地球の表面を57兆個の区画に分け、それぞれに「単語3つ」で構成される名前をつける ── ロンドン発のスタートアップ「what3words」は、世界共通のアドレスシステムの利用拡大をアジアで強めていく。日本では日本語に対応したアプリを2018年5月にリリースした。
これでもう「ハチ公前の待ち合わせ」で相手と出会えないこともなくなる。
what3wordsが開発したアドレスシステムは、地球のすべての表面を3メートル×3メートルの正方形に分割して名前をつけるというもの。
例えば、渋谷のハチ公前で待ち合わせして、いつまでたっても相手が見つからない、という経験はないだろうか?
what3wordsのアプリを使ってみると、ハチ公像の目の前なら「ひっし・さいこう・きょだい」。そこから3メートル離れた場所なら「みぬく・ねぼける・おやこ」。ちなみに、アメリカのホワイトハウスの玄関口の1区画には、日本語であれば「ごきげん・おした・すすぐ」、英語であれば「yappy.pound.gloves」の名前が付与されている。2018年7月現在、170カ国で展開、26言語に対応している。
what3wordsの躍進の背景として、「音声認識」と「自動運転」という、ビジネスの大きなトレンドがある、と同社CCOのクレア・ジョーンズ氏は語る。
what3words CCOのクレア・ジョーンズ氏。
同社は2013年に設立、2018年までに約4000万ポンド(約59億円)を調達した。調達先には、インテルキャピタル、ドイチェ・バーン、ダイムラーも名を連ねる。2018年2月にメルセデス・ベンツは音声ナビゲーションシステムにwhat3wordsのシステムを採用すると発表した。
Uberなどのライドシェアやeコマースなどの物流にもwhat3wordsの仕組みは活用できると、ジョーンズ氏は言う。「2018年は日本をはじめとするアジア進出の年にしたい」と、ジョーンズ氏は語る。
日本進出の契機としてにらんでいるのが、2020年の開催を控えた東京オリンピックだ。インバウンド旅行者の激増に備え、ホテルや会場で混乱を生まない「住所」の表し方は必要不可欠だ。
人やモノの移動がかつてないほど容易に国境を超えるようになっている現在、「アドレス」もグローバル化する時代が来ている。
(文・写真、西山里緒)