世界初、トークン活用のグルメSNSが資金調達 —— シンクロライフ「トークン転換権付株式」導入へ

シンクロライフHP

シンクロライフのサービス説明画面。レビュアーのサービス貢献度に応じて貯まる「経験値」のほか、レコメンドの参考になる「あなたとのシンクロ率」なども表示される。

Synchrolife

トークンエコノミーを用いたグルメSNS「シンクロライフ」を運営するGINKANが8月10日、スマホ向けポイントサービスのセレス(東証一部上場)との資本提携を発表した。セレスと元サイバードホールディングス代表取締役会長の小村富士夫氏を引受先とする、総額8000万円の第三者割当増資を実施した。

GINKANは8月2日に、世界で初めてグルメSNSにトークンによる報酬付与の仕組みや仮想通貨ウォレット機能を導入した。さらなる成長を目指すGINKANと、仮想通貨交換業者ビットバンクを持分法適用関連会社にするなどブロックチェーン関連の事業展開を進めるセレスの思惑が一致した形だ。

今回の第三者割当増資では、GINKANの子会社であるSynchroLife, Limitedが発行する独自トークン(グルメSNS「シンクロライフ」内でレビュアーへの報酬や、今後導入される食事代金の決済に使われる)への転換権を付与した株式を発行する。

従来の株式による出資では、株式上場(IPO)あるいは事業売却以外に投資資金の回収(イグジット)方法がなかったが、新たにトークンへの転換権を行使するという選択肢が生まれることになる。アメリカのベンチャーキャピタルの間では「Token Equity Convertible(TEC)」と呼ばれ、仮想通貨を扱うベンチャー企業への新たな投資手法として注目されている。

投資対象は「株式」から「トークン」へシフトする

神谷知愛CEO

シンクロライフの神谷知愛CEO。飲食店の集客支援を長く手がけてきた。「飲食店は美味しいものをつくるのが仕事で、マーケティングの専門家じゃない。私たちのサービスが、ユーザーと飲食店の幸せな出会いをより多く実現する後押しになれば」と語る。

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ベンチャー企業は昨今、トークンを発行して資金調達を行う「イニシャル・コイン・オファリング(ICO)」という選択肢を得ている。しかし、詐欺まがいのICOが増えて金融当局の規制が強化されたことに加え、ICOを実施するとその後株式による資金調達が難しくなるという状況も生まれている。

今回GINKANとセレスが導入したトークン転換権付株式のような手法を使えば、そうしたベンチャー企業にとっての問題を解決できる。投資する側にとっても、ベンチャー企業が株式上場できるかできないかに関わらず、サービスが軌道に乗った段階で株式をトークンに転換することで、流動性(現金化の可能性)を確保できるようになる。

GINKANの神谷知愛CEOは「上場企業として株主への説明責任を負うセレスが、今回のような世界的に見ても斬新な資本提携の形を提案してくれたことに深く感謝している」としつつ、「今後、投資対象は株式からトークンに全面的にシフトしていく

とはいえ、上場企業が未知数のトークンに投資する時代にいきなり移行するわけではない。現在は過渡期で、株式とトークンのバランスを取りながら次の時代への橋渡しをする必要がある。その文脈で、トークン転換権付株式による資金調達が今回実現したことは、大きな第一歩と考えている」と意味合いを説明した。

飲食店の好みが「シンクロ」するレコメンドシステム

シンクロライフビジネスモデル

シンクロライフのビジネスモデル。加盟店から広告費として売り上げの3%を受け取り、ユーザーは加盟店での飲食代金から最低1%の還元を受ける。還元率は店舗側が設定できるようにし、一種の集客ツールとして使ってもらえるようにするという。

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GINKANが運営するシンクロライフは、ユーザーが飲食店での体験をレビューとして投稿できるグルメSNS。人工知能(AI)を活用したレコメンドシステムを搭載し、ユーザーのレビューやアプリ活用状況などを独自のアルゴリズムで分析・機械学習させることで、使うほど自分好みの飲食店がオススメされるようになる。

食べログやぐるなびは、ジャンルやロケーションによる検索結果の中から、他のユーザーのレビューや撮影画像などを判断材料としてユーザーに飲食店を選ばせるサービス。それに対しシンクロライフは、「ユーザーと飲食店の好みが合致(シンクロ)する」他のユーザーのオススメが表示されるため、検索結果を吟味する手間をかけることなく、美味しい店に出会うことができる。

「食べものの好みなんて分からないのでは、と質問を受けることが多いが、確かに分からない。天気や時間、その日の体調など、食べたいものは刻一刻変化するので一概に把握できない。でも、飲食店の好みは一定の価値観を示してくれる。古くさい店舗だけど安くて美味しい店がいい人と、味は普通だけどラグジュアリー感のある店がいい人、そのニーズは重ならない。そういう飲食店に対する価値観がマッチするユーザーのデータを積み重ねていくことで、レコメンドはより正確になっていくんです」(神谷CEO)

シンクロライフでは、レビュアーを増やしてデータを積み重ね、より正確なレコメンドを実現するための促進剤として、トークンを受け取る仕組みを8月に導入した。良質なレビュー投稿者にとって、活動を続ける経済的インセンティブになる。

今後、トークンを飲食店の食事券と交換したり、飲食代金の決済に利用できる仕組みも追加する。

シンクロライフを通じて「国境とは無関係に、食べることが好きな人の経済圏を作りたい」(神谷CEO)との狙いから、現時点で日本語だけでなく英語、中国語、韓国語にも対応しており、今後もグローバルなプラットフォームの実現を目指すという。

(取材・文、川村力)

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