トランプ大統領の貿易戦争は今後、数十年にわたって影響か —— 世界恐慌の教訓から読み解く

世間話をする男性たち

世界恐慌の頃、アメリカのルイジアナ州ジャネレット近くの小さな店の前で世間話をする男性たち。

Wikimedia Commons

  • 1930年代の教訓から分かることは、アメリカのトランプ大統領の貿易戦争がもたらす経済的な影響は、今後数十年に及ぶ可能性があるということだ。
  • 研究機関オックスフォード・エコノミクス(Oxford Economics)によると、世界恐慌によって経済が内向きになったことで1929年から1932年にかけて台頭した保護主義の影響は、少なくとも1960年代まで続いた。
  • 歴史は繰り返すとすれば、新興市場は特に大きな影響を受けるだろう。

オックスフォード・エコノミクスの調査によると、直近の本格的な貿易戦争である1930年代のパターンが踏襲されるとしたら、トランプ大統領の貿易戦争は、今後数十年にわたって世界経済に影響を及ぼし続ける可能性がある。

同研究機関のリード・エコノミスト、アダム・スレーター(Adam Slater)氏は13日(現地時間)、世界恐慌によって経済が内向きになったことで1929年から1932年にかけて台頭した保護主義の影響は、少なくとも1960年代まで続いたと報告書に書いた。

「世界貿易に対する影響は、数十年に及んだ」スレーター氏は言う。「世界のGDPに占める国際貿易の割合は、1929年から1932年にかけて、19%から10%に低下し、その後も低迷し続けた。1960年代後半になっても、1929年の水準を多少上回る程度だった」

国際貿易の対GDP比

世界のGDPに占める国際貿易の割合(1870年~2010年)。

Oxford Economics

世界恐慌は貿易量を低下させただけでなく、貿易における国と国の関係を根本から変えた。これは、トランプ大統領の貿易戦争でも再び起こり得ることだ。

スレーター氏は1930年代の保護主義時代のイギリスが、大英帝国内での貿易を急増させる一方で、他の貿易相手国が苦しんだことに触れた。

同氏によると、研究者たちは「1931年から1932年の間にもたらされた保護主義政策によって、イギリスの輸入の70%前後が帝国内からの輸入になった」と考えている。

「大英帝国の輸出国は、他のイギリスの貿易パートナーに比べ、明らかに結果が良く、オーストラリアやニュージーランド、アフリカ南部からのイギリスに対する輸出の減少はわずか1.4%に、インド帝国からの輸出の減少は22%にとどまった」

「その一方で、同時期のフランスのイギリスへの輸出は66%減少し、ドイツやラテンアメリカの輸出は46%、アメリカの輸出は40%減った」

スレーター氏によると、「経済大国が与える影響(大英帝国を含む)のうち、貿易の重要性が増すにつれ」、1930年代に最も苦しんだのは、経済規模の比較的小さな国だ。

中でも新興市場は大きな打撃を受けていて、多くの専門家は2018年の貿易戦争でも同じことが起こるだろうと見ている

こうした打撃の一部は、物価の下落として現れる。新興市場はその繁栄を商品の輸出に依存していることが多いため、こうした経済にとって、物価の下落は基本的にマイナスだ。

「1929年から1932年にかけて非燃料商品の実質価格は50%以上下落し、莫大な貿易損失をもたらし、債務不履行の波を招いた」スレーター氏は書いた。

中でも大きな打撃を受けたのが、ベネズエラ、メキシコ、アルゼンチンだ。これらの国のGDPは、同時期にそれぞれ21%、18%、14%低下した。

GDPの低下率

ラテンアメリカ諸国のGDP低下率(1929年~1932年)。

Oxford Economics

2018年の貿易戦争が、同様のパターンに陥りそうな兆候も見られる。アメリカと中国における保護主義台頭への懸念から、原油価格が先週、急落した。

貿易戦争は基本的にどの国にとってもマイナスだが、スレーター氏は「保護主義による長期的な損失は、恐れられているよりは少ないかもしれない」と慰める。

同氏は言う。「現在の保護主義の台頭は、1930年代に比べればまだまだ小規模なものだ……世界の貿易の約5%にあたる、アメリカの1兆ドル(約110兆円)の貿易全てに20%の関税をかけたとしても、現在約3%の世界の関税率(加重平均)を1%ほど上昇させるくらいのものだ」

[原文:A troubling lesson from the 1930s suggests Trump's trade war will damage the world for decades]

(翻訳、編集:山口佳美)

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