「メールした後に電話でメールしたことを報告する」……は必要なのか。
写真:西山里緒
- アンケート回答者の9割が、「無駄なビジネスマナーがある」と感じている
- 年齢層を問わず「礼儀1.0にうんざり」という人はいる
- 過剰な「取引先マナー」に違和感を感じている人も多かった
7月13日に公開した「礼儀2.0」の記事は、SNSを中心に大きな反響があった。礼儀2.0とは、VRエヴァンジェリストのGOROmanさんが提唱する、新しい価値観の礼儀のこと。昭和的な「いかに自分の時間を使ったか」を礼儀1.0とし、対して礼儀2.0は「いかに相手の時間を使わせないか」が大事だという考え方だ。
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記事とともに実施したアンケートには総数648人の読者が回答(有効回答数)。回答した人は、20代と30代を合わせて約6割、40代が24%、50代が12%と続く。
職場で非効率だと思うビジネスマナーに出合ったことがある人の割合は約9割(89%)で、ほとんどの人が無駄だと思いながらも実践しているビジネスマナーがあるということがわかった。また、回答者の年齢層は10代から60代以上までと多く、「礼儀1.0」の感覚にうんざりしている人は年齢層を問わず、存在することも判明した。
では、どんなマナーが「無駄」と考えられているのか。理由を自由回答で尋ねたところ、もっとも回答が多かったカテゴリーは、以下の4つだった。
アンケートで見えた「礼儀1.0」的マナー
4位 「上司マナー」
上司とのマナーは100の回答が集まった。
Business Insider Japan
毎日顔をあわせる上司に対してしなければいけないマナーの大変さには、多くの悲鳴の声が上がっている。
- エレベーターに乗る順番。「どうぞどうぞ」とダチョウ倶楽部状態に(35-39歳、女性、その他)
- まじないのようなタクシー上座・下座(40代、女性、インターネット・広告・メディア)
- 目上の相手に代案を提案したら、失礼だと言われた(35-39歳、女性、公社・官公庁・学校・研究施設)
- 上司の愚痴は黙って聞く(40代、女性、フリーランス)
- 廊下でも逐一立ち止まり、深々とお辞儀しないといけない (10代、男性、その他)
- 役員が来たら仕事の途中でも中断して起立する(25歳-29歳、女性、人材サービス)
- 移動中の電車内で、人数分の座席が空くまで座ってはいけない (30-34歳、男性、メーカー、素材・化学・食品・化粧品・その他)
3位 難易度が高すぎる?「飲み会マナー」
飲み会でのマナーは124の回答が集まった。
Business Insider Japan
お酒が入るとはいえ、独特のビジネスマナーがある飲み会。そこまでして出席したくない、と考えている人は、特にミレニアル世代に多かった。
- グラスを空にしない合戦になっている「お酌文化」(30-34歳、女性、金融)
- ビールを注ぐ時はラベルを上にする(20-24歳、男性、IT・通信)
- 飲み会では場を白けさせないために酒を飲む。自分は酒が嫌いだし車で帰りたい(30-34歳、女性、公社・官公庁・研究・教育)
- 一本締めをして終わったのに、店を出ても全員を待つために店の前に溜まり、邪魔(35-39歳、女性、インターネット・広告・メディア)
- 飲み会終わりの帰宅途中にお礼メールを送る(30-34歳、女性、IT・通信)
2位 「お世話になっております」は本当に必要? 無駄な「メールマナー」
メールのマナーには127の回答が集まった。
Business Insider Japan
メールか電話か、ビジネスチャットツールか。メールをはじめとするコミュニケーションツールのマナーに不満を抱いている人も多い。
- メールを送ったあとに、電話をしてメールが届いているかの確認をする(25-29歳、男性、運輸・物流)
- メールで相手の名前を書いたり「お世話になっております」「よろしくお願いします」の定型句を入れること。定型句を打たないだけで1通10秒は削減できる(25-29歳、男性、IT・通信)
- いきなり電話で営業される。メールでくれれば良いのに(50歳、男性、その他)
- メールの宛先の順番を偉い人順に並べ換える(25-29歳、男性、金融)
- ZIP圧縮したデータとパスワードを別々のメールで送信(35-39歳、男性、インターネット・広告・メディア)
1位 暑くてもスーツ着用。過剰な「取引先マナー」
取引先とのマナーには135の回答が集まった。
Business Insider Japan
多くの無駄マナーの中でもトップに立ったのは、「取引先に対してのマナー」だ。特にこれからつらくなる、「スーツ着用」の習慣には、このカテゴリ回答者の24%もの人が無駄なマナーとしてあげた。
- 夏にあった取引先とのフランクな飲み会。行ってみると自分以外みんな汗だくで上下スーツで来ていて、嫌味を言われた(40代、男性、小売)
- 座って良いですよと3回、席を勧めてもらうまで座ってはいけない (40代、男性、その他)
- 「お茶は女性に出してもらったほうがおいしく感じる」と男性に言われた(30-34歳、女性、メーカー(機械・電気))
- あまりに仰々しい敬語(30-34歳、女性、外食)
- そんなに絡みのないところへのお中元やお歳暮のご挨拶。実際に会っても、お互い顔も名前もうろ覚え(40代、男性、旅行・宿泊・レジャー)
- 取引先とのミーティングでノートパソコンを使用するのは失礼。でもクライアントによってはiPadの画面で資料を見せるのはカッコいいからOKという不可思議(30-34歳、女性、医療)
- ミーティングなどに、競合社の製品を持ち込まないようにする(40代、女性、インターネット・広告・メディア)
多くの人が「これ、無駄では?」と言い出せずに悩んでいる「礼儀1.0的ビジネスマナー」。慣例的に当たり前になっていても、よく考えれば誰も得をしていない —— それにもし気づいたら、勇気を出して「ビジネスマナーをアップデートする」取り組みを初めてもいいのではないだろうか。
「礼儀2.0」アンケート:2018年7月にBusiness Insider Japanで実施。回答者は57%が男性、39%が女性。20代が25%、30代が33%、40代以上が24%、50代が12%。全体の40%が一般社員で、主任・係長クラスが12%、管理職が12%、役員・経営者が10%、フリーランス・業務委託契約が8%、アルバイト・契約社員が8%。その他が4%。小数点以下切り捨て。
(文・西山里緒、アンケート分析・五藤絵梨香)