に家賃を払う「マスターリース契約」を結ぶ。この方法で初期投資をなるべく抑えることで、高いROI(投資回収指標)を描くことができる。

実際にTRUNKの投資回収は2.4年、ROIは41.9%になると予測されている。そして、今後のホテル事業全体のROIも33%(投資回収3年)の高い目標を掲げる。

野尻会長は、「日本ではホテル事業に参入したいと思っても、障壁が高い」、リース契約の出店戦略をオープンにすることで、「他産業からプレイヤーが入ってほしい。『ホテル業は面白い』というムーブメントを作りたい」。

(文、撮影・木許はるみ)

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