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リモートワークの次のフェーズを知りたいなら、eXp Realtyよりも優れた例はない。
eXpは多くの点では、典型的な不動産仲介企業。クライアントの不動産売買をサポートするエージェントを何千人も抱えている。ビジネスは好調のようで、株価は前年同期と比べるとほぼ4倍、時価総額は6億1000万ドル(約690億円)を超えた。
他社と違う点は、エージェントが出勤してミーティングやプレゼンテーションをしたり、専門的なサポートを行う物理的なオフィスが存在しないこと。1万3000人のエージェントと200人のスタッフは、バーチャルの島に出勤する。小さな本社がワシントン州ベリンハムにあるが、「法律上の要件を満たすため」と同社。実際の仕事はデジタル上で行われる。
バーチャルオフィスには複数のメリットがあると同社は述べた。
「リアルの世界にはないような可能性があることが分かった」と同社CTOスコット・ペトロニス(Scott Petronis)氏は述べ、社内コミュニ―ケションが円滑になることを例にあげた。
天候に左右されずに出勤できるだけではなく、オフィスに収容できる人数に制限はない。維持費もかからず、優秀な人材の採用に地理的な制限もない。
「世界中のどこに住んでいるかに関係なく、優秀な人材を採用できることは素晴らしい」とペトロニス氏は語った。
私は、ペトロニス氏と同社マーケティング担当バイス・プレジデント、ミッチ・ロビンソン(Mitch Robinson)氏に、eXpのバーチャルオフィスを案内してもらった。
オリエンテーションを受け、オフィスを周り、ビーチに行き、スピードボートに乗り、そしてeXpの社員数人にも会った。すべて自分の椅子から離れることなく。
eXpのバーチャルオフィスを見てみよう。
ログインすると、この男性が私のことを見つめていた。このアバターを自分用にカスタマイズするのだと気付くまでに1分くらいかかった。
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私はデスクトップPC用アプリを使ったが、モバイルアプリもある。ただし、機能が限られており、音声のみで、ヴァーチャルワールドを見ることはできない。モバイルアプリは、非常時に会議に参加するための手段。
カスタマイズの選択肢はあまりなかったが、髪の毛と肌の色を変え、顔の形も変えた。洋服の選択肢はより多かった。
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同社は、常にカスタマイズの選択肢を追加し、最近では宗教上で必要な服装と季節に合った服装を追加したと語った。リアルの世界と同じように毎日、服を着替える従業員もいるとのこと。
準備ができたので、外に出てみた。案内をしてくれるCTOのスコット・ペトロニス氏とマーケティング担当バイス・プレジデントのミッチ・ロビンソン氏を見つけた。
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操作方法は簡単ですぐに慣れた。移動するには周囲をクリックするか、カーソルキーを押す。誰かが話し始めると、その人の吹き出しが水色に変わるので、すぐに分かる。
我々は近くにあったテーブルに座った(椅子の上をクリックすると座れた)。そして、バーチャルオフィスについて話をした。近くにある看板は、同社が2017年12月、従業員による企業レビューサイト、グラスドア(Glassdoor)の「2018 Employee Choice Awards」に選ばれたことをアピールしていた。
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こうした細かいところに目を引かれた。バーチャルワールドを少しリアルの世界に近付けている。細部へのこだわりが、従業員を毎日、バーチャルワールドの「オフィスに出勤」する気にさせるのだろう。
我々は立ち上がって、あたりを見回した。右側にエージェント・サービスと契約チームのビルがあった。アメリカとカナダの国旗が立った超高層ビルには、仲介業務、いろいろなチームのオフィス、コワーキングスペースがある。
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案内役の2人は、このバーチャルワールドに慣れていることが分かって来た。どこに何があるかを説明するときは、「あなたの後ろ」とか「ミッチの後ろ」などと述べた。バーチャルワールドをしっかり把握していた。
ペトロニス氏は「技術チーム・ルームに行こう」と誘ってきた。画面の左上にある「Go To」をクリックし、メニューから「技術チーム・ルーム」をクリック。数秒後には技術チーム・ルームにいた。
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移動には少し時間がかかった。ロビンソン氏は、ウィンドウを開き過ぎているときに起こる現象と述べた。とは言うものの、会議室を探すためにバーチャルオフィスの中をうろうろする時間に比べれば、早くて簡単。
会議室にはスクリーンがあり、自分のモニターを他の人と共有して、プレゼンテーションすることができる。「テックチームの共有スペースの後に、この会議室スペースを作ることにした。もちろん、バーチャルワールドで」とペトロニス氏。
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他に、小さなことだが大きな工夫だと思ったことは、バーチャルルーム内に「プライベートルーム」を設定できること。青い点線で囲まれたところがプライベートルームになる。他の人たちの会話は聞こえないが、プライベートルームでのミーティングに参加している人の声ははっきり聞こえた。
今、我々がいるような特定のスペースでは常にプライベートルームの設定がオンになっているが、必要のない場所では青い点線のサークルはなくなる。例えば、島のビーチなど。
サッカー場からビーチが見えた。我々はビーチでバーチャルオフィスを従業員がパーソナライズできるようになる可能性について話をした。
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7月4日のアメリカ独立記念日と7月1日のカナダの日(カナダの建国記念日)には、夜空と花火が用意されているが、今、我々がいる場所からしか見えないとペトロニス氏は説明してくれた。
「外」の景色は、職場からは変わらない。
スピードボートに乗りたいかと聞かれた。2人はクリックしてボートを呼んでくれた。奇妙なことに、狭くて、窓のない私の部屋からでも、波に乗って走るボートは気持ち良かった。
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もちろん、スピードボートは従業員なら誰でも利用できる。
私がバーチャルオフィスを体験したのは1時間のみ、何もしていないに等しい。だが、バーチャルオフィスは楽しかった。私は大企業で、従業員同士がまったく会う機会がないことについては懐疑的だった。だがペトロニス氏は、まったく問題ないと語った。同氏は自身のチームメンバーの4分の1か、3分の1にしか実際に会っていない。
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ペトロニス氏はリアルワールドで会うときには、これまで以上にワクワクすると語った —— 休暇中に同僚の故郷や出身国を訪れたときには、わざわざ会いに行くくらい。
(翻訳:R. Yamaguchi、編集:増田隆幸)