Alexei Oreskovic
- GMの自動運転車部門「クルーズ」の企業価値は、430億ドル(約4兆8000億円)にのぼるとRBCキャピタル・マーケッツは見ている。
- クルーズは2018年5月、ソフトバンク・ビジョン・ファンドから22億5000万ドル(約2500億円)の出資を受けた。その際、クルーズの企業価値は115億ドルと評価された。
- GMはクルーズの分離・独立を視野に入れていると、ブルームバーグは2018年6月に伝えた。
GMの自動運転車部門「クルーズ」(2016年にGMが買収)の企業価値は、いまや何と430億ドル(約4兆8000億円)にのぼるとRBCキャピタル・マーケッツは見ている。
この評価額は、2018年5月、ソフトバンク・ビジョン・ファンドがクルーズに22億5000万ドル(約2500億円)を出資した時点の推定額から4倍近くになっている。ブルームバーグは、GMはクルーズの分離・独立を検討していると伝えた。
「我々は、ソフトバンクは大きな可能性を見出していなければ、出資はしていないだろうと考えていた」とRBCの自動車アナリスト、Joseph Spak氏は語った。
「今のところ、GMは独自の自動運転タクシー事業を運営する計画のようだ。開発がうまく進み、計画が実現すれば、2030年には80万台にのぼる自動運転車が、1年間に580億マイル(約930億キロメートル)走ることになる。1マイルあたり0.55ドル、EBIT率29%で、EBITDAは最大170億ドルになると見ている。DCF法で評価すると、クルーズの企業価値は430億ドルにのぼる」
※EBIT:利払い前の税引前当期利益
※BBITDA:利払い前・税引き前・減価償却前利益
※DCF法:将来にわたって生み出す収益(キャッシュフロー)を現在価値に割り引いて企業価値を評価する手法野村證券「証券用語解説集」より
クルーズは、GMが50人の従業員とともに5億8100万ドル(約645億円)で買収して以来、急速な成長を続けている。GMは、2017年にカリフォルニア州から800万ドル(約8億8000万円)相当の税制優遇措置を得たことを受けて、2021年までに同州にあるクルーズの人員の1648人に増員する予定。
自動運転タクシー事業への参入にあたっては、これまでの自動運転車での走行距離が重要になる。自動運転車全体の走行距離において、クルーズが占める割合は小さい。だがRBCは全体の走行距離は指数関数的に伸びていると指摘した。
「自動運転は、機械学習アルゴリズムとディープ・ラーニングに依存する。車を走らせ、判断し、現在地や周囲の状況を認識するために、すべてのセンサー(カメラ、ライダー、レーダー、地図など)からの情報を処理する」とRBC。
「走れば走るほど、AIは情報を得て、より学習する。つまり、自動運転において、走行距離は知識」
同時に、人間のドライバーが自動運転中のコンピューター・システムを解除するような事例は大幅に減少した。これは商業サービスの実現に向けて、良いサイン。
「GMがいつサービスを開始するかを判断することは難しい。GMは意図的に曖昧にしている」とRBCは指摘した。
「GMの幹部らは、2019年にサービスを開始すると語り、サービス開始は年単位の課題ではなく、四半期単位の課題と述べ続けている」
(翻訳、編集:増田隆幸)