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- カナダとの関係が悪化する中、サウジアラビアはカナダに留学している自国の学生を全て引き揚げるという。
- サウジアラビアの政府関係者はカナダのグローブ・アンド・メール紙に対し、カナダには現在1万5000人を超えるサウジアラビア人が留学中で、政府から奨学金や補助金を受けたり、政府が出資する課程で学んでいるという。
- またサウジアラビアの地元メディアは、同国が治療のために患者をカナダへ移送しないよう通達されたと報じている。
- 8月3日(現地時間)にカナダの外務省がサウジアラビアに対し、人権活動家の解放を求めて以来、両国の関係は急速に悪化している。
サウジアラビアの人権問題をめぐりカナダとの関係が悪化する中、サウジアラビア政府はカナダに留学している自国の学生を全て引き揚げる考えだ。
サウジアラビアの教育省文化局は6日、カナダにおける全ての訓練プログラム及び奨学金プログラムを9月のイスラム暦の終わりまでに停止することをウェブサイトで発表した。これ以上の詳細は明らかになっていない。
カナダのグローブ・アンド・メール紙によると、現在1万5000人以上のサウジアラビア人学生がカナダの大学等に留学していて、政府から奨学金や補助金を受けたり、政府が出資する課程で学んでいるという。サウジアラビアの政府関係者が取材に応じた。
同伴している家族もカナダを去ることになると見られ、最大で2万人のサウジアラビア人がカナダを後にすることになると、この関係者は話している。
フィナンシャル・タイムズのAhmed Al Omran記者は、サウジアラビアの国営放送を引用して、これらの学生はアメリカやイギリス、オーストラリア、ニュージーランドへ移ることになるだろうとツイートした。
サウジアラビアの地元メディアは、同国が治療のために患者をカナダへ移送しないよう通達されたと報じている。
関係悪化はツイートから始まった?
政治活動家のサマル・バダウィ氏。2012年に「世界の勇気ある女性賞」を受賞、当時の国務長官ヒラリー・クリントン氏と当時のファーストレディー、ミシェル・オバマ氏から受け取った。
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カナダとサウジアラビアの関係は、カナダの外務省が3日、サウジアラビア政府に対し、逮捕した人権活動家の解放を求めて以来、急速に悪化している。
逮捕された活動家の中には、女性には男性の保護者が必要だというサウジアラビアの制度を批判し、女性の権利を求めて活動しているサマル・バダウィ(Samar Badawi)氏も含まれている。同氏は国際的にも知られる、サウジアラビア政府に批判的なブロガーで、同国で投獄されているライフ・バダウィ(Raif Badawi)氏の姉でもある。
カナダは、サウジアラビアにおける女性の権利を求める活動家たちの逮捕が相次いでいることに対し、ツイッターで「重大な懸念」を示し、これがサウジアラビアを怒らせた。サウジアラビアは一連の外交手段を用いて、カナダに対し、強硬姿勢を見せている。
サウジアラビアはカナダ大使に24時間以内に国外退去するよう求めた他、カナダとの新規の投資を全て凍結、トロント行きのフライトを全てキャンセルした。
エスカレートするサウジアラビアの対応に、カナダは「深刻な懸念」を示したが、「国内外における人権保護のためにいつでも立ち上がる」と述べている。
国連もここ数カ月「人権活動家の恣意的な拘束」が相次いでいると思われる事態に対し、警鐘を鳴らしてきた。
サウジアラビアでは5月15日以降、少なくとも15人の人権活動家が逮捕されたと見られていて、報道されていない逮捕者も含めると、実際の数字はそれ以上だと見る声もある。サウジアラビアはこれらの逮捕者はいずれも「王国の安定を損なおう」とする人物であり、逮捕は法的なガイドラインに沿ったものだと主張している。
[原文:Saudi Arabia is pulling thousands of students from Canada in an escalating human rights feud]
(翻訳、編集:山口佳美)