左から、ピースオブケイクCXOの深津貴之氏、ピースオブケイクCEOの加藤貞顕氏、日本経済新聞社 常務取締役の渡辺洋之氏。
日本経済新聞社(以下、日経新聞社)と、「note」や「cakes」などのコンテンツプラットフォームを展開するピースオブケイクは8月3日、資本業務提携を発表した。
ピースオブケイクが明らかにしたところによると、7月30日に日経新聞社、日本ベンチャーキャピタル、新潟ベンチャーキャピタルから合計約4億円の第三者割当増資を実施。そのうち3億円は日経新聞社によるもの。これに伴い、日経新聞社 常務取締役の渡辺洋之氏が社外取締役に就任した。
ピースオブケイクの代表の加藤貞顕氏は編集者でもあり、累計280万部のベストセラー『もしドラ』(岩崎夏海 著)や『ゼロ』(堀江貴文 著)※、『マチネの終わりに』(平野啓一郎 著)を仕掛けたヒットメイカーとしても知られる。noteをはじめとするコンテンツプラットフォームを通じて、「クリエイターの活躍の舞台を広げる」ことについては、パートナーの立場である出版社も巻き込んで、さまざまな形で取り組んできた。
コンテンツプラットフォーム「note」。ブログ的に記事公開ができるほか、簡単に有料課金コンテンツも発信できる。ピースオブケイクはコンテンツ連携先を広げ、noteのクリエイターとつなげて、プロデビューも含めた活躍の場を広げる取り組みにも力を入れている。
加藤氏によると、今回の日経新聞との資本業務提携の構想は、数カ月前から話を詰めてきたもの。noteにおけるコンテンツ連携先・既存21社を拡大するために、日経新聞社と交渉していたことがきっかけとなった。
両社の今後のコミュニティ連携の形として、「日経IDを使ってnoteにログインできるID連携も具体的に検討している」(加藤氏)ほか、日経新聞社が展開するビジネスコミュニティ「COMEMO」でのnoteのクリエイターらの連携も、両社の連携テーマの1つとして議論されていると言う。
8月3日配信の日経新聞電子版によると「日経とピースオブケイクはミレニアル世代向け新サービス開発などに取り組む」としている。
4億円の増資でエンジニア、データサイエンティストの人材採用を加速
現在、ピースオブケイクは従業員35名。規模拡大に合わせて移転を重ね、3件目となる東京・渋谷のオフィスも手狭になってきた。
加藤氏は、今回の増資による調達資金の使途として、積極的に取り組んでいるnote関連の人材採用を挙げる。具体的には、プラットフォームを開発するエンジニア、コンテンツ分析をするデータサイエンティスト、サービスへのAI実装にまつわる人材、noteコミュニティーを活性化させるコミュニティーマネージャーといった職種を厚くしていく方針だ。
note事業は、外部の企業がnoteのシステムを独自ドメイン上で運営し、独自コンテンツの発信や集客をするB2B2Cのコンテンツプラットフォームとしての側面も持っている。
今回の資本業務提携は、こうした幅広い用途も含めたnoteプラットフォームを拡充させるための動きと言える。
※『もしドラ』=『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 』、『ゼロ』=『ゼロ ── なにもない自分に小さなイチを足していく』
(文・伊藤有)