[保存版・五反田バレーMAP]ベンチャー50社集結「社名Tシャツ」族に会いまくる街

五反田

五反田エリアの主な50社(移転した旧オイシックスとRettyも記載)。拡大画像は、地図をクリック。

制作:枝常暢子

五反田が新しいベンチャーの“聖地”になりつつある —— と言われ出して久しいが、その動きが加速している。マッピングをしてみると、あっという間に50社に達した。

街を歩けば、「ロゴの入ったTシャツの人たちが、たくさんいる」(ベンチャー関係者)、ランチを食べに店に入れば、「4テーブルで、4社が食事している」(ベンチャー社長)。五反田内で引っ越しを繰り返す企業もある。

ベンチャーが五反田に次々と引っ越し、また新たなスタートアップを呼ぶ好循環が生まれている。

7月25日、中心となる企業が集まって「五反田バレー」を結成。一過性の“ブーム”に終わらせない、と社会課題を解決するスタートアップを増やすことをミッションに掲げた。品川区とも協定を結び、イベントを開いていく。

五反田

スタートアップが約50社集結する、五反田。山手線、東急池上線、都営浅草線の3線が走り、アクセスが良い。

ほぼ毎月のように五反田で成約しています

不動産仲介業者「ヒトカラメディア」は、2016年から約25社のオフィスの移転を五反田で仲介した。

同社によると、五反田へのオフィス移転が盛んになったのは、約2年半前ごろから。「freee、トレタ、ココナラが五反田にオフィスを設けたことが、皮切りになった」(木幡大地マネージャー)。

以前は、五反田のオフィスを提案しても顧客の反応が鈍かったが、今は3社の社名を挙げると、経営者は「あの方々が行っているなら、いいですね」と納得するという。最近では「こちらから提案しなくても、候補地に五反田が入っている」(木幡さん)。

実際に、ヒトカラメディアと五反田バレー(下記)の情報などをもとにマップを作成すると、五反田エリアにベンチャーで少なくとも約50社がオフィスを構えていた(※)。

集中しているのは西五反田エリア。マップにある50社のうち、32社が西五反田に立地。西五反田7丁目は13社、西五反田2丁目は8社が集まる。西五反田7丁目は、5社が入居するTOCビル(第2TOCビルを含めると6社)があり、特に密集している。

マンションの一室から五反田へ

TOC

デジタルモンキーが入居したTOCビル。複数のベンチャーが入居する。天井が高く、フロアが広い。ビル内に商業施設も充実している。「トレタ」は一目惚れして、入居を決めたという。

コンテンツグロース事業のデジタルモンキーは2018年6月12日に、池尻大橋のマンションから五反田に移転したばかり。広報の盛永彩香さんは、スタートアップに囲まれた環境を「困った時に助けてくれそうな人がたくさんいる。この街から頑張りたい」と期待を膨らませている。盛永さんの前職、グルメ情報サービスのRettyも、2015年5月から約2年、五反田を拠点にしていた。

五反田トレンドの発端となった企業、彼らはなぜ、五反田を選んだのか。

クラウド会計ソフト、freeeは当初、佐々木大輔代表が住んでいた麻布十番のマンションにオフィスを構えていたが、規模拡大に伴い、4年前に五反田に移転した。

五反田を選んだのは、「職住近接の舞台」(freeeの川西康之CMO)だからだ。「働くことと生活を一緒に」、それを実現できる地域、と考えたとき、住居、食事ともにリーズナブルなのが五反田だった。「会社のTシャツにビーサン姿でもカジュアルに行ける店もある」。

今の社員数は600人を超える。会社の成長に合わせて増床を続け、オフィスビルの7フロアを占拠する。まるで自社ビルだ。

家賃が渋谷の半分、五反田に“出戻り”

西五反田

五反田の中でも、特にスタートアップが集まる「西五反田」。freeeやココナラ、dely、TOCビルも西五反田にある。

スキルのフリマ、ココナラは2012年に五反田で創業した後、「売り上げゼロの3人でも貸してくれる物件」を求めて、一旦は渋谷のマンションに引っ越した。その後、五反田に戻った。

中堅ベンチャーにちょうどいいサイズの事務所が、五反田にあった。五反田は家賃が渋谷の半分だった」(南章行社長)。

出戻った南さんは、五反田で実感したことがあった。

渋谷は巨大な街で、観光客や商業の人がたくさんいる。渋谷=ベンチャーにならないけど、五反田は歩いていると、“みんなベンチャー”。ベンチャーで働く人に会いまくる

五反田では自然発生的にベンチャーの広報、人事の勉強会が開かれている。

飲食店に入れば、「4テーブルで、4社が食事している時もある。みんなTシャツを着ているので、どこの会社かもわかる。自分たちの街という感じがいいですね」(南さん)と街の規模と一体感が気に入っている。

資金調達、オープンイノベーションで連携

品川区

五反田バレーの設立イベント。Tシャルを着た起業家と並ぶ、品川区の濱野健区長(左から3人目)。「職住近接」の働き方は、区にとっても税収面で恩恵がある。

次々とスタートアップが進出する五反田。企業群と区の連携も進んでいる。

2018年7月25日、6社が連携して「五反田バレー」が発足した。freeeとココナラ以外に、映像プラットフォーム「セーフィー」(五反田で3回、引っ越し)、AI型営業支援プラットフォームの「マツリカ」、飲食店向けの予約管理の「トレタ」、葬儀・僧侶のマッチングサイト「よりそう」で発足した。品川区と協定を結び、イベントの開催や、広報、採用、資金調達やオープンイノベーションで連携していく。

五反田バレーの代表理事で、マツリカの黒佐英司・Co-CEOは、「ベンチャーキャピタルや銀行が、五反田のスタートアップにアクセスしたくても、窓口がなく、機会損失があったかもしれない」と話し、地元の金融機関と資金調達で連携していく意向を表明。「五反田の企業群として、より多くのスタートアップを輩出したい」とあいさつをしていた。

五反田バレーによると、日経新聞社の「NEXTユニコーン108社」のうち、五反田の企業は2017年、9社、1億円以上の資金調達をした企業は2017年から2018年で7社になるという。

「そんなに賃料が下がりますか」

ヒトカラメディア

ヒトカラメディアの木幡大地さん。

五反田の人気の大きな理由は、何と言っても家賃の安さだ。前出のヒトカラメディアが試算した坪単価の相場は、渋谷が2万5000円〜3万5000円。表参道から青山1丁目、恵比寿あたりも2万5000円〜3万円。一方、五反田は、1万5000円〜2万円と比較的、安い。

料金相場を顧客に伝えると、「(五反田だと)こんなに賃料が下がりますか」と驚かれ、現地に見学に行くと、「全然、普通の街ですね」「飲食店がこんなにあるんですね」「ビルグレードが良い」と、次々と入居を決めていくという。

渋谷を希望する企業も多いが、「渋谷駅から徒歩10分の物件を借りても高い。五反田なら駅徒歩2分なら、渋谷まで10分で行ける」(木幡さん)。物件の賃料を人材や内装に投資し、ブランディングや採用に生かしているという。

ポスト五反田は田町

田町

記事に登場する田町周辺の5社。近辺に新駅もできる予定で、第二の五反田として注目を集める。

制作:枝常暢子

しかし、五反田にも課題がある。空き物件の減少に伴う賃料の高騰、そして大型ビルが不足している点だ。

「五反田の不動産業者はすぐに人気は下がるだろうと弱気でしたが、半年前くらいから徐々に相場が上がってきました」と木幡さん。

五反田バレー代表理事の黒佐さんは、「五反田には大型ビルが少なく、成長した企業はどうするんだろう」と口にした。実際に、Rettyやオイシックスは、事業の成長などに伴い、五反田から各地へ移転した。

そしてポスト五反田の動きも出ている。

その最有力候補が田町だ。木幡さんは「第一弾の再開発があり、いろいろなビルもある。病院やホテルもでき、坪単価も安い。品川新駅(仮)もできる」と話す。

料金相場も、同社の試算では、田町・浜松町あたりは、坪単価1万5000円〜2万円と五反田と近い。すでに、田町駅周辺には、バイオベンチャーのユーグレナや、入退管理システムのフォトシンス、家計簿ソフトのマネーフォワード、SNS分析ツールのユーザーローカル、AI開発のHEROZが、オフィスを設けている。

「このエリアは新駅で注目されつつある、品川も近いので新幹線での出張にも便利で、良い選択だった」(ユーザーローカルの伊藤将雄代表)

2016年に恵比寿、目黒、五反田で物件を探したが、良いサイズの物件がなく、田町で見つけたという。

ITバブル時代に「ビットバレー」と言われた渋谷。それに続くように、日本の至る所で、IT企業の集積地が生まれようとしている。

※五反田の50社マップは、移転した旧オイシックスとRettyを含んでいます。ヒトカラメディアと五反田バレーの情報を参考にしたため、記載のないスタートアップがある可能性もあります。情報提供をお待ちしています。

(文、撮影・木許はるみ)

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