Facebook「悪夢」の日が意味するもの——米でもソーシャルメディア規制の動き

株価推移の前に映るfacebookのロゴ

急成長に陰りが見えてきた。

REUTERS/Dado Ruvic

Facebookは7月25日、「悪夢」をみた。

きっかけは、第2四半期(4–6月期)のメディア・アナリスト向けカンファレンスコールだ。これが始まった午後5時(アメリカ東部時間)から約20分後、同社の「急成長神話」を信じていた投資家たちはパニックに陥った。

同社の株価は時間外取引で、24%安まで暴落した。2012年の上場以来、1日で最大の下げ幅だ。米メディアによると、時価総額にして1200億ドル。米経済史上、1企業が1日に失った最大の損失額だという。

何が起きたのか。

投資家の不意をついたCFO発言

5月24日に開かれたスタートアップイベントViva Technology 2018で話すザッカバーグ氏

ザッカーバーグCEOの「堅調」というコメントは決して間違ってはいない。

REUTERS/Charles Platiau

決算によると、見た目はいつもと変わらなかった。少ないコストで巨額の広告収入を得る、オンライン企業以外の業種が羨む結果だ。

  • 売上高:前年同期比42%増(132億ドル)
  • 純利益:同31%増(51億ドル)
  • 1株当たりの利益(EPS):32%増

マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、「堅調な四半期。傘下のインスタグラムは素晴らしい成功を収めた」と切り出した。ただし、売上高はわずかに市場予想に達せず、株はじわじわと売られていた。

しかし、後を次いだデービッド・ウェーナー最高財務責任者(CFO)が、投資家たちをパニック状態に陥れる爆弾を次々に落とした。不意をついたのは、以下の発言だ。

  1. 欧州の広告収入の伸びが、他の国・地域よりも一段と減速した。5月に欧州で施行された「一般データ保護規制(GDPR)」の影響とした。
  2. 売上高全体の伸びの鈍化は、7–9月期、10–12月期も続くという見通しを示した。為替や、各国が検討中の新たな個人データ保護規制の影響があるという。
  3. ユーザーの個人情報などを守るセキュリティを強化するため、投資を増強する。そのため、営業利益率は今後数年で現在の約44%から30%台半ばまで低下するとの見方を示した。

アナリストや投資家は「予想外」の内容を異常に嫌気する。「売り」注文はあっという間に殺到した。

成熟市場で横ばい続ける会員数

シェリル・サンドバーグ氏

Facebookは健全なペースde成長を続けると訴えるサンドバーグCOO

REUTERS/Yves Herman

シェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)は、「成長のペースは鈍化しているが、今でも成長を続けている。今後も非常に健全なペースで成長すると予測している」と述べた。しかし、投資家のショックは抑えきれなかった。

成長は続いても、「急成長」が止まる時は必ず来る。投資家たちは、決算のカンファレンスコールというお決まりの儀式の最中に、それを思い知った。

実際、Facebookの将来には、良いニュースよりも課題が山積みだ。

第1に、2018年春、米英メディアが8700万人もの個人情報が漏洩した問題を報じた。その結果、2016年大統領選挙で、漏洩した個人情報がトランプ共和党候補(当時)を勝たせるために使われた可能性が浮上した。以来、同社はセキュリティ対策に対してユーザーが抱く不信を解消しきれないでいる。同社に対する否定的な報道もアメリカでは後を絶たない。

第2に、欧米・日本などの成熟市場では会員数は横ばいが続き、新たな会員を増やしていくのは難しい状況が続く。

第3に欧州のGDPRに続き、各国が個人情報の扱いについて規制を強化する動きが目立ち始めている

米でもソーシャルメディアを規制する動き

政治専門ニュースサイト「Axios」によると、最悪の場合、欧州がターゲティング広告(個人のオンラインの利用・行動履歴から好みや趣味を特定して、個別に広告を出す仕組み)を禁止する可能性さえある。ターゲティング広告は、Facebookとその傘下のインスタグラムで、ユーザーごとに異なる広告を出す「ドル箱」だ。

またAxiosは、米連邦議会議員らが重い腰を上げて、Facebook、Twitter、グーグルなどソーシャルメディア企業を規制する法案の骨子作成に着手したと報道。上院特別情報委員会のマーク・ワーナー副委員長(民主党、バージニア州)らが、「プラットフォーマー」と呼ばれるオンラインの巨大企業を規制するための案を書き出したメモを入手して報じた。

骨子は「偽の情報をなくす」「ユーザーのプライバシーを守る」「ハイテク企業間の競争を促す」ことを柱としている。GDPRのアイデアも取り入れ、botアカウントを特定し、アカウントの信ぴょう性を知る方法を確立することなども書かれているという。

法案として可決されるかは別問題だが、11月の中間選挙で民主党が議会の多数派になれば、成立する可能性もある。

ロンドンの地下鉄のホームに掲示されたfacebookの広告

ロンドンの地下鉄ホームにはこんなFacebookの広告が掲載された。

REUTERS/Henry Nicholls

いずれにせよ、Facebookをめぐるいいニュースはあまりない。

ユーザーが待ちわびる個人情報保護や、フェイクニュース、フェイク広告の駆除などセキュリティについては、今後投資が膨らむ予想を示したところを見ると、100%安心ということにはならない状況が続くだろう。

投資家も、Facebookのようなプラットフォームの急成長という「天国」がいつまでも続くわけではないということを学んだ。Facebook、グーグル、アマゾン、アップルなどプラットフォーマーに頼る生活が拡大する一方で、その依存に不安、あるいは不信をどこかで抱いている現代人の生活を反映するような一幕だった。

(文・津山恵子)

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