火星探査車キュリオシティの6年と火星の絶景

火星・アキダリア平原

映画『オデッセイ』の舞台となったアキダリア平原。

REUTERS/NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona

火星の表面は、奇妙だが美しい。

2012年8月5日(米国時間)から現在までの6年間、火星探査車キュリオシティ(Curiosity)は、火星のある地域の調査を続けている

キュリオシティは6年間をゲール・クレーターの内側のみで過ごしている。総走行距離も20キロほど。だがキュリオシティは驚くような画像を数多く撮影してきた。

NASAはほかにも、衛星や探査機、打ち上げから15年以上が経つ探査車オポチュニティ(Opportunity)などを使って火星表面の写真を撮影している。

写真に捉えられた火星表面は、多くは“赤い惑星”というイメージ通り。岩が多く、乾燥し、砂にまみれ、地球の砂漠とそう変わりはない。

だがクレーターや谷の様子などは、地球のどんな地形ともまったく違う。暗い色と明るい色がくっきりと分かれたところ、二酸化炭素の氷、異世界のような模様などがある。

火星にも気象現象がある。2018年6月には、火星全体を覆い尽くす巨大な砂嵐が発生した。

火星表面の驚くべき姿を見てみよう。

だがもちろん、火星にはまだ未発見のことが多い。2018年7月末、科学者は火星の南極の氷の下に、液体の水を持つ長さ20キロの池が広がっていると発表した。

2018年1月、キュリオシティは自撮り写真を撮影。カメラを載せたアームが消えているのは、複数の画像を合成しているため。

キュリオシティの自撮り写真

NASA/JPL-Caltech/MSSS via AP


2012年、キュリオシティは火星に到着した直後に、最終目的地シャープ山のふもとを撮影した。火星の山や谷の多くには、地球の地形と同様に名前が付けられている。

シャープ山のふもと

Reuters/NASA


2012年に撮影されたゲール・クレーターの最初の写真のうちの1枚。クレーターの縁には網状の谷が刻まれている。科学者は水の浸食でできたと考えている。

ゲール・クレーター

REUTERS/NASA/JPL-Caltech/MSSS


その後ほどなくして、キュリオシティは水の存在を示す、さらなる証拠を見つけた。2012年9月、シャープ山のふもとの岩が露出した場所で、角が丸くなった砂利のようなものを見つけた。この形状は、水が存在する場所で岩が形成されたことを示している。

丸い砂利のようなもの。

REUTERS/NASA/JPL-Caltech/MSSS


2012年12月、シェーラー露頭で撮影された斜めに傾いた地層。斜交層理と呼ばれる。

斜めに傾いた地層

REUTERS/NASA/JPL-Caltech/MSSS

※露頭:地層や岩石が露出している場所

ゲール・クレーターで撮影された画像の多くには、いかにも火星らしい風景が写っている。キュリオシティは2013年、ゲール・クレーターで最も標高が低い地点、イエローナイフ湾に到達した。

ゲール・クレーターの写真

REUTERS/NASA


イエローナイフ湾で、堆積物にできた小さな穴を通って水が浸透した証拠を発見した。

イエローナイフ湾の画像

REUTERS/NASA/JPL-Caltech/MSSS


一方、NASAの火星探査機マーズ・リコネッサンス・オービター(Mars Reconnaissance Orbiter:MRO)は2006年、火星を周回する軌道に入った。以来、火星の画像を地球に送信している。これは2013年6月に撮影された画像を着色加工したもの。右下に見える青い小さな点がキュリオシティ。

探査衛星による画像

REUTERS/NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona


2015年にMROが撮影したオフィル谷。マリネリス峡谷と呼ばれる巨大な峡谷の北側にある。

MROが撮影したオフィル谷

REUTERS/NASA/JPL/University of Arizona


地形が高い頻度で変化するため、NASAはニリ・パテラと名付けた砂丘を定期的に観測している。MROが2014年に撮影した画像。

火星の砂丘

REUTERS/NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona


2013年11月にMROが捉えたクレーターの画像。隕石の衝撃がはっきりと分かる。

MROが捉えたクレーターの画像

REUTERS/NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona


中緯度地帯にある波打つような地形は、かつて水や氷によって形成された可能性がある。MROが2017年に撮影。

中緯度地帯にある波打つような地形

NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona


2014年1月にMROが火星の北極近くで撮影。冬にできる二酸化炭素の氷の下に、砂丘が見える。

氷の下に見える砂丘

REUTERS/NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona


映画『オデッセイ』のファンにはおなじみのアキダリア平原。2015年にMROが撮影。

火星・アキダリア平原

REUTERS/NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona


1〜10メートルの幅の溝の列は、火星の南半球にあるヘラス平原で見つかった。MROが撮影。

ヘラス盆地の長い溝の列

REUTERS/NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona


ノクティス迷路の眺めは、特に地球とは大違い。MROが2013年に撮影。

ノクティス迷路

REUTERS/NASA/JPL/University of Arizona


火星の赤道付近、メリディアニ平原にあるヴィクトリア・クレーターは、まるで抽象画のよう。2006年にMROが撮影した画像には、クレーターの外側、時計の文字盤で言うと9時と10時の間に探査車オポチュニティが小さな点として映っている。

ヴィクトリア・クレーター

REUTERS/NASA/JPL/Caltech


探査車オポチュニティは15年近くにわたり、火星の探査を続けている。2005年に発見したこの鉄隕石は、地球以外の惑星で確認された最初の隕石。

火星で発見された鉄隕石

REUTERS/NASA/JPL/Cornell


大きな合成パノラマ写真から切り出された画像に写っているのはコロンビア・ヒルズと名付けられた丘陵。2004年に火星探査車スピリット(Spirit)が撮影。スピリットはオポチュニティとともに火星に送られ、2004年1月、オポチュニティより数週間先に火星に着陸した。2010年、発電量の低下により地球との交信は途絶した。

コロンビア・ヒルズ

REUTERS/NASA/JPLCornell


火星探査機フェニックス(Phoenix)が、ロボットアームを使って火星表面に掘った2本の溝。土壌のサンプルを採取して解析した。フェニックスは2008年5月から11月にかけて探査を行った。

火星探査機フェニックスがロボった・アームで掘った溝

REUTERS/NASA/JPL-Caltech/University of Arizona


一方、火星探査車キュリオシティは、今でもゲール・クレーター内部の探査を続け、生命(微生物)がかつて生息していたことを示す痕跡を探している。画像は2015年8月にバックスキン(Buckskin)と名付けられた調査対象地点から、地球に送信された自撮り写真。2020年に打ち上げ予定の次の火星探査ミッションで用いられる探査車は、キュリオシティがベースとなる。

キュリオシティの自撮り写真

NASA/JPL-Caltech/MSSS


[原文:NASA's Curiosity rover has been exploring Mars for 6 years now — here's what the red planet's surface looks like up close

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:増田隆幸)

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