メルカリ、ウォンテッドリーがあえてテレワークを推奨しない理由

2020年、東京五輪・パラリンピックの開会式に当たる7月24日前後の1週間を、政府は「テレワーク・デイズ」と名付けて、期間中の在宅勤務やリモートワークの全国一斉実施を呼びかけている。

働き方の見直しが進み、ICT(情報通信技術)環境を整えることで、働く時間や場所を柔軟にする企業も徐々に増えてきた。

一方、あえて「リモートワーク(テレワーク)をやらない」という企業もある。しかも、テクノロジーを駆使し、柔軟な働き方を率先してきたIT企業にも珍しくない。その、真の理由とは。

Wantedly

ウォンテッドリーの執務フロア。リラックスできるラウンジスペースも設けるなど、対面コミュニケーションを重視する作りだ。

提供:ウォンテッドリー

すれ違う時の会話の大切さ

あえてテレワークはやらないと、経営陣で前から決めています。今の僕たちがやるべきではないと

メルカリのPeople&Culture部門担当の執行役員、唐澤俊輔さんは、在宅勤務を含むテレワークについてそう話す。

フレックスタイムや時短勤務、育休中の給与全額保障など、先端的な働き方を取り入れてきた。しかし、その中でも、テレワークはあえて推奨せず、オフィスへの出勤を基本の勤務形態としている。

同社はチャットツールのslackを全社的に導入するなど、ITツールを駆使している。ただその一方で、対面コミュニケーションを想像以上に重視している。

「僕たちはまさにこれからの会社で、人も増やしながら成長している。みんなで力を合わせて一つの目的に向かう時です。周りの顔が見えて一体感がある、頼れる仲間がいると感じることが、組織において重要なのです

さらに、唐澤さんは言う。

「テレワークでのコミュニケーションは、会議にしろチャットにしろ、意図的に連絡をする必要があります。ただ、顔を合わせたり、すれ違う時にちょっと話したりするようなコミュニケーションも大切にしたい」

メルカリ唐沢さん

メルカリのPeople&Culture部門担当の執行役員、唐澤俊輔さん。急成長で毎月人が増えるようなメルカリで、テレワークは原則禁止。

撮影:滝川麻衣子

リモートワークの原則禁止の背景として、今の会社の状況も大きく影響している。

6月に東証マザーズに上場し、米国進出も加速させるなど現在、メルカリは急成長している。月に数十人単位で採用し、社員数も拡大を続けている。入社しても出勤しなければ、お互いに顔と名前がわからないままだ。

「毎月、入社してくる人がすぐに成果を出せるようにするためには、早く慣れてもらう必要がある。周囲の人に相談したり、こんな社員がいるんだなと感じたり」

社内の空気感や言語にならないカルチャーを肌身で感じ取って、早く溶け込んで欲しいという狙いが、リモートワーク禁止の背景にある。

唐澤さん自身、部下の顔が見えることは大切だと感じるという。

「顔が見えると、安心しますよね。ちょっと今日は顔が暗いなと思ったら声をかけたり、雑談レベルの相談に応じたり。(働く上での)心理的安全性が高くなると思ってます

とはいえ、杓子定規に禁止しているわけではなく、介護や子育てを理由の在宅勤務は、現場裁量で認めているし、今後についても、柔軟だ。

「『決めたから変えない』はない。タイミングや考え方でまた変えるかもしれません。ただし今はこれがベスト、ということです」

オフィスを「家よりも快適に」

「テレワークは推奨していません。直接コミュニケーションの方が正確に伝わりますし、トラブルがあった時の処理もスピードが早いです」

そう話すのは、SNSを活用し企業と就職希望者とのマッチングサービスを運営するウォンテッドリーの広報担当者だ。

同社も、外出先から会社に戻らずリモートワークといった臨機応変な対応は「上長とコミュニケーションをとれば、現場裁量で可能」ではある。ただし、積極的なテレワーク推進とは一線を画している。

Wantedly_

靴を脱いで、くつろいだ環境で仕事のできるスペースもある。出社を快適に。

提供:ウォンテッドリー

同社でも創業して間もない頃に、エンジニアも在宅勤務をして、オンラインでコミュニケーションをとっていた時期があった。

「ただし、エンジニア同士のコミュニケーションがオンラインではうまくいかず、伝え直して修正することで工数がかかるなどしたので、あえてその体制を続けることにはなりませんでした」(広報担当者)

直接のコミュニケーションを重視するため、広々したオフィス空間、居心地のいいソファに土足禁止の清潔でくつろげるフロアの設置など「家よりも働きやすい、快適な環境」を意識したオフィス環境を整備したという。

さらに、オフィスから1.5キロメートル圏内に住めば3万円の住宅補助を出すなど、職住近接を支援して、出社しやすい環境を積極的に作っている。

テレワーク途上の日本

日本より早くに完全リモートワークを導入するIT企業が相次いだアメリカでは、IBMが2017年に在宅勤務からオフィス勤務への切り替えを打ち出したり、ヤフー!が2013年にリモートワークを廃止したりと、テレワーク(リモートワーク)の揺り戻しがすでに起きている。いずれも、クリエイティブな発想を生むコミュニケーションの活性化や、チームワーク向上を理由としている。

ただし、こうしたアメリカの大手IT企業や、日本においても、メルカリやウォンテッドリーなど「あえてテレワーク推奨しない企業」の特徴は、すでに、ITツールを使ったデジタルコミュニケーションが浸透していること。そのメリットとデメリットを踏まえた上で、選択肢としてテレワークの可能性を残しつつ、「あえて対面コミュニケーション」を選んでいる点だ。

政府は五輪期間中の交通渋滞を避けるためにも、“テレワークの定着を目指す国民運動”として、7月23〜27日までの期間中「テレワーク・デイズ」を実施中だ。2017年のテレワーク・デイを拡大し、約1500の企業や団体が参加しているという。

グラフ

日本のテレワーク導入率は1割超に止まる。

出典:総務省「通信利用動向調査」(2016年)

たしかに日本において、テレワークの普及率は約13%(総務省調べ)とまだまだ低く、都心の通勤ラッシュの混雑などを考えても、柔軟な働き方が広まることが、望ましいのは間違いない。

とくに従業員300人未満の中小企業では導入率が3%と、著しく低い。社内制度や、テレワーク実施に必要なシステムの導入は時間的にも金銭的にもコストはかさみ、普及は大企業の方が進んでいるのが現状だ。

テクノロジーを駆使したICT環境を整えた上で、各企業や個人が、目的や効果に応じて、リモートワークなのか対面重視なのか、併用なのか。多くの人が「選べる境地」に到達するには、現状の日本のテレワーク環境は、まだまだ道半ばと言えそうだ。

(文・滝川麻衣子)

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