北朝鮮の金正恩委員長とアメリカのトランプ大統領。
Evan Vucci/AP
- 国務長官のマイク・ポンペオ氏を含むアメリカの政府高官は、北朝鮮に対し、核兵器を放棄するよう繰り返し要求しているが、北朝鮮はそれを拒否しているという。
- ポンペオ長官は、北朝鮮が保有している核兵器の量を明らかにさせることにすら苦労していると、Voxは報じている。
- この8日(現地時間)の報道は、北朝鮮が非核化から遠ざかろうとしている可能性を示す、一連の報道の最新のものだ。
- トランプ政権の内部からはすでに、アメリカの要求に応じない北朝鮮に対する不満の声も聞かれ始めた。
北朝鮮との核をめぐる交渉は、うまくいっていないようだ。アメリカは北朝鮮に対し、保有する核兵器の多くを廃棄するよう呼びかけているが、北朝鮮はこれを繰り返し拒否している。
トランプ政権は、北朝鮮が保有する核兵器のうち、60~70%を今後6~8カ月以内にアメリカもしくは第三国に移すよう求めてきた。Voxが8日、関係者2人の話をもとに報じた。
国務長官のマイク・ポンペオ氏は、北朝鮮が保有している核兵器の量 —— 中でも、どれだけの数の核弾頭を持っているか —— を明らかにさせることに苦労してきたという。ワシントン・ポストによると、アメリカの情報機関は北朝鮮が最大で60の核弾頭を所有していると見ているが、北朝鮮に関する情報収集は難しく、どんな切り札を隠し持っているかは誰にも分からない。
Voxによると、北朝鮮はポンペオ長官にうんざりしているという。繰り返し拒否しているにもかかわらず、長官は非核化の要求を繰り返し、北朝鮮の"ノー"を回答として受け取ろうとしないためだ。ポンペオ長官の7月の訪朝後、北朝鮮外務省は「ギャングのような」要求であり、「遺憾だ」とアメリカを批判した。
Voxのこの報道は、北朝鮮との核をめぐる交渉で、トランプ政権が期待するような結果を引き出すことはできないのではないかという一連の報道の最新のものだ。
北朝鮮はここ数週間、平壌郊外の山陰洞(サンウムドン)にある施設で、液体燃料を使った大陸間弾道ミサイルを製造している可能性が指摘されている。他にも、秘密施設で核燃料の生産を増やしているとか、寧辺(ニョンビョン)の核施設で主要インフラの整備が進んでいるとか、固体燃料を使った弾道ミサイル開発のために咸興(ハムフン)にある施設を拡大しているなどと報じられている。
8月初めには国連の部外秘の報告書が公になり、北朝鮮は「核及びミサイル開発を止めてはいない」ことが分かった。
トランプ大統領と金正恩委員長がシンガポールで初の首脳会談を行ってから2カ月弱、現状はトランプ政権のメンバー、中でもポンペオ長官がしばしば繰り返すフレーズ「金委員長が合意した、最終的かつ完全に検証された非核化(final, fully verified denuclearization)」からは程遠い状況にある。
「金委員長は非核化を約束した」ポンペオ長官は報道陣に語った。「国際社会がそれを求めているし、国連の安保理決議もそうなっている。北朝鮮の行動はある意味、矛盾している。彼らは国連安保理決議に違反しているが、我々は我々の求める最終的な成果を得るための方策をいくつも持っている」
政権の他のメンバーも不満を漏らしている。「アメリカはシンガポール宣言に従っている」大統領補佐官(国家安全保障問題担当)のジョン・ボルトン氏は6日、FOXニュースに語った。「我々が非核化に必要だと考える行動を取らないのは、北朝鮮だ」
核兵器を保有し続ける一方で、北朝鮮は豊渓里(プンゲリ)の核実験場を廃棄し、ミサイルの発射実験を停止し、拘束していたアメリカ人を解放し、朝鮮戦争で命を落とした米兵のものと見られる遺骨を返還した。だが、北朝鮮は非核化のプロセスを始めたようには見えない。
非核化のプロセスをめぐっては、多くの専門家が米朝首脳会談の共同声明には実質上、何も書かれていないと批判していた。
[原文:The US has been asking North Korea to scrap its nuclear weapons — but Pyongyang keeps saying no]
(翻訳、編集:山口佳美)