新入社員の「夏休み2週間取得」は非常識? 有給消化率ワースト1位の日本

有給消化率が世界最下位という日本。有給を取りたくても取れない、そんな人もいるのではないだろうか。もし新入社員がいきなり夏休みを2週間取ったら?

飛行機

日本の有給消化率は2年連続で世界最下位と言われている。

Shutterstock / frank_peters

ちょうど1年前の2017年7月。入社して約半年の私は、初めての夏休みのために飛行機の予約を取った。

会社から与えられた夏休み2日と自分の有給分を8日。あとは合間に入った土日4日を入れて合計14日を休むと決め、チケットをゲット。

そして編集長の元へGO!

夏休みは9月14日から27日でとります

明るく夏休み宣言をすると、「え?」と編集長の顔がくもった。

新人は夏休みを最後にとるもの?

バカンス

せっかくの夏休み。長期休暇を取りたい、けれど……

Shutterstock / icemanphotos

この話にはオチがあるのですが、まずはもう少しお付き合いください。

そんなに長くとるの?

編集長にそう言われてびっくりした。2週間の休みというのは、長いのか。私は、大学時代(2011年〜2015年)にドイツとベルギーでインターンシップをしていた経験がある。そのころ、2〜3週間のバカンスは当然だったし、みんな同僚に断ることなく勝手に休暇をとっていた。

「もう飛行機を予約しちゃったんですけど」と言うと「えっ、信じられない!」と横にいた別の先輩も声をあげた。聞けば、新聞社時代の文化では(注:BI Japan編集部は元新聞社や元出版社人材が多い)、新人は最後に休みをとるものだったらしい。

「私たちは立ち上げたばかりのメディアだし(当時BI Japanが始まって6カ月しか経ってなかった)、チームで仕事をしているよね。みんなが何の調整もなく休んだら、メディアの運営はできないよ。チーム全体で休みを調整しないと」(編集長)

それは上司であるあなたの仕事では?……と言いかけたが、余計に怒られそうだと思い、就業規則の項目を見せ、有給は労働者の権利であると主張した。

「そこまで言われたら反論できない」と、私の「有給」は認められた。

誤解のないように補足すると、有給休暇には使用者(雇用している企業)に休暇日を変更する「時季変更権」が認められている(後から調べてわかった)。

今回の場合「チーム全体で休みを調整しないと困る(= 西山は一度にまとめて取り過ぎ)」という編集長の話は、この時季変更権にあたる。だから、労基法的にも正しい主張だった。

「調整するのも仕事」という友人

飛行機

夏休みは「強気で飛行機を取ったもん勝ち」?

写真:西山里緒

とはいうものの、せっかくの夏休みをそんな風に怒られるとは思っておらず、怒りを知人にぶちまけた。

高校時代の友人のアヤカ(27)は「社内調整するのも仕事のひとつ」と冷たい。

逆にIT企業で広報をしているエリさん(28)は、「強気で取ったもん勝ちだよ」と励ましてくれた。彼女は戦略的に、飛行機を取った後に上司へ報告しているという。ただ、彼女も1年目はさすがに有給と夏休みを合わせて1週間にしていたそうだ。

やはり新人でいきなり2週間の休みを取るのは、ナシなのか……。

日本の有給消化率は世界最下位

日本の有給取得率

日本の有給消化率は世界でも最低レベルに低く、有給取得に罪悪感を感じる人の割合も6割超と高い。

出典:Expediaの調査「有休消化率2年連続最下位に!有給休暇国際比較調査2017」より

厚生労働省の発表によると、2017年の有給休暇の取得率は49.4%。平均して半分の有給が消化されていない

そもそも有給休暇とは、労働基準法で定められた労働者の権利だ。フルタイムで勤務している場合、入社6カ月で10日の有給が付与される。アルバイトやパートタイムで働く人にも、状況に応じて有給は付与される。

また、法律上は有給休暇の取得のための理由を会社に申請する必要はなく、特別な理由を除き、会社は有給の取得を拒否することはできない。

エクスペディアが実施した調査では、2017年の日本の有給消化率は調査国30カ国中最下位。休みを取らない理由の1位は「緊急時のためにとっておく」、2位は「人手不足」、3位が「職場の同僚が休んでいない」だ。有給のとり方として「短い休暇を複数回」という人の割合も49%と高い。

逆に私が働いていたドイツの企業は、8月になるとほとんどの社員が長期の休みを取っていた。病欠と有給休暇は別に与えられるため、「病気の時のために有給を取っておく」という発想もない。その時期は取引先もほとんどが夏休みモードなので、求められる仕事量も少なかったように思う。

壮絶なオチ。私には「有給がなかった」

ブランデンブルク門

結局、理解ある上司のおかげで、私は2週間のドイツ滞在を楽しんだのだった。

写真:西山里緒

政府は2020年までに、有給休暇の取得率を70%にあげることを掲げている。

しかし、体感値ではあるものの、まだまだ「有給休暇が取りやすい」という職場の雰囲気は変わっていないように思える。特に若い社員にとっては。

働き方改革は休み方改革ともいわれる。下の世代であっても空気を読まずに夏休みを取得しよう……と旗を振っていきたい。でも、この話には予告どおりオチがある。

私が有給だと思っていたものは、「じつは有給ではなかった」のだ。

私は2017年3月末入社。有給は入社から6カ月働いた後から取得可能だったのだ。人事部からの通達で、9月末にならないと休みをとれないことがわかり、「2週間の休みは有給にはできません」(人事担当者)と言われてしまった。

すでにチケットを取っていたこともあり、(大論争を繰り広げた)編集長に泣きついた。編集長もさすがに呆れたと思うが、「土日の休みを減らして働き、その振替休日を“バカンス”とすれば」と仏のような代替案が示された。

その後、週末返上でがむしゃらに働いた私は、無事、9月のドイツ旅行を楽しんだのだった。

(文・西山里緒)

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