テント村を去る前にテントを捨てた後、互いに慰めあう2人の男性。2014年10月15日、バンクーバーのオッペンハイマー公園。
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2018年、カナダ・バンクーバーの路上には2100人以上が暮らしている。バンクーバー史上最多の数。
過去3年間でバンクーバー都市圏のホームレスは、30%増加した。この数字は、ニューヨーク、サンフランシスコ、シアトルなど、拡大するホームレス問題に直面している北米の大都市圏と同じ水準。
都市圏のホームレス問題の背景は複雑。だが専門家は、収入格差およびジェントリフィケーション(貧困層の住む地域の高級化)、低家賃住宅への補助金の不足、さらにコスト上昇によって、メンタルヘルスケアが利用しづらくなったことなどを指摘した。
「バンクーバー・ストリートビュー(Vancouver Street View)」と呼ばれるプロジェクトは、ここ数年でバンクーバーのホームレス問題がどれだけ悪化しているかを可視化した。
地元のNPO、レインシティ・ハウジング(RainCity Housing)が作成したウェブサイトは、ホームレスコミュティーがバンクーバーに非公式にテントを張る前と後の比較写真を掲載している。
見てみよう。
このプロジェクトの狙いは、グーグル・ストリートビューの過去と現在の写真を比較することで、バンクーバーの悪化するホームレス問題を浮き彫りにすること。
小銭をもらうためのカップとともに、歩道で寝るホームレスの女性。バンクーバーのダウンタウン。
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2017年に市が実施した調査では、回答者の半数が、手頃な住宅が不足していることをホームレス問題の一番の理由にあげた。
高級住宅街の通りのビフォアアフター。2015年(上)と2017年(下)。
ステーション・ストリート、919の通り。2015年(上)、2017年(下)。
Vancouver Street View/Google
ショッピングで人気のウィアレイ地区の通りも同じようにホームレスのテントが並んでいる。
135Aストリート、10614。2014年(上)、2017年(下)。
Vancouver Street View/Google
2017年の写真には、ギャスタウン地区の大通りにある店の前で寝ている人たちが映っている。
イーストヘイスティングス・ストリート、52。2015年(上)、2017年(下)。
Vancouver Street View/Google
オッペンハイマー公園は、数十のテントが並ぶ非公式なコミュニティーとなった。
2016年(上)、2017年(下)。
Vancouver Street View/Google
近年、市当局はテント村の排除を試みている。だが多くの場合、また別の場所にできるだけ。
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NPOレインシティ・ハウジングは、複数の公営住宅の建設を主導している。
ゴードン・アベニュー、3035。2014年(上)、2016年(下)。
Vancouver Street View/Google
建物は、2015年後半にオープン。住宅30戸、仮設住宅30戸、そして、悪天候の際に30人を受け入れられるスペースがある。
同じ年、ホームレスの女性や子ども、200人以上が住める住宅も完成した。
プリンセス・アベニュー215。2012年(上)、2016年(下)。
Vancouver Street View/Google
2017年12月には、マーポール地区に補助金付きの賃貸住宅129戸を含む建物がオープン。依存症治療やメンタルヘルスケア・センターが併設されている。
グランビル・ストリート、8111。2015年(上)、2017年(下)。
Vancouver Street View/Google
ホームレス問題と格闘している北米の都市は、バンクーバーだけではない。2018年5月、サンフランシスコのマーク・ファレル(Mark Farrell)市長は、2910万ドル(約32億円)のホームレス支援策を打ち出した。
エルニーニョ現象による嵐から持ち物を守るために使っていたシートを片付けるホームレスの男性。2016年1月6日、サンフランシスコ。
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建築メディア、カーブド (Curbed)によると、予算はアパート197棟、約7700戸の建設に使われる予定。人口比で見ると、アメリカのどの都市よりも多い戸数。市の調査によると2017年、ホームレスの数は7499人。
2018年末までに、バンクーバーでは補助金付き住宅600戸以上と仮設住宅600戸が作られる予定。
フレイザー・ストリート、2456。2012年(上)、2017年(下)。
Vancouver Street View/Google
バンクーバー・クーリエ(Vancouver Courier)によると、現在までに156戸の仮設住宅が作られた。写真は、ホームレス向けの住宅103戸のバンクーバー・ネイティブ・ハウジング・ソサエティ(Vancouver Native Housing Society )。2014年にオープン。
バンクーバーのグーグル・ストリートビューは、手の届く住宅を提供することが、都市圏のホームレス問題を緩和する最も実用的な手段であることを明らかにするかもしれない。
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「今こそ、ストリートビュー(街並み)がどれだけ変わってしまったのかを直視し、ホームレス問題に終止符を打つための真の解決策を見つめなければならない」と同プロジェクトのチームは記している。
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[原文:Before-and-after photos show how a major city’s homelessness crisis can spiral out of control]
(翻訳:Yuta Machida、編集:増田隆幸)