日本の出生率は実は上昇傾向にある。
Thomas Peter/Reuters
- アメリカの出生率は過去30年以上、日本を上回っている。
- だが景気後退の影響により、アメリカの出生率は徐々に低下している。
- 一方、日本の出生率は危険と言えるほど低かったが、やや回復し始めている。政府の子育て支援策が功を奏しているようだ。
日本やアメリカのような国は少子化に悩んでいる。多くの年配層が定年退職して労働人口が減り、若い層が産む子どもの数が減っている。
人口時限爆弾はセット済みの状態。高齢者のニーズをケアし、費用を負担する若者の数が足りなくなれば、いつでも爆発する。
アメリカでは、かつてないほど子どもの数が減っている。理由はシンプル —— 子どもにはお金がかかる。
わずか11年前、アメリカの出生率は2.12だったが、現在では約1.76となった。つまり、アメリカで1人の女性が産む子どもの数は平均すると2人以下。
一方、日本では数十年も前から懸念されていた低い出生率が、わずかではあるが徐々に回復しており、約1.44と1990年代中頃の水準に戻った。最大の要因は子育て支援策だろう。
ニューヨーク・タイムズの最近の調査によると、子どもを望んでいる20〜45歳のアメリカ人で、望む数よりも子どもの数が少ない人、あるいは子どもがいない人がその理由として一番にあげたのは、子育ての費用だった。
さらに、子どもが欲しいかどうか分からないと答えた人の3分の1は、子育てにかかる費用への不安を最大の理由にあげた。例えば、アメリカではフルタイムの保育のコストは、年間1万ドル(約110万円)にのぼる。これはアメリカのほとんどの地域で、州内の大学に通うコストを上回っている。
少子化のそのほかの理由には、2008年の世界金融危機が経済に及ぼした長期的な影響や大学の学費の上昇などがあげられている。家族向けの手頃な住宅を見つけることも難しい。生活費が高い都市部では、住宅価格が高騰するにつれ、出生率が低下している。そして多くの女性は、40歳になるまでは子どもを持たないと決心する。
アメリカの出生率は、1970年代以降「人口置換水準(人口が増加も減少もしない水準)」を下回っている。つまり、アメリカは人口を維持し、年配者が定年退職しても、そして最終的に亡くなっても、労働市場を安定させることができるだけの子どもが生まれていない。
不足分の一部は、移民で補うことができる。また日本のデータは、子育て支援策を充実させることで、状況にうまく対応できることを示している。
日本は長年、出生率の低下が引き起こす数多くの経済的な問題に悩まされてきた。2013年以降、安倍首相は女性の活躍を推進する「ウーマノミクス」をアピールしてきた。この政策は、男性がオフィスで長時間働き、女性が家事と子育ての大部分を受け持つという日本の歴史的な男女の役割の違いを変えようとするものだ。
厳密に言えば、日本では子どもが1歳になるまで育児休暇が取れるが、1年間フルで休む人はあまりいない。仕事を休むことに罪悪感を感じるからだ。
安倍首相は待機児童の解消も目標に掲げた。だが、首相は目標を3年先延ばしにしなければならなかった。首相は、仕事を始める女性の数があまりにも多かったためと語ったとジャパン・タイムズは伝えた。
2017年、安倍首相は、3〜5歳までのすべての子どもの保育や幼稚園の無償化を公約の1つとして掲げ、再選した。ゆっくりだが確実に、働く女性の数が増えるにつれ、日本の出生率は回復している。
日本の出生率の上昇とアメリカの減少傾向を見てみよう。
Business Insider
子育て支援策を打ち出している国は日本だけではない。ドイツでは、保育支援が得られなければ、親は政府を訴えることができる。ニュージーランドでは、3、4歳児は1週間に20時間まで幼児教育を無償で受けることができる。
アメリカでは、保育の費用は年間3000ドル(約33万円)まで控除の対象となる。だが、フルタイムの保育サービスを利用すると1カ月の家賃の85%に匹敵する額になることを考えると、わずかな額と言って間違いなくわずかな額だ。
[原文:Japan is reversing a dangerous demographic time bomb — but now the US is in the danger zone]
(翻訳:R. Yamaguchi、編集:増田隆幸)