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薬物はダメ! 取り締まりを強化する中国、個人の排泄物を含む下水を分析して容疑者特定へ

水道管をチェックする作業員

Carlos Barria/Reuters

  • 中国は、薬物の取り締まりを強化している。
  • こうした中、薬物の使用者と売人を特定するため、一部の都市は下水の分析をし始めた。
  • これによって、薬物を製造する業者が少なくとも1者逮捕され、中国は今後、この取り組みを拡大する方針だ。
  • だが、ここで疑問が生まれる。個人の排泄物は本人のものか? それとも中国という国のものなのだろうか?

違法薬物の使用取り締まりに熱心な中国では、薬物の使用者を特定しようと、一部の都市で下水を分析している。

当局は、薬物もしくは人間のからだが特定の薬物に反応したときに作られる代謝物が尿に含まれていないか、下水を検査していると、雑誌ネイチャー(Nature)が検査に携わる中国人環境化学者の証言を引用し、報じた

実際にどのくらいの数の都市が下水の分析を行っているかは分からないが、薬物が蔓延していると言われる広東省中山市ではすでに効果が上がっているようだ。下水分析は、地元警察の薬物の製造業者の逮捕に役立ったと、化学者のLi Xiqing氏は言う。

この取り組みは、薬物の取り締まりに有効と見られているようで、2019年からは各地でこれらのデータを活用した薬物使用者の逮捕件数に目標を設定する方針だと、ネイチャーは伝えている。

また、地方政府は2018年、下水監視プログラムに少なくとも1000万元(約1億6000万円)を投資する計画だと、Li氏は言う。

尿から薬物を発見する

習近平国家主席

習近平国家主席は、違法薬物の取り締まりを強化している。

Reuters

下水から特定の物質を抜き出すこの手法は、「WBE(Wastewater-Based Epidemiology)」という名称で知られている。

一般的には、下水処理施設で集めたサンプルを分析し、通常は検出されない排出物が含まれていないかどうかを調べるものだが、中国の場合、薬物への反応としてからだが作り出す代謝物をその対象としている。

ただ、こうした処理施設は数千人から数千万人分の下水を処理しているため、中国が思い描くように、その中から個人を特定するのは難しい。

ワシントン州にあるピュージェット・サウンド大学の化学教授ダニエル・バーガード(Daniel Burgard)氏はBusiness Insiderに語った。「都市の規模が大きければ、処理施設のサンプルを使って個人を特定することは、まずできないだろう。しかし、サンプルを処理施設に入る前の下水管から採取すれば、地域ごとに比較することができる」

上海

2400万人以上が暮らす中国最大の街、上海。

VCG/Getty

WBE自体は、さほど新しい科学ではない。欧州薬物・薬物依存監視センター(EMCDDA)によると、科学者たちは1990年代に初めて、生活排水が与える影響を測るため、下水を分析した。その後、薬物やアルコール、農薬といったさまざまな物質に分析の対象範囲は広がっていった。

だが、BWEが現実の政策に取り入れられたことはなかった。バーガード氏はネイチャーに語ったように、「注目すべきは、中国が技術に基づいて、実際に行動しているように見えるということだ」

北京の環境政策の専門家Zhang Lei氏はネイチャーに、WBEは政府の反薬物政策が特定のエリアで機能しているかどうかを評価する、より客観的な手法だと語った。言い換えれば、薬物の使用を見抜くには、人間の排泄物を調べる方が、警察の逮捕・押収よりも効率がいいということだ。

中国の違法薬物との戦い

押収されたコカイン

2014年、ペルーのリマで押収されたコカインを運ぶ警察関係者。2011年から2015年にかけ、ペルー産のコカインの多くが中国へ流れた。

REUTERS/Enrique Castro-Mendivil

中国のWBEによる薬物監視への投資拡大は、この国の薬物との戦いに対するコミットメントを表している。

チャイナ・デイリーによると、2017年末の時点で中国の薬物中毒者の数は250万人を超え、その半分以上が18~35歳だ。2016年には、薬物使用の疑いで16万8000人が逮捕され、82.1トンの薬物が押収、400以上の製造工場が破壊されたという。

国連の2017年の報告によると、中国は2011年から2015年にかけて、ミャンマーやラオスで作られたヘロイン、ラテンアメリカで作られたコカインの主な流入先の1つだった。メタンフェタミンやエクスタシーの国際取引も盛んだった。

薬物の取り締まりは「国の興亡」を左右する安全保障問題だと、チャイナ・デイリーは6月、習近平国家主席の発言を引用して伝えた。習主席は警察に対し、薬物を生産するギャングや売買ネットワーク、売人シンジゲートを壊滅させるよう命じている。

「薬物問題の芽を根本から摘むことを、習主席は求めている」同紙は加えた。

排泄物は個人のものか? 中国共産党のものなのか?

中国警察

中国警察は見ている。

Feng Li / Getty Images

中国のWBEの導入は、プライバシーや人権に対する疑問を生じさせるだろう。地方政府が事前に下水分析の許しを住民から得ていたかどうかは分かっていない。

理論上、中国が薬物使用者と売人をさらに絞り込みたいと思えば、当局は自治体の下水管に流れ込む前のサンプルを採取することができるだろうと、バーガード氏は指摘する。

「しかし、このレベルでのサンプル採取は、プライバシーや倫理的な問題を招き、費用も高くつくことから、この方法で数多くの世帯を監視するのは効率的とは言えない」同氏は言う。「個人の排泄物はどの時点でその人の所有物でなくなるのかという、興味深い疑問が生じる」

ジョンズ・ホプキンズ大学で環境衛生学が研究しているカーステン・プラッセ(Carsten Prasse)氏はネイチャーにこう語っている。「アメリカの状況とは全く異なり、中国では人々は政府が示す方向に従うことに慣れていて、プライバシーに関する問題は主要な懸案事項とは見なされていないようだ」

[原文:China is so desperate to win its war on drugs, it's started analyzing people's sewage for contaminated pee]

(翻訳、編集:山口佳美)

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