なぜスタートアップは「4文字」が多いのか。経営者、コピーライター、言語学者に聞いてみた

メルカリ

メルカリは、グループ企業「ソウゾウ」「メルペイ」「ザワット」ともに4文字だ。

撮影:今村拓馬

「メルカリ」「ラクスル」……2018年に上場したスタートアップの共通点は——。

社名の文字数だ。上場した企業のほかにも、成長中のベンチャー企業を挙げてみると、「Sansan(サンサン)」「ソラコム」など4文字の社名が次々浮かんでくる。

スタートアップの中には、“4文字ベンチャー”の成長実績を意識して社名をつける会社があるほどだ。

なぜ、スタートアップは4文字が多いのか。

日経「NEXTユニコーン調査」の4分の1が4文字

クラシル

デリバリーサービスで創業し、2018年7月にヤフーの連結子会社となった「dely」は、レシピ動画サービス「Kurashiru(クラシル)」を運営する。

撮影:今村拓馬

若手起業家たちに、スタートアップと4文字社名の話題を振ってみた。

「グノシー」「エウレカ」「タスカジ」「ポリポリ」「ボイシー」「マクアケ」「モバオク」「アズママ」(社名の読み名)。日々のニュースを賑わす元気なスタートアップの社名が、次々と列挙された。サービス名も含めると、「クラシル」や「食べログ」などなど。

ある起業家は、日本経済新聞社の「NEXTユニコーン調査」(2017年秋公表)の対象企業108社にも、4文字が多いことを教えてくれた。実際に数えてみると、108社のうち4分の1に相当する27社が4文字(社名がアルファベットの場合は読み名が4文字)の社名だった。

メルカリは、同社のサイトにある説明によると、「『マーケット』の語源であり、ラテン語で『商いをする』(mercari)」に由来する。広報に聞くと、4文字であることには特に意味を持たせていないとの答えが返ってきた。

ヤフーが連結子会社化することを発表して話題になった「dely」は、レシピ動画サービス「Kurashiru(クラシル)」を運営する。フードデリバリーで創業した「dely」はその後、料理や美容、アニマル情報などを扱うキュレーションサービスに「クラシル」の名を冠した。そこには「暮らしを知る」という意味が込められているという。

メルカリと社名を間違われる

五反田バレー

2018年7月25日、五反田バレーの設立会で登壇した6社と品川区の代表者。6社中3社が4文字の社名。よりそうの山田一慶CFO(右端)、マツリカの黒佐英司代表取締役(中央)、ココナラの南章行社長(左から2人目)。

4文字であること自体に、本当に深い意味はないのだろうか。

スタートアップの集積地「五反田バレー」で聞いて回った。2018年7月25日に五反田バレーを発足させた6社のうち3社(「よりそう」「マツリカ」「ココナラ」)は4文字だ。

まずは、葬儀や僧侶のマッチングサービス「よりそう」。2018年6月に社名を変更したばかりで、その意味は「よりよい選択、理想の旅立ち」。以前の社名も「みんれび」(サービス名である「みんなのレビュー」の略語)で、やはり4文字だった。

新しい社名の候補は4文字が多かった」と同社の山田一慶CFO。「あまり長いと覚えてもらえないし、短い方が親しみやすい」と山田さん。広報は「成功しているベンチャーも4文字の会社が多いことを意識した」と話してくれた。

続いて、AI型営業支援ツールの「マツリカ」。「祭り化する」(「何かに集中したり、没頭したりする」を意味する)という自らの造語から採った。設立当初、「マツリカ」の名前が「メルカリっぽいね」と言われたり、「マツカリ」と間違えられることもあったり

黒佐英司代表取締役は「世界を祭り化する、というミッションが先にあった。4文字は特に意識していませんでした」と話す。それでも、「日本は人の名前、地名に4文字が多く、親しみやすいのでは」と実感している。

命名の3原則とは

食べログ

食べログ、じゃらん、クラシル、サービス名も気付けば、4文字が多い。

スキルのフリマ「ココナラ(coconala)」(意味は「誰に聞いていいかわからないことを、ここなら聞ける」など)の南章行社長は、社名を決める時の最低条件を教えてくれた。

条件は「覚えやすさ」「検索した時にほかに同じ名前がない」「URLのドメインが空いている」という3点。

3文字はおそらくドメインが空いていない。少しでも文字数が多い方が、空いている可能性が高い」と南社長。その上で、言葉の意味よりも響きを重視して、ほかにない社名を探した。2012年の創業当時、「ミクシィ」や「グリー」など、すぐに意味を連想できなくても、響きの良い社名が多かったからだ。

南社長は「なぜスタートアップは4文字が多いの」と聞かれた経験を持つ。はっきりとした答えは見つからないが、ITバブル以降、「ネットベンチャーでカジュアルなプロダクト名、企業名が出てきたので、どこも『オリジナルの響きがいいよね』と考えて、社名をつけたのでは」と分析した。

コピーライターも4文字を意識

タイムチケット

コピーライターとして人気の加来さんも、4文字を意識して命名することもある。

出典:タイムチケット

スキルシェアサービスで高い人気を誇るコピーライターの加来幸樹さんは、「アプリ名やサービス名を考える時、(4文字を)一定の意識はしています」と語る。

4文字が良いと具体的にオーダーされることも、ちらほらある。「リズムがよくて、口馴染み、耳馴染みもいい」という加来さんが命名した4文字の社名やサービス名は、挙げればキリがない。

4文字の名前が多い根拠は、言語の専門家によると、「4音または3音が安定した長さ」だからだという。

杏林大学国際協力研究科の金田一秀穂教授(研究テーマは意味論、言語行動、文法)は、「日本語は一般的に、4音または3音が最も安定した長さと考えられていて、3音、4音の語が最も多いことが知られています」と指摘する。

金田一教授は具体的な例として、うな丼、わたおに(「渡る世間は鬼ばかり」の略)、キムタク、ナイナイ、ドリカムなどを紹介。「(4文字の言葉は)枚挙にいとまがありません。それで4音の言葉にしたくなるのだろうと思います」とコメントした。

また、4音が安定していると言える理由については、「はっきりした理由はありませんが、普通はどの言語も、言葉が1〜3音でできています。しかし、日本語は音の種類が少ないので、2音だと同音語が多くなり過ぎてややこしいのです(カキ、アメ、ミチなどがその例)」と説明。同音語を避けるために3音または4音になるが、5音だと長すぎる印象になるということのようだ。

上記のように、4音に一定の根拠はあるようだ。しかし、金田一教授は最近の傾向として、3音の省略語が多くなっている」と教えてくれた。確かに、スタバ、マック、ケンタ……次々と事例が思い浮かぶ。4音の次は、トレンドに従って3音の会社名も続々登場するか、注目したい。

(文、撮影・木許はるみ)

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