「おかんの味」をオープンソース化、孫泰蔵氏も参画する食ベンチャー「OPENSAUCE」の台所革命

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「あの人」を育てた謎の料理たちをアーカイブに。そしてレシピはブラッシュアップされる。

「〇〇を育てた母の味を体験してみませんか?」

大物起業家、著名なシェフ、身近な知人、「どこのお宅にもあると思うんですが、一体、これは何だ、という謎の料理」。

そんな名もないレシピを残そうと、レシピのオープンソース化に挑戦するOPENSAUCE社が、2017年12月に設立された。2018年8月8日に都内で開かれた「スマートキッチン・サミット・ジャパン 2018」で、OPENSAUCEの宮田人司社長が登壇し、想いを語った。

宮田さんは、かつてNTTドコモのiモード時代に着メロ事業を成功させた人物。OPENSAUCEのメンバーには、かねてから宮田さんと事業をする、連続起業家の孫泰蔵さん、元ソフトバンクモバイル常務執行取締役の大蘿淳司さんらが参加。孫さんは、CGO (Chief Gastronomy Officer)、大蘿さんは、CDO (Chief Drunk Officer)に就任し、それぞれ取締役も兼ねる。このほか、メンバーは、食のビジネスとは無関係の人が大半を占め、30人で構成する。

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OPENSAUCEの宮田人司さん。しいたけの謎の料理は、とってもおいしいという。

きっかけは「宮田家の謎煮」

宮田さんは、サミットで起業の経緯を説明する。

「宮田家に伝わる謎の料理」として、「宮田家の謎煮」を紹介。椎茸と酒、レモン、玉ねぎなどを煮込んだ料理で、名もなき料理だ。「自分が大人になって、自分でも作るようになったら、周りの誰もが、この料理を知らない、そんなはずがないと。お袋に聞いたら、家族でタイに住んでいた時に、メイドさんが考案した料理だった」。宮田さんは、“謎の料理”を考案したメイドに敬意が湧いた。

この料理は、宮田さん自身と妻、娘がレシピを継いでいるが、母親が2017年に他界。次第に、どこの家庭にもある名もなき美味しい料理のヒストリーが、「継承されなくなる」と不安を覚えた。レシピのオープンソース化をし、それぞれの思い出の詰まったレシピを残し、またそれをユーザーが利用することで、レシピがブラッシュアップされる —— 宮田さんは、そんなことを期待した。

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宮田家に伝える謎の料理、実は50年前にバンコクのメイドさんがつくったものだった。

先進地でレシピのオープンソースに開眼

OPENSAUCEの創業前に、中心メンバーは食のオープンソースの先進地として知られる、スペインのサン・セバスチャンを訪問した。いくつかのお店や市場、料理専用の大学などを回り、あるレストランで、チョコレート味のデザートを食べた。

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チョコの味のしたデザート、実は中身は…。

「シェフに言われるがままに、デザートを食べたら、基本はチョコの味、ただ動物のような味がした」(宮田さん)。シェフに聞くと、「すべて豚の血で作っている」と明かしたという。その後、お礼のメールをシェフに送ると、5分後にレシピが添付されたメールが返ってきた。「これが食をオープンソース化するということなんだ」。宮田さんは、レシピのオープンソース化への認識を改めた。

「高名なシェフになればなるほど、レシピの公開に躊躇しない」と宮田さん。「料理人に聞くと、秘伝のタレなんてないと言う。料理人たちは、レシピを公開しても、痛くもかゆくもない」と話す。公開しても、同じ環境や腕でレシピを再現できないからだ。

OPENSAUCEの取締役で、金沢の高級料亭「日本料理 銭屋」の2代目高木慎一朗さんが、各国の料理人に聞くと、「うちのレシピも出すよ」との意見が挙がったという。そして、そんなシェフたちにとっても、最高の料理は「ママの料理」だった。

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スペインのレストランで実体験した、レシピのオープンソース化。

OPENSAUCEがレシピをオープンソース化するアプリをリリースするのは、10月ごろ。原材料や調理器具など、詳細なレシピの情報を記録できるようにする。

サービスのソースコードそのものもオープンソース化して公開し、各地でレシピを共有するムーブメントを生みたいと考える。誰かが公開したレシピを使って、店を開く人が出てきてもいいという。ブロックチェーンで管理し、「レシピを開発した人や関わった人に、トークンなど、何かしらのインセンティブが入るような」仕組みも、方法としては考えられる。ただ、事業計画に縛られまいと、計画はあえて立てていない。

「農業版WeWork」構想、レストランと3つの柱

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OPENSAUCEは、新しい農業の働き方を提案する。

マネタイズに関しては、「レシピの事業、農業、レストランを同時に進めて、補完しながら、前に進みたい」と宮田さんは言う。

OPENSAUCEは、レシピのオープンソース化以外にも、耕作放棄地などを使った事業“旅農業”や、そこで採れた野菜などを提供するレストランの開業を予定している。

旅農業「KNOWCH」(ノウチ)は、「農業のWeWork」だと言う。OPENSAUCEが耕作放棄地などの畑を全国で運用し、一般のユーザーに貸し出す仕組み。必要な道具や売り先は同社が準備し、ユーザーは「旅をするように、季節ごとに全国で農業ができる。農業の新しい働き方だと思う」(宮田さん)。現在は、耕作放棄地を含む、金沢市周辺の1万坪の農地で、同社社員が栽培を実証実験中だ。

レストランは12月に開業を予定している。自社栽培の農作物を提供するだけでなく、有名シェフや一般の人のレシピなど、随時、ジャンルやスタイルが変わるレストランを目指すという。

(文、撮影・木許はるみ)

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