グーグルのAI、眼のスキャン画像から50タイプの疾病を特定

ムスタファ・スレイマン

ディープマインドの共同創業者、ムスタファ・スレイマン氏。

DeepMind

  • グーグル傘下のAI企業ディープマインドは「極めて重要な」研究を発表した。網膜のスキャン画像から約50の疾病を特定できるAIだ。
  • ディープマインドはAIは専門の臨床医と同じくらいの診断能力を持ち、失明の予防に役立つと述べた。
  • ディープマインドは医療データの取り扱いに関して批判を受けてきた。だが、同社の共同創業者ムスタファ・スレイマン氏はこの研究プロジェクトのすべての情報は匿名化されていると語った。
  • 研究が次の段階を迎えた際には、同社はイギリス国民保健サービスの病院にこのテクノロジーを5年間、無料で提供する計画。

グーグル傘下のAI企業ディープマインド(DeepMind)は、網膜の3Dスキャン画像から50タイプ以上の眼の疾患を検出できるAIを開発した。

同社は8月13日(現地時間)、ロンドンにある有名なムーアフィールズ眼科病院(Moorfields Eye Hospital)との共同研究の成果を医学雑誌「Nature Medicine」で発表した。

AIは、糖尿病性網膜症や加齢黄斑変性などの眼疾患を専門の臨床医と同じくらい正確に診断したと同社は述べた。患者に最良の治療法を提案したり、治療の緊急性を示唆することもできる。

技師

光干渉断層検査(OCT)スキャンを行う検査技師。

DeepMind

ディープマインドの共同創業者ムスタファ・スレイマン(Mustafa Suleyman)氏によると、この研究で特に重要な点は、AIが医師の信頼を大きく獲得できるレベルの「説明能力」を備えていること。

「医者はAIが考えていることを読み取ることができる」と同氏はBusiness Insiderに語った。

「医者は診断のベースとなったセグメンテーションを確認できる」

つまり、AIは結果を吐き出すだけのミステリアスなブラックボックスではないということ。

ある疾患の兆候が表れたスキャン画像の該当部分にラベルを付け、診断についての信頼性をパーセンテージで示すことができるとスレイマン氏。「これは本当に重要なこと」と同氏は語った。

AI

光干渉断層検査(OCT)スキャンを分析するディープマインドのAI。

DeepMind

スレイマン氏はこれらを「研究のブレークスルー」であり、次のステップは臨床の現場でAIが機能することを証明することと述べた。臨床現場での実証には数年かかる見通し。ディープマインドのAIはイギリス国民保健サービス(NHS)の病院に導入されれば、同社は5年間、無料でAIを提供することになっている。

大量のスキャン画像に埋もれる医者を救うか

イギリスの眼科専門医は、NHSの過剰な拡大やイギリスの高齢化の進展により、患者は失明のリスクに晒されていると何年も警告してきた

ディープマインドとムーアフィールズ眼科病院がこの研究プロジェクトに取り組んだ理由の1つは、医師が大量の眼のスキャン画像に「悲鳴をあげている」ためとスレイマン氏は語った。

「一方で患者は眼に疾患があるなら、できるだけ早く治療したい」と同氏。

「だが救急救命センターとは違い、まず看護師が患者に話しかけ、状態がどれほど深刻なのかを判断し、どれくらい早く診てもらうかを判断する。スキャン画像が自動的に提供されるようになれば、スキャンのためのトリアージ(治療の優先度を決めること)は必要なくなる」

スキャン

光干渉断層検査(OCT)スキャンを行う患者。

DeepMind

つまり、眼のスキャン画像の判定をAIで行うことができれば、プロセス全体をスピードアップできる。

「将来、人々は地元の目抜き通りにある眼鏡店に行き、そこで光干渉断層計(OCT)で眼をスキャンする。そして、AIは眼に疾患のある患者を極めて初期段階で発見できるようになるだろう」とムーアフィールズ眼科病院の眼科医長ピアース・キーン(Pearse Keane)氏は語った。

ディープマインドのAIは、約1万5000件の眼のスキャン画像を使って学習した。同社は医師と協力して、画像の疾患エリアにラベルを付け、ラベルが付けられた画像をAIに読み込ませた。

スレイマン氏は、2年半に及んだプロジェクトにはディープマインドからの「莫大な投資」と25人のスタッフ、そして同じくらいのムーアフィールズ眼科病院の研究者が参加したと語った。

グーグルが医療データにアクセスすることへの懸念も

グーグルは2014年、ディープマインドを5億900万ドル(約570億円)で買収した。同社はおそらく、世界のトップ棋士を破ったAI「AlphaGo(アルファ碁)」で最も良く知られているだろう。

ディープマインドはまだイギリスに拠点を置き、グーグルから独立しているが、その関係は関心を集めている。主な問題は、アメリカの一民間企業であるグーグルがディープマインドの医療部門が必要とするセンシティブな医療情報にアクセスできるのかどうかだ。

ディープマインドは2016年、イギリス国民保健サービス(NHS)とのプロジェクトにおける過去の医療データへのアクセスを開示しなかったことで批判を受けた

スレイマン氏は、ディープマインドによる眼の画像のスキャンは「完全に匿名化されている」と語った。

「誰の画像なのか、我々は特定できない。我々は完全に別の体制になっている。これはまだ研究段階にあるもので、臨床現場への導入に何年もの歳月を費やしている」と同氏。

さらに「この研究が、NHSをどれほど変える可能性を持っているかは極めて明確。我々はこの研究が公開され、他の人も利用できることを十分に意識してきた」と付け加えた。

「ラベルが付けられたデータは他の研究者も利用できる。つまりこれは、懸命に医学の発展に取り組んできた対等な者同士の、極めてオープンな協力関係。今回の成果を誇りに思う」

[原文:Google's DeepMind AI can accurately detect 50 types of eye disease just by looking at scans (GOOG)

(翻訳:Hughes、編集:増田隆幸)

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