メルセデス・ベンツの発表会に登壇した同社社長の上野金太郎氏(左)とNTTドコモ 取締役常務執行役員 スマートライフビジネス本部長の森健一氏(右)。
メルセデス・ベンツ日本は7月25日、東京・銀座の新橋演舞場で新型「Cクラス」発表会を開催。4シリーズ23モデルの国内販売開始と、NTTドコモとのユニークな協業を発表した。
協業は、ドコモの展開するカーシェアサービス「dカーシェア」を使って、新型Cクラスを含めたメルセデスの一部車両の「無料の試乗申し込み」を開始するというもの。
メルセデスは、スマートフォンアプリを通した手軽な試乗申込みを実現することで、いままでアプローチできなかった情報感度の高い潜在ユーザーにメルセデス体験を広げたい考えだ。
7月25日の発表会場は「ワンピース歌舞伎」なども上演されている東京都中央区の劇場・新橋演舞場。発表会自体も能の作品である「石橋(しゃっきょう)」が上演後に続く形で、派手な演出とともにスタートした。
「Mercedes-AMG C43 4MATIC Cabriolet」。車体の色はブリリアントブルー。
「C180 Coupè Sports」。車体の色はセレナイトグレー。
“無料で2時間、同乗者なしでメルセデスに試乗”に踏み切った理由
dカーシェアは、ドコモが運営するカーシェア、レンタカー、マイカーシェアを扱うキャリアフリーのサービスだ。今回、メルセデスとの協業で「試乗」サービスが追加された。
今回のdカーシェアでの試乗申込みは、単に「スマホから予約できる」というだけではない。試乗時間は無料で最大2時間、さらに「カーシェア」であるため、試乗の定番であるメルセデス販売スタッフなどの「同乗」もない。試乗対象車種はセダンの新型Cクラス、高級ミニバンのVクラス、小型車のsmartの3種類で、サービスは8月10日から開始予定としている。
申込みにはdカーシェアのアプリと、運転免許証の登録などの同サービスへのユーザー登録が必要。また、既にdカーシェアに登録済みであっても、20歳未満のユーザーは利用できない。
試乗したいユーザーは、アプリで試乗したい車種、日時を指定して予約を完了。あとは、決めた日時にメルセデス・ベンツの情報発信拠点「メルセデス ミー東京」(東京都港区)もしくは「メルセデス ミー大阪」(大阪府大阪市)に行くと借り出せる。
カーシェアを好むようなユーザー層にアプローチ
dカーシェアとの協業は、同社の新サービス「Tap! Mercedes!」の第1弾の取り組み。同社の上野社長は「スマホを扱うような手軽さで、メルセデス・ベンツに触れてもらいたい」と話している。
メルセデスはすでに、従来からウェブでのオンライン試乗申込みを受け付けている。ただし従来は、“30〜40分程度、同乗者あり”という一般的な試乗にとどまっていた。
今回の取り組みは、「Tap! Mercedes」(タップ!メルセデス)という同社の新サービスの第1弾という位置付け。メルセデス・ベンツ日本の上野社長は、その狙いについて、「スマホを扱うような手軽さで、メルセデス・ベンツに触れてもらいたい」と説明。また、dカーシェアとの協業の狙いについては「メルセデスに今まで興味のなかった人に対して、当社の魅力を知ってもらう機会を提供したい」(メルセデス広報)としている。
dカーシェアは2017年10月に開始した比較的新しいサービスで、会員数は約5万人(2018年7月25日時点)と、まだ伸び代の多いサービスだ。それだけに比較的情報感度が高く、自動車に興味の強いユーザーがいると推定できる。
メルセデス広報によると、厳密な調査結果ではないものの「現在の(メルセデスの)メインユーザー層は50代ぐらいと認識している」という。一方、dカーシェアの中心的な世代は「30代・男性」(ドコモ広報)だ。
この取り組みを通じて、メルセデス側にとっては、「高級車ディーラーは敷居が高い」と思っていたような人たちにリーチでき、一方でドコモ側(dカーシェア)も、メルセデスに乗ってみたいという「クルマ好きの新規ユーザー」を獲得できる。
高級自動車メーカーとカーシェアは、一見すると対局的な存在に感じられる。しかし、改めて協業の思惑を想像すると、両陣営の狙いが一致した「Win-Winの取り組み」という構図が見えてくる。
同社の中ではお手頃な新型Cクラスの価格設定の一例。
(文、撮影・小林優多郎)