NECとダイキンが実証!猛暑でも眠気吹き飛ばす「温度刺激テク」今日から職場でできる

陽炎立つ猛暑も働く日本のサラリーマン

気象庁が「災害」と表現した猛暑だが、そんな中でも高い知的生産性を発揮して働くことを求められる現実がある。せめて「温度刺激」を活用しよう。

REUTERS/Issei Kato

こう毎日暑いと仕事への集中力も続かない。盆に向かって少しは涼しくなるだろうが、猛暑の中の通勤疲れで、午後は思わずウトウト……という方も多いのではないか。

そんなあなたに朗報だ。

ダイキン工業とNECが7月25日、空調を活用してオフィスでの知的生産性を高める発見をし、実験を通じて実証したと発表した。眠気の兆しが見えた早い段階で温度による刺激を与えることで、知的生産性と関連の高い「覚醒度」を適度に保てる……要するに、眠気を抑えられるという。

覚醒度を高める「空調術」の極意

アメリカの心理学者ロバート・ヤーキーズらの研究により、人間の知的生産性と覚醒度(=脳の興奮度)には「逆U字型」の相関関係があることが明らかになっている。分かりやすく言えば、覚醒度が低すぎると眠くなるし、逆に高すぎると興奮が高まり、いずれもパフォーマンスが落ちるのである。

そこで適度な覚醒度を保つために、ダイキンとNECは、何らかの外的刺激を与える手法を思いついた。従来から「快適すぎると眠たくなる」「外の涼しい空気を吸うと目が覚める」などと言われるが、刺激に関連するとみられるそのメカニズムを明らかにすることで、覚醒度をコントロールできると考えたわけだ。

手法の妥当性を確かめるため、両社は合わせて約100人の社員を対象に、温度や照度の変化、芳香といった環境条件を変化させた時、覚醒度がどう変化するかを検証した。鋭い突起物で痛覚を刺激するといった選択肢を除外したのは、あくまで「快適性を保ちながら」覚醒度を高めることを目的としたためだ。

NEC玉川事業所内の検証用オフィス

NEC玉川事業所内に設置された検証用オフィス。被験者が単調な暗算を続ける中、WEBカメラや小型センサーで覚醒度を推定している。

撮影・川村力

結果として、室温27℃の実験室で単純作業をひたすら繰り返す場合に比べ、途中で空調を使って24℃まで下げ、短時間(30分)で27℃に戻すことで、45分以上眠気を抑えられることが明らかになった。短時間で室温を元に戻すことで、冷えすぎにより快適性が失われるのを避けるだけでなく、(温度変化という)刺激への馴れによる覚醒度の低下も防げる(温度差を3℃としたのは、ヒートショックへの配慮による)。

照明の明るさや芳香(ローズマリーなど市販品)の噴霧時間を変えた場合も多少の効果はあったが、覚醒度の変化する量も維持される時間も、温度変化による刺激に比して数分の一以下にとどまった。ただし、それらの刺激の組み合わせによって、相乗効果を得られる可能性もあるという。

「眠気」を高精度で読み取るNECの新技術

国会にて安倍晋三首相と麻生太郎財務相

日々厳しい議論が行われる国会議事堂でも、知的生産性を向上させるダイキンとNECのセンシング・制御技術が導入される……かもしれない。

REUTERS/Toru Hanai

ちなみに今回の実証実験では、覚醒度を推定するためにNECの新技術を活用した。

従来は、顔を撮影した映像からまぶたの動きを抽出し、目を閉じている時間やまばたきの回数から覚醒度を判定していた。しかしこの方法では、数100ミリ秒/回という速さのまばたきをリアルタイムで捉えるために、高速で画像処理できる高価なPCが必要だった。

NECはそこで発想を逆転させ、比較的動きの遅い「まぶたの揺らぎ」を捉える技術を用いることにより、覚醒度を推定できるようにした。

この技術は、「故意にまぶたの開閉を一定に保つことは困難」「故意に左右のまぶたの動きを揃えることは困難」という、意外に気づかない人間の特性を利用したもの。我々は眠くなると、まぶたが開いている時間や、両まぶたの動きの差に揺らぎ(不安定さ)が生じる。「まぶたの重さに何とか耐える」その動きは緩やかなので、WEBカメラなどで低フレームレートの顔映像を撮り、安価なIoT端末で十分処理できるわけだ。

安価な装置を用いて覚醒度を高精度で推測できるようになった結果、眠気の兆しが検出された時にできるだけ早い段階で刺激を与えれば、覚醒効果を大きくできることも明らかになってきた。本格的に眠くなってから室温を下げて部屋が涼しくなったところで、もはや眠気は抑えられないのである。

あなたも明日から実践できる

浴衣姿で打ち水

浴衣姿で打ち水する女性。画像で見るだけなら美しいが、水撒き程度で乗り越えられる暑さではない。

REUTERS/Issei Kato

両社の実証実験はこれまでのところ、参加した社員に「前日は酒を飲まない」「激しい運動は避ける」ことをあらかじめ周知し、体調などの前提条件が一定の幅に揃うようにしている。しかし、実生活では最近のように猛暑で予想以上に体力を奪われたり、社内外との会食が続いて疲労がたまるなど、覚醒度を維持できる条件は人によって、日によって異なるのが現実だ。

そうした環境差、個人差について、ダイキン工業は「今後さらに実験データを積み重ねていくことによって、さらに立体的に捉えられるようになる」と話す。

同社とNECの共同研究は2018年7月からフィールド実験に移行し、両社の検証用オフィスで社員たちが実際の仕事を行う中で室温や照明を変化させ、覚醒度データを積み重ねる取り組みが始まっている。

両社はそれぞれ、覚醒度推定技術(NEC)や空調・照明の制御技術(ダイキン)の実用化を進める計画だが、ぜひその成果を先取りして、「一瞬でも眠くなったら、冷房を30分だけ3℃下げる」を実践してみてはいかがだろうか。中央管理方式の空調を採用しているオフィスで仕事をしているあなたは……引き続き、眠気と素手で戦うほかない。

(文・川村力)

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