マイクロソフトのPC製品群「Surface」に、軽量・安価な新型が発表された。
7月11日、マイクロソフトの低価格PC「Surface Go」の日本版が発表されたのは既報の通り。本日7月12日より予約開始、発売は8月28日を予定している。
米国版は、「最廉価モデル399ドル」という価格が大きな話題になった。一方、日本版はOfficeが付属するパッケージのため、価格は6万4800円からのスタートになった。この価格設定をめぐっては賛否あるが、もちろんSurface Goの見所は価格だけではない。発表会場で実機を触って初めてわかった、ファーストインプレッションをお届けする。
1. 驚くほど軽い、モバイル性能はシリーズトップ
Surface Goは片手で持っても疲れない。
Surface Proを触って驚かされるのは、そのモバイル性の高さだ。
サイズは幅245mm×高さ175mm×厚さ8.3mmとSurfaceシリーズ史上最小の大きさ。本体の重量は本体が約522g、後述するタイプカバーは約243g。2つ合わせても約765gと、ノートPCとして考えても非常に軽い。
実機を短時間触った限りでは、膝の上でも使いやすく、大きさはなかなか良いところを突いている。本体が小さいことは、カフェや飛行機内の小さなテーブルで使う際にはむしろ好都合に働く面もある。
個人差はあるが、筆者も別の同業者の1人もSurface Goは「膝上でも使える大きさ」に感じた。
「一番安いSurface」にもかかわらず、本体の質感はちゃんとSurface品質。かなり上品だ。Surface Goのボディーは上位機のSurface Proなどと同じマグネシウム製で、マイクロソフトの担当者によると「強度などもProシリーズと同等の基準をクリアーしている」という。
Surface Goの薄さや活用範囲の広さを紹介する米マイクロソフトのプロダクトマーケティングマネージャー、Adrienne Brewbaker氏。
2. 打ちやすいキーボード
Surface Go用のタイプカバーの使いやすさは、同Proシリーズなど従来機譲りだ。(写真はUS配列のバージョン)
Surfaceシリーズの象徴でもある外付けキーボード「タイプカバー」の完成度も高い。
キー単体の表面積は本体幅に合わせて、従来のProシリーズより狭くなっているが、キーのストローク(押せる深さ)は「Proシリーズのタイプカバーと変わらない」(同担当者)。
発表会の会場にはUS配列のキーボードしかなかったが、発売時には日本語配列も用意される。実際に打ってみると、記者が取材メモで使うような高速なタイピングでも十分実用レベルと感じた。
タッチパッドに関しては従来のタイプカバーより広い面積が確保されている。実機(下の写真)で比べてみると、幅はほぼ同じで奥行きが長くなっているように見える。
従来のSurface Pro4(手前)とのサイズ比較。写真奥のSurface Goのタイプカバーの方がタッチパッドの面積がやや広く見える。
別の角度から。左のGoがUS配列、右のProが日本語配列という違いはあるが、サイズ感の確認はできる。Goの日本語配列はどの程度自然な配列になるのだろうか。
3. ペンの仕様はProと完全に同じ
Goで使える「Surface ペン」は現行のSurface Proと同じもの。
Surface Goは最新のSurface Proと同じ仕様のデジタイザーペンを採用している。筆圧は4096段階まで検知可能で、画面に手の甲がついていても反応し、ペンの傾きもしっかりと検知する。
SurfaceシリーズはProやBook、Studioなどクリエイター向けとしても広く使われているが、Goの10インチという画面サイズを考慮すると、OneNoteなどのアプリを使ったメモ書きや、ちょっとした手書き資料やイラストを描くといった用途にも十分使えそうだ。
ちなみにこのペンは、(Proと同様に)使わないときは本体の側面に磁力でくっつけておけるので便利だ。
本体と同時発売の周辺機器。このほか、USB-C Ethernetアダプタなどの周辺機器も同時発売になる。
4. コンパクトで安い……だけではない「制限」
Surface Goの接続端子は右側面に集中している(写真はWi-Fiモデル)。
シリーズ史上最も小さく安いが、Proシリーズと似たデザイン、そして特徴をもつSurface Go。しかし、上位機に及ばない部分もある。
その代表例が「接続端子の充実度」と「性能」だ。まず接続端子を上位のProと見比べると、
- USB端子が、ProはフルサイズのUSB(USB Type-A)、GoはUSB type-C。汎用性はProの方が勝る
- 外部映像出力が、ProはUSBと別にMini DisplayPortを装備。GoはUSB type-Cで映像出力も兼ねる
- ストレージ拡張用のmicroSDカードスロットは共通
という違いがある。
microSDカードスロットは、キックスタンドを開いたところにある。内部の保存領域を拡大する用途に使える。
年内発売予定のLTE版にはナノSIMカードスロットが左側面に配置される。
Surface Goはローエンド向けCPUを採用している。3Dのオンラインゲームなど高い負荷のかかる用途には向かない。
もう1つの懸念は、CPUの処理性能。Surface Goはインテルのローエンド向けCPU「Pentium Gold 4415Y」を採用している。
会場で触った限りでは、ウェブを見たり、メモ書きをする程度なら何も問題なさそうだ。一方、動画を編集したり、高解像度の写真のレタッチをスピーディーに作業したいといった用途で、Proとどこまで差が出るかまではまだわからない。
また、バッテリー駆動時間は公称値で「最大9時間」。これは、Wi-Fi接続下で動画を連続再生した時間だ。ちなみに、現行のProシリーズでLTE接続可能なモデルは「最大12.5時間」。細かいがちょっとした「差」がある。
5. Office付きPCと考えると「高すぎる」わけではない?
日本版は米国版よりやや高い(写真左からSurface GoとSurface Pro)。
冒頭でも書いた価格設定は、最後まで気になる部分だ。
Surface Goは、個人向けのWi-Fiモデルが、メモリー4GB/ストレージ64GB SSD搭載で6万4800円、メモリー8GB/ストレージ128GB SSD搭載で8万2800円となっている。
アメリカでは下位のモデルが399ドル(約4万4600円)で売られることを考えると、日本向けの価格は「割高だ」という指摘はネット上でも少なくない。
もっとも、日本版は買い切り版の「Office Home&Business 2016」(直販価格3万7584円 相当)が付属するので、Officeが必要な人にとっては、米国版との差額(約2万円相当)は実は高すぎるとまでは言えない。一方で、既にOfficeを持っている人にとっては、「不要なソフトが付属して高い」と見える形だ。
米国版を輸入して使う方法もあるかもしれないが、米国版が日本の電波法規に適合できているのかは、現時点では不明だ。
キックスタンドは165度まで倒れる。実使用でも、ここまでべったりと倒せる。
発表会場には、マイクロソフト本社のVice PresidentであるMatt Barlow氏(写真左)と日本マイクロソフト社長の平野拓也氏(写真右)らも登壇した。発表会まで行ったのは実は「世界でも日本だけ」。教育市場の開拓まで含めたマイクロソフト本社の期待が感じられる。
(文、撮影・小林優多郎)