北朝鮮では、10人に1人が「現代の奴隷」として働かされている —— 最新レポート

窓の外を眺める人々

バスの窓から外を眺める人々(平壌、2011年4月2日)。

Feng Li/Getty Images

  • 北朝鮮ではその抑圧的な体制を支え、人口を厳しく統制するために、10人に1人が強制的に"現代の奴隷"にされている。
  • オーストラリアの人権団体「ウォーク・フリー・ファンデーション(Walk Free Foundation)」がまとめた報告書『2018 Global Slavery Index』によると、北朝鮮では260万人以上が強制労働や国による搾取の対象にされている。
  • 同団体は50人の脱北者にインタビューを行い、その多くが労働に対する報酬は支払われなかった、もしくは国による減俸の対象になっていたと語った。
  • ウォーク・フリー・ファンデーションのグローバル・リサーチ担当、フィオナ・デービッド(Fiona David)氏はBusiness Insiderの取材に対し、北朝鮮と関わりを持つときにはこのデータを考慮に入れなければならないと語った。

最新の調査によると、北朝鮮ではその抑圧的な体制を支え、人口を厳しく統制するために、10人に1人が奴隷のような暮らしを強いられている。

オーストラリアの人権団体「ウォーク・フリー・ファンデーション」がまとめた報告書『2018 Global Slavery Index』によると、"現代の奴隷"は北朝鮮やその他の抑圧的な体制下で最も広まっていることが分かった。だが、先進国も強制労働によって作られた3540億ドル(約39兆円)相当の製品を輸入することで、それに加担しているという。

北朝鮮では人口2500万人のうち260万人以上が"現代の奴隷"にされていて、その人口比率は世界で最も高くなっている。大半は報酬を保証されることなく、強制的に働かされているという。

世界全体では、約4030万人が"現代の奴隷"状態にあると見られている。"現代の奴隷"は、強制労働や借金による束縛、強制結婚、奴隷もしくは"奴隷のような扱い"、人身売買に苦しむ人々と定義づけられている

ウォーク・フリー・ファンデーションは世界中のさまざまな形態の奴隷状況を監視し、その撲滅を目指している。鉱業で財をなしたオーストラリアのビリオネア、アンドリュー・フォレスト(Andrew Forrest)氏によって設立された。

報酬ゼロで働かされる北朝鮮の人々

北朝鮮のウェイトレス

レセプション中、厨房で食べ物の準備をする北朝鮮のウェイトレス(平壌、2011年4月2日)。

Feng Li/Getty Images

北朝鮮のトップである金正恩朝鮮労働党委員長は、国民に奴隷であることを強いるため、複数の異なる手法を用いている。

ウォーク・フリー・ファンデーションは、2011~2016年の間に国をあとにした50人の脱北者(女性27人、男性23人)にインタビューを実施した。全員が北朝鮮での労働は朝鮮労働党を中心に組織されていると語り、その多くが労働に対する報酬は支払われなかった、もしくは国による減俸の対象になっていたと述べた。

インタビューに応じた脱北者の一部は、「社会労働者」として子どもも大人も報酬抜きで農業や建設業に従事させられていたと語っている。大人の場合、70日から100日間連続で働かされることもあり、命令に従わなければ罰せられたり、支給される食べ物の量を減らされるという。

脱北者たちはまた、強制労働所(本質的には国が運営する刑務所)についても語っている。ここには15日以上仕事のない市民が最低でも6カ月間、重労働に従事するために送られるという。

北朝鮮では仕事を休むことすら許されず、従わなければ厳しく罰せられる。

報告書によると、ある脱北者の男性は「許可なく休めば、強制労働所に送られる」と語った。

また、2人の脱北者は「特別作業隊」もしくは「ストームトルーパー」と呼ばれる、建設業を中心とした重労働を何年も強いられる非常に貧しい男性と女性の集団について語っている。

ある脱北者の女性は、彼女の毎月の給料は強制労働者のための資金として使われていたと言う。「報酬を受け取ったことはありません」彼女は言う。「わたしの職場から彼らはお金を取って特別作業隊をサポートしていて、その結果、給料は一切手元に残りませんでした」

北朝鮮で奴隷状態にある人の数は2倍以上に

不安そうな脱北者

中国北東部にある隠れ家からの出発を不安そうに待つ脱北者。

Bryan Chan/Los Angeles Times via Getty Images

北朝鮮の"現代の奴隷"は、110万人から260万人以上に急増している。

大幅に増えたのは、国連の国際労働機関(ILO)の専門家委員会や国際移住機関(IOM)と協力することで、新たなデータが入手できるようになったことが大きいと、ウォーク・フリー・ファンデーションのグローバル・リサーチ担当、フィオナ・デービッド氏はEメールでBusiness Insiderに語った。

ILOは国による強制労働に特に関心が高く、新たなデータが得られたことで、これまで知られていたよりも人数が増えたのだとデービッド氏は言う。

ウォーク・フリー・ファンデーションは政府や企業に対し、特に6月に行われた米朝首脳会談を踏まえて、抑圧的な政権と関わりを持つときには人権を優先するよう呼びかけている。

デービッド氏は、世界の国々が北朝鮮に対する金融規制、貿易制限を着実に行うことがいかに重要であるかを強調した。

「抑圧的な政権との貿易、ビジネス、投資については、"現代の奴隷"に貢献したり、そこから利益を得ることのないよう注意深くモニタリングすべきだ」

[原文:1 in 10 North Koreans are forced into modern day slavery, human-rights study estimates]

(翻訳、編集:山口佳美)

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