NASA、イーロン・マスクの火星移住計画を否定 ── 火星のテラフォーミングは不可能

イーロン・マスク氏

テラフォーミングは、イーロン・マスク氏の火星移住計画の大前提だった。

Bill Pugliano / Stringer / Getty Images

  • NASAが支援した研究によると、火星の環境を人為的に改造すること、いわゆる「テラフォーミング」に必要な量の二酸化炭素が火星には存在しない。
  • これはつまり、人類が居住できるように火星をテラフォーミングすることはできないことを意味する。
  • 火星のテラフォーミングは、イーロン・マスク氏の火星移住計画の大前提だった。

NASAが支援した研究によると、火星にはテラフォーミングを実行するために必要な量の二酸化炭素が存在しない。テラフォーミングとは、惑星の環境を人類が居住できる環境に人為的に改造すること。

この研究が正しければ、火星を人類が自由に歩き回れる環境にするというイーロン・マスク氏の計画の大前提がほぼ崩れる。

マスク氏は、火星は「修理が必要な家」のようなものと繰り返し主張してきた。最も有名なものは2015年、人気コメディアンのスティーブン・コルベア(Stephen Colbert)氏に、火星を移住可能とするための最も早い方法は、二酸化炭素でできた氷を溶かし、温室効果を生み出すために「火星の極地に熱核兵器を投下すること」だろうと語ったもの。

大気の濃度が上がれば、火星の表面に液体状の水が存在可能になるかもしれない。

火星の大気圧は地球の約0.6%。研究によると、火星は地球よりも太陽から離れているため、液体状の水を安定して存在させるのに十分なくらい温度を上げるには、地球の大気圧と同じくらいの二酸化炭素圧が必要になる。

確かに、二酸化炭素の供給源として、最もアクセスしやすいのは火星極地の氷。

科学者たちは、太陽光を吸収させるために氷に粉末を散布したり、爆薬を使って二酸化炭素を大気中に解放できるとしている。

だが、極地の氷を完全に気化できたとしても、二酸化炭素圧は現状の2倍、つまり地球の1.2%にしか引き上げることはできない。

この分析は、探査機による20年間に及ぶ火星観測の末、つい最近完了した。

Space Xの宇宙船

スペースXの宇宙船の外に出るにはまだ早い。

YouTube/SpaceX

もう1つの選択肢は、火星の土壌を加熱し、二酸化炭素を放出すること。だがNASAはそれでも、必要な大気圧の4%しか増えないと見ている。

また、火星の地表深くにある鉱物に含まれる二酸化炭素も、液体状の水を安定的に維持するために必要な大気圧の5%にしかならない。しかも、火星全体を100メートル掘り下げなくてはならない。

「我々の研究結果は、大気中に解放して、大きな温室効果を生み出すために必要な量の二酸化炭素が火星に残っていないことを示唆している」とコロラド大学のブルース・ジャコスキー(Bruce Jakosky)氏は語った。

「加えて、火星にある二酸化炭素ガスの大半は、アクセスしにくく、容易に利用できる状態にはない。つまり、現在の技術では、火星のフォーミングは不可能」

以下は、研究結果を分かりやすく図示したもの。

研究結果の図

火星のテラフォーミングは、マスク氏が考えるほど簡単ではない。

NASA

火星に昔、水が流れていた可能性があることを示す証拠は存在する。だが、それを可能にしていた太古の大気は、太陽風や太陽光によって失われてしまった。

仮に今すぐ、太陽風や太陽光を防いだとしても、現在の大気圧が2倍になるまでだけでも、1000万年かかるだろうとの見解を同チームは示した。

また「彗星や小惑星の軌道を変え、火星にぶつける」ことでこのプロセスをスピードアップすることはできる。だが「何千個も必要となるだろう」。

つまり、同チームは“現在のテクノロジー”を使って、火星の大気を濃くする有効な手段は存在しないと指摘した。

[原文:NASA just quashed Elon Musk's plans to make Mars habitable for humans

(翻訳:Yuta Machida、編集:増田隆幸)

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