ヤフーはつまらない会社になってしまうのか —— 覇権争い続ける2兆円企業の岐路

インターネットの時代とともに拡大を続けてきたヤフーが岐路に立たされている。

ヤフージャパン

投資拡大で成長の加速化を迫られるヤフー。一方で、いまだ見えない投資リターンは、株価に下げ圧力を加える。

撮影:伊藤有

東証株価指数(TOPIX)が過去1年で8%近く上昇する一方、年間売上9000億円、営業利益2000億円弱を稼ぐヤフーの株価は26%下落、時価総額は2.2兆円まで縮まった。ヤフーの近未来における成長を懸念する市場の声は一段と大きくなってきた。

世界はSNS・スマートフォンの時代に入り、AI(人工知能)・ブロックチェーンがこれからの社会の背骨を形成する中で、PCを中心としたプラットフォームを作り上げてきたヤフーがプラットフォーマーとしての力量をさらに増やしていくことはそう簡単ではないだろう。

そう語るのは、いちよし経済研究所・主席研究員の納博司氏。

「ヤフーにとって、一番良い時代は終わったのかもしれない。PCをコアにするインターネット時代では一丁目一番地のヤフーだが、今ではグーグルやFacebookなどにシェアを侵食されてきている。eコマースではシェアを広げようと楽天を追うが、その上にはアマゾンが君臨する」と納氏。「レッドオーシャン(激しい競争が行われている既存市場のこと)の戦いが続く中で、ヤフーは今、未来のビジネスの絵を描き直すべき時にあるだろう」

ヤフーの新たな挑戦へのコスト

世界のプラットフォーム企業

日本の「失われた20年」の間、世界のプラットフォーマーとしてその勢力を拡大してきたアメリカの企業。

REUTERS FILE PHOTO

ヤフーの2018年3月期の業績を見てみると、売上高は8971億円で前年度から5%増えたが、EC事業などへの投資を拡大した結果、営業利益は3.2%減少して1858億円と、2000億円を下回っている。内訳は、コマース事業が約6000億円の売り上げを計上し、一番の稼ぎ頭。広告をコアとするメディア事業は約2900億円だった。利益では順位が逆転して、メディアが約1700億円で、コマースは752億円と1000億円を下回っている。

ヤフーは2030年までにコマースとメディア事業の営業利益を同等にする方針を明らかにしている。それまでに新規事業からの利益も確保していく計画だ。そのために、ヤフーは「新たな挑戦への費用」として2019年3月期に、コマース事業においてモバイルペイメントの立ち上げなどで約200億円、コンテンツの調達費用などを目的にメディア事業で約100億円を費やす。当然、利益はさらに圧縮され、2019年3月期の営業利益は2018年4月現在、1300億円〜1400億円を見込んでいる。

納氏は、「SNSに加えて、メディアの世界でも大きな変化のうねりが起きている。放送局が編成する番組をユーザーに流す従来のテレビの世界には、Netflix(ネットフリックス)のようにユーザーが選ぶ番組を提供するプラットフォーマーがその勢いを強めている」と加えた。

ヤフーは7月、約93億円で料理レシピ動画「kurashiru(クラシル)」を運営するベンチャー企業、delyの株式を買収して傘下におさめた。dely創業者の堀江裕介氏は、同社は今後、ヤフーグループとして食料のeコマースビジネスを拡大させていくビジョンを述べている。

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コマースとメディアのどちらの事業による投資なのかは定かではないが、delyとの協議を進めたキーパーソンはヤフーのコマース事業を司る執行役員の小澤隆生氏だった。

先を走る楽天、その先を走るアマゾン

日本のEC市場

経済産業省より

低成長経済の日本で、2017年時点で前年比9%の成長を遂げているのがBtoCのEC市場だ。2017年、BtoCの国内EC市場は16兆5000億円に拡大(経済産業省)。BtoBもほぼ同率の9%の増加を記録し、市場規模は317兆2000億円に膨れた。EC化率は、BtoCで5.79%、BtoBで29.6%で、増加傾向を維持している。

ヤフーは過去5年でEC取扱高を急ピッチで増やしてきた。通信販売会社のアスクルを子会社化したのもその一環だ。取扱高は2017年度で約1兆8000億円と、5年前から8000億円の拡大を遂げた。しかし、追う楽天とアマゾンはさらに先を走る。

日本貿易振興機構(JETRO)が2017年にまとめたレポートでは、アマゾンが国内EC市場の20.2%のシェアを獲り、首位の座を獲得したことが明らかになった。楽天は20.1%で2位。3位のソフトバンク(Yahoo!ショッピング)のシェアは8.9%だった。

クレディスイス証券のアナリスト、米島慶一氏は、「営業利益は遅かれ早かれ2000億円まで戻るだろう。投資をやめれば利益は戻るが、ECの流通量が増えている中、期待は大きい。しかし、投資リターンや収益化するためのプランは、まだ見えてこない。ヤフーの株価が低い理由の一つとして考えられるだろう」と話す。

ソフトバンク・ビジョン・ファンド出資の企業と連携強化

川邊健太郎・ヤフーCEOと坂上亮介CFO

2018年7月27日、決算会見に出席する川邊健太郎CEO(右)と坂上亮介CFO。

Business Insider Japan

7月27日、ヤフーは第1四半期(2018年4月~6月)の営業利益が475億8400万円で前年同期から8.9%減少したと発表。売上高は9%増え、2318億5500万円となった。セグメント別では、メディア事業の営業利益が2.5%増の367億円で、コマース事業は41.1%と大幅に減少し、154億円。

決算会見に出席したCEOの川邊健太郎氏は、動画視聴時間の伸びが、ログインユーザーの利用時間の拡大につながったと述べ、メディア事業における増益を説明。一方、コマース事業においては、「ヤフオク!」の取扱高が0.6%の増加にとどまったことに触れ、今後はヤフオクの価値を見直していきたいと話した。

ヤフーは同日、同社とソフトバンクの合弁会社PayPay(ペイペイ)が2018年秋に、バーコードやQRコードを使って決済ができるスマートフォン決済サービス「PayPay」を開始すると発表した。PayPayは、インド最大の決済サービス事業者であるPaytm社の技術を活用するという。

Paytm社はソフトバンク・ビジョン・ファンド(SoftBank Vision Fund)やアリババグループが出資する企業。川邊氏は、ヤフーは今後さらに同ファンドが出資する企業らとの連携を強化していくと述べた。

(文・佐藤茂)

(編集部より:ヤフーの第1四半期の決算内容を加え、記事を2018年7月27日16:15に更新しました)

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