人が辞めない!ビームス、離職率3%の衝撃——「一緒に働きたい」を重視する採用

飲食業界と並び、人手不足や離職率の高さが問題視されているのが小売り業界だ。厚生労働省によると、卸売業・小売業の離職率は14.0%(2016年)で、小売業の就職3年後の離職率は過去7〜8年、入社3年で3分の1から半数が辞めている。

そんな中、セレクトショップを中心に展開するビームスの離職率は3%台と驚くほどの超低水準だ。1976年に創業し、社員数が1700人を超える規模のアパレル小売業の中で、「日本一、人が辞めない会社」を実現している理由は何か?

BEAMS店舗

人手不足で知られる小売業界で、脅威の離職率3%を誇るビームス。

撮影:今村拓馬

クリエイター気質で外交的な設楽洋社長の右腕として人事を統括するのは、遠藤惠司副社長だ。小学校から大学まで同じ学校に通った同級生で、今でも一緒にバンドを組んでいるほどの仲良しぶりだ。

「ビームスの離職率は、少なくとも6年前からずっと3%台で推移している。この基調は十数年変わっていない。本社・オフィスと店舗(販売員)を合わせたもので、特に直近は店舗のほうが離職率が低いのは、自分でも意外なほど」と明かす。

面接中の涙も歓迎

一つのヒントは、その採用基準にある。春の新卒採用と、秋のアルバイト・準社員からの社員登用の年2回の採用活動では、いかに優秀な人物を採るかに躍起になる企業を尻目に、「最初から『ビームスを辞めにくい人』『今のビームスの中で長く仕事を続けてくれそうな人』を採用している。ビームスという集団との相性の良さを問い、学歴や成績はほぼ重視していない」と遠藤副社長。

遠藤副社長が臨む3次面接では、「『自分の部下として一緒に働きたいか』『自分で育てられるか?修正できるか?』を軸に、具体的にシビアに見る。いくら優秀でも、社内で働いているところを想像すると、収まりが悪い方、座りが悪い方、優秀すぎる方は、他社や一部上場企業で活躍されたほうがいいかと思って内定を出さない」と言い切る。

株式会社ビームス 遠藤惠司取締役副社長

遠藤惠司副社長。面接では、ビームスに「合うかどうか」を重視する。

撮影:今村拓馬

「むしろ、面接の最中に泣き出してしまうような方に興味を持つ。自分が大好きなブランドや企業で働けるチャンスだと意識したら、しゃべれなくなったり感極まったりするのは当たり前のこと。その素直さや心の奥にある『好き』という感覚、感性やセンス、そして、個性的であるかどうかを見て人物を判断している。好きだから頑張るし、勉強するし、何よりも辞めない。設楽もよく言うが、『努力は夢中に勝てない』」。

そんな「好き」な思いや個性や適性をきちんと受け止められるように、一時期、書類選考で300人程度までに絞って面接をし、最近では応募者全員(2017年は1200人)が1対1で受けられるようにしている。

仲間と共有し合える企業文化

社員が辞めない理由について、当の社員はどう、考えているのだろう。

上司・部下・同期・先輩・後輩関係なく社内のスタッフが「仲間」に近い感覚で仕事ができる環境。仲間として共有し合える企業風土が、企業文化を作り上げていると思います。(経営企画室海外戦略部、30代、戸田慎さん)

ビームス特有のカルチャーを上げる声も多い。

洋服屋でスタートしたビームスですが、時代に合った切り口で広がっているところに、社内にいる自分自身も喜びを感じますし、競合他社に負けないビームスの魅力があると思っています。自分が30年前に選んだ・選んでいただいたビームス、たくさんのお客様に愛されるビームスである事に誇りを持っています。(スタイリングディレクター、50代、丸山珠花さん)

ビームスの社員数は現在約1700人で、平均年齢は31歳。男女比は48:52で、女性が多く、ママ社員も多い。フレックスタイム制で15分単位で働け、4時間、5時間、7時間などと自由に時間を設定できる。

時短期間も小学校3年生までと、法定よりも長い。出産・育児で産休・育休に入ったスタッフは、99%復帰し仕事を継続する。

ビームス社員の写真。

撮影:ビームス社員に「辞めない企業」の理由を聞くと、企業文化という答えが目立つ。

2回の育休をいただき、なおもここで働いていることを振り返ると、お互いを尊重し合える環境は居心地が良いのだと思います。現在、時短勤務を選択しています。自分で勤務時間を決められるので、生活スタイル(子どもの成長に合わせた)に合った勤務ができるのはありがたいです。(須藤衣麻、EFFE BEAMS・Demi-Luxe BEAMS商品企画、30代)

一方、大卒初任給が20万円と、給与面では「突出して良くはない」が、ボーナスは年2回、業績連動型で必ず出す。

「時間外労働にも100%残業代を出すし、並行して残業削減の工夫も行い、97%以上のユニットで残業時間30時間未満を達成している。休暇も取りやすく、趣味や家族との時間など、ライフとワークのバランスを取りたいスタッフには働きやすいと思う」と遠藤副社長は説明する。

新しいことを打ち出し続ける

もう一つ、「店舗、本社ともに離職率が低いのは、ビームスの“大きなダイナミズム”が関係していると思う」(遠藤副社長)とも。

「常に動き、躍動し、新しいものを発掘し、提案するのがビームスの集団の本能にある。これはブランディング上でもとても大切なこと。ビームス自体が鮮度を保てていなければ見向きもされなくなる。スタッフには『変わらない存在であるために、変わり続けなければならない』とメッセージを送り続けている」

「正しいかとか、売れているかは別のことで、マーケットで新しいことを打ち出し続けていることが大切だ」

ビームす交流会

ビームス社内での交流会の様子。お祭りごとが好きで、運動会も社員旅行も実施する。

遠藤副社長提供

設楽社長がプロデュースした保養所「ビームス・バイ・ザ・グリーン」(軽井沢)などは、ゴルフ好き、スキー・スノボー好き、サーフィン・ビーチ好きの社員にも喜ばれている。

ちなみに、遠藤副社長は週に2~3回、スタッフとの食事会を開き、交流を図るとともに、約2000人のスタッフの名前をすべて覚えようと努力している。

「本社の副社長から『野崎さん、頑張ってる?』なんて声を掛けられたらうれしいし、ちゃんと自分を見てくれていると思うもの。小さいけれども大事なことを一つ一つ実行していきたい」

経営者と現場の距離が近く、社内のコミュニケーションや風通しがいいのも人が辞めない理由だろう。

編集部より:初出時「時短期間も小学校卒業まで」としておりましたが、正しくは「時短期間も小学校3年生まで」でした。訂正致します。 2018年7月26日 12:00


松下久美:ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表。「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。2017年に独立。著書に『ユニクロ進化論』。

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