あなたの会社のKPIマネジメント間違ってない?そもそも複数のKPIが設定されていたら要注意

会議

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KPI、ご存知の方も多いかもしれません。

Key Performance Indicator を略したものですが、KPIマネジメントをやっている、あるいはやったことがあるという人もたくさんいるかもしれません。ところが間違って運用し、上手に活用できていないことも少なくないようです。

私は、かつて11年間KPIマネジメントの講師をしていました。その経験から、KPIマネジメントを上手に活用すると大きな成果が出ることを知っています。私自身もKPIを活用し、事業開発で成功した経験も持っています。

KPIマネジメントはシンプルですが、上手に使うと効果抜群です。

ポイント1:KPIは事業における信号である

最も重要なポイントを1つ挙げるとすると、それは「KPI」が事業運営における「信号」であることが分かっているかどうかです。

KPIと信号、一見関係ないように思うかもしれません。

自動車を運転して交差点に進入したとき、目の前の信号が青ならそのまま進み、黄なら注意し、赤なら停止します。 事業運営でも同じです。

KPIが青なら戦略をそのまま継続し、黄なら戦略の見直しを検討し、赤なら戦略を変更するのです。 上手にKPIを活用できると、事業運営が上手くなります。

ポイント2:ダメダメKPIはエクセルで管理されている

しかし、そのKPIそのものがダメだった場合。信号の役目を果たしません。

実際、KPIの講師をしていると、ダメなKPIは見分けられるのか?と質問を受けることがあります。みな自己流でやっているので、自組織のKPIがイケているのか不安なのです。

私の回答はYES!ダメなKPIを見分ける方法は、とてもシンプルです。

質問してきた人にメールでKPIを送ってもらうと、ほとんどの場合、資料が添付されています。 その添付資料がポイントです。

実は、添付資料を開封しなくてもダメダメKPIは見分けられます

種明かしをすると、添付資料がエクセルなどの「表計算ソフト」である場合がダメダメKPIなのです。 もちろんエクセル自体が悪いわけではありません。

添付されたエクセルファイルを開けると、シートに複数の項目と数値が並んでいます。 「たくさんの項目を管理している事」がダメダメなのです。

ポイント3:KPIは一つだけに。みんなが見える状態で

KPIマネジメントは事業の信号だという話をしました。複数の項目を管理していることは、すなわち信号が複数あるということです。自動車を運転していて交差点に差し掛かった場合を想像してください。目の前に信号が2つあって、1つの信号は青で、別の信号は赤だった場合どうすれば良いのでしょうか?

ドライバーは迷ってしまいます。信号が2つでさえ悩んでしまうのに、3つ、4つとたくさんだったらどうでしょうか? 悩みはさらに深刻になります。

打ち合わせ

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さらに、車の数が増えたらどうでしょう?

車1台、1台は会社や事業でいう従業員のようなものです。車の数も信号の数も増えたら、複雑性はさらに加速します。

つまりKPIは事業にとっての信号だというのは、2つの意味があります。

1つ目は信号なので、複数ではなく1つであることが重要です。

もう1つは、どの車(従業員)からも信号が見えて、そのルールが分かっていることが重要なのです。 誰でも信号のルールは知っています。

事業でいうと、KPIを全従業員が見える状態にし、その信号の色がどうなっているのか、理解できることが必要です。

KPIは数値目標ですので、信号の色が数値目標に該当します。

みなさんのKPIはいかがでしょうか?

ここまで読んでもらえれば、KPIマネジメントをしていると言いながら、複数の項目を管理しているのが、なぜダメなのか想像がつくと思います。

ポイント4:複数のKPIを設定すると検証ができない

とはいえ、複数のKPIを設定したくなる気持ちもわかります。

実際に複数のKPIを設定すると何が起きるのでしょうか?

現場は取捨選択をしてしまうのです。

例えば5つのKPIを設定すると、現場は実際に注力する施策と注力しない施策を取捨選択します。1つの施策は全力でやる。2つの施策はそこそこやる。残った2つの施策はやったふりをするというようにです。

私も営業担当時代に同様のことをしていました。しかし、この状態を上司や管理組織に報告することはありません。本当のことを報告すると怒られるのではないかと危惧するからです。実際、バカ正直に話して怒られた経験もあります(笑)。そうして、黙って現場の独自判断で施策の実施を取捨選択してしまうのです。

これの何か問題なのでしょう?

実際にやった施策、やらなかった施策が混在します。これが問題なのです。うまくいった場合でも、全力でやったからうまくいったケースと全力でやらなかったけれどうまくいったことが混在するのです。うまくいかなかった場合も同様です。これでは検証もできませんし、そもそもKPIは機能しません。

これらを防ぐためにも、現場に降ろすKPIは1つにするのです。そうすれば現場は取捨選択できませんし、そもそもする必要もなくなります。 結果、きちんと振り返りやKPIマネジメントができるのです。複数のKPIを設定するのは、設定側の自己満足にすぎないのです。

ポイント5:KPIを1つに絞るために超えなければならない壁

KPIを1つに絞らなくてはならないとわかっても、今度は超えなければいけない壁があります。

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それは「勇気」の壁です。施策を1つに絞って失敗したらどうしようという壁です。施策を1つに絞ると失敗した場合に備えて、別の施策を準備したいという意識が生まれます。

そして2つめを加えた瞬間に、リスクヘッジの美名のもと2つめ、3つめが加えられていき、結果として振り返りも判断もできないKPIになってしまうのです。

解決するには、KPIの施策を実行し振り返るまでのサイクルを測定することから始まります。

例えば、私が以前担当した組織は、年に2回しか施策の振り返りができませんでした。つまり、年に2回しか施策を実行できないのです。そうだとすると、リスクヘッジしたくなる気持ちは理解できます。

年に2回しか施策を振り返っていない組織とは、かなりイケてないように思うかもしれません。しかし、自組織の振り返りの回数を知らない組織が大半です。

ところが、この振り返りサイクルの測定をすると、サイクル事態が短くなっていくのです。つまり年に5回、10回と振り返りができる組織になっていくのです。これはダイエットの際に、記録するとダイエットできるのと似ています。

実際、私が担当した組織も年に数十回振り返ることができる組織になりました。こうなると、怖いものはありません。短時間でKPIの実験ができるのです。

KPIは信号だから1つ。そしてすべての従業員が分かっていることが大事なのです。

このトピックスを含めて、KPIの本を書きました。『最高の結果を出すKPIマネジメント』。 もしよかったら目を通してください。

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中尾隆一郎: ㈱FIXER 執行役員副社長 大阪大学大学院工学研究科修了。リクルート入社。リクルート住まいカンパニー執行役員(事業開発担当)、リクルートテクノロジーズ社長、リクルートワークス研究所副所長などを経て、現職。㈱旅工房 社外取締役も兼任。

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