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- 合意なしのEU離脱は、イギリスの自動車業界にとって「ありえない」と7月31日(現地時間)、イギリスの自動車業界団体のトップは語った。
- 「合意なしの離脱という選択肢は、ありえない。イギリスのみならず、ヨーロッパの自動車業界にも深刻な影響を及ぼすことになる」と同国自動車工業会のマイク・ホーズ会長。
- 6月にイギリス国内で製造された自動車の90%が、国内ではなく輸出向けだったことが明らかになり、ホーズ会長の警告はより鮮明となった。イギリス国内の需要は47%も急落したとロイターは伝えた。
- 「合意なしのEU離脱というシナリオをイギリスの多くの自動車メーカーが恐れている。そうなれば工場の円滑な操業に影響を及ぼし、ヨーロッパ向けに自動車を製造しているメーカーの厳しい利幅がさらに圧迫される可能性がある」と自動車業界サイト、ジャスト・オートのディレクターで自動車業界アナリスト、デビッド・レゲット氏はBusiness Insiderに語った。
合意なしのEU離脱という選択肢はイギリスの自動車業界にとって、業界が被る混乱とコストを考えると「ありえない」と7月31日(現地時間)、同国の自動車業界団体のトップは語った。
自動車メーカー各社は、イギリスのEU離脱の道筋が不透明であることに「不安を募らせている」と同国自動車工業会(Society of Motor Manufacturers and Traders:SMMT)のマイク・ホーズ(Mike Hawes)会長は語ったとロイターは伝えた。
ホーズ会長の警告は、より明確白なものになった。というのも6月にイギリスで製造された自動車の90%が輸出向けであったことが最新の統計で判明し、国際貿易に及ぼす混乱を危惧する声が浮き彫りになったためだ。
EU離脱まで残り8カ月となったが、イギリスのテリーザ・メイ首相は、イギリスとEUが経済的な結びつきを維持しつつ、互いに満足できるような提案をまだ行っていない。
つまり、イギリスとEUの経済的な結びつきが断たれる可能性は残っている。そうなれば、世界貿易機関(WTO)のルールに従い、イギリスからEUに輸出される自動車には10%の関税が課せられることになる。
「合意なしの離脱という選択肢は、ありえない。イギリスのみならず、ヨーロッパの自動車業界にも深刻な影響を及ぼすことになる」とSMMTのホーズ会長は、イギリス国内の自動車生産に関する上半期の見通しをロイターなどの記者に対して語った際に述べた。
イギリスの自動車業界は、直接、間接をあわせると85万を超える人を雇用している。ホーズ会長によると、自動車業界は合意なしのEU離脱によるあらゆる混乱に対処するために「最大限の準備」を行っている。
2018年上半期のイギリスの自動車生産は、国内需要の急落が輸出増加分を超え、3.3%減少した。6月の生産は輸出台数が6%上昇したにもかかわらず、前年同月比で5.5%落ち込んだ。国内需要が47%も急落したためだ。
「これは、モデルチェンジのサイクルとイギリスでの個人消費への圧力など、多くの事情を反映している」と自動車業界サイト、ジャスト・オート(Just Auto)のディレクターで業界アナリスト、デビッド・レゲット(David Leggett)氏はBusiness Insiderに語った。
また同氏は、コスト面からイギリスの多くの自動車メーカーは、合意なしのEU離脱というシナリオを恐れていると付け加えた。合意なしのEU離脱は、工場の円滑な操業に影響を及ぼし、ヨーロッパ向けに自動車を製造しているメーカーの厳しい利幅がさらに圧迫される可能性がある。
「イギリスの自動車業界は、ヨーロッパ全体に広がるサプライチェーンにかなり依存している。10%もの新たな関税による影響だけでなく、国境でのチェックが加われば、さらにコストがかかる。そうなれば、ジャストインタイムの納品プロセスのための生産計画が混乱することになる」とレゲット氏。
EU離脱をめぐっては懸念があるものの、ホーズ会長は記者に次のように語った。
「長期的に見れば、国内および海外の市場環境に関して、イギリスの自動車業界は期待通りの成果をあげている」
[原文:'Not an option': The British car industry is sounding the alarm on a no deal Brexit]
(翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:増田隆幸)