ハッブル宇宙望遠鏡の10倍の分解能、巨大マゼラン望遠鏡の建設がチリで本格化

巨大マゼラン望遠鏡の完成予定図

巨大マゼラン望遠鏡の完成予定図。

GMTO Corporation

  • 巨大マゼラン望遠鏡(Giant Magellan Telescope:GMT)の建設がチリで本格化した。
  • GMTの主鏡の口径は、直径80フィート(約24メートル) ── ほぼバスケットボール・コート1面分の大きさ。
  • 分解能はNASAのハッブル宇宙望遠鏡の約10倍。
  • 建設費は10億ドル(約1100億円)。レーザーを使った補償光学システムにより、GMTは生命が存在する可能性を持つ太陽系外惑星の大気を“嗅ぎ取る”ことができる。

天文学では最先端技術は、しばしばブルドーザーや巨大な岩、ダンプとともに始まる。

巨大マゼラン望遠鏡(Giant Magellan Telescope:GMT)の建設が進められている。世界最大かつ最強の望遠鏡で、2024年に「ファーストライト(最初の観測)」の予定。

天文学者たちはGMTを使って、宇宙の成り立ちを研究したり、地球外生命のサインを探すつもりだ。

10億ドル(約1100憶円)の建設プロジェクトは8月14日(現地時間)、チリの山岳地帯で本格的な掘削作業に入った。最終的に重さ200万ポンド(約910トン)以上となるGMTを支えるために、岩盤に深さ23フィート(約7メートル)の穴を掘り、コンクリートで土台を固める。

「1000トンのスチール製の望遠鏡の基礎となる。望遠鏡の高さは22階建て相当、横幅は56メートル」とGMTの広報担当者はBusiness Insiderにメールで答えた。

巨大マゼラン望遠鏡の建設風景

巨大マゼラン望遠鏡は2018年8月に着工。

GMTO Corporation

GMTはチリ共和国にあるラスカンパナス天文台に建てられる。同天文台のあるアタカマ砂漠は、世界有数の乾燥地帯で高地にある。年間を通じて夜空がクリアに見え、観測に適している。

GMTの主鏡は、重さ20トン近い、幅27フィート(約8メートル)の鏡を7枚組み合わせた合成鏡。合成有効口径は約24メートル、バスケットボール・コート1面分ほどの大きさとなる。

GMTはレーザー光線を使った「補償光学」システムによって地球の大気の揺らぎを測定、画像のゆがみを補正することで、より鮮明な画像を捉えることができる。

「GMTの反射鏡はこれまで作られたどの望遠鏡よりも多くの光を集めることができ、最高の分解能を得ることができる」とGMTのウェブサイトには記載されている。

GMTの分解能は、NASAのハッブル宇宙望遠鏡の10倍以上になるとみられている。

巨大マゼラン望遠鏡で発見が期待されるもの

惑星

NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (SSC-Caltech)

巨大マゼラン望遠鏡は、宇宙最深部の銀河の研究に使われる。そして、我々は宇宙で唯一の生命なのかという問いに対しても重要な役割を果たす。少なくとも、地球外生命の存在の可能性を精査する。

GMTは、2009年に打ち上げられたNASAの探査機ケプラーの成果を引き継ぐことになる。ケプラーは数千もの惑星を発見、うち約50個は地球型惑星で、地球外生命が存在する可能性は高くなったと言える。

だがケプラーの探査範囲は深く、狭い範囲に限られた。NASAはその後、トランジット系外惑星探査衛星(Transiting Exoplanet Survey Satellite:TESS)を使って、太陽系から約200光年(宇宙では石を投げたくらいの距離)の範囲内の85%の夜空の観測を行った。TESSは太陽系外惑星の探索能力を備えているものの、詳しく調べる能力は備えていない。

NASAはこのほかに、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を計画している。太陽系外惑星からの光も観測でき、2021年に打ち上げられる予定。地球外生命や空気の存在を示すような地球型惑星を発見できるだろう。

だがJWSTでは、地球型惑星の詳細を観測することはできないだろう。一方GMTは、JWSTの約14倍の大きさとなり、高い能力を持つ。

巨大マゼラン望遠鏡(GMT)とJWST、現在計画中あるいは既存の望遠鏡の大きさ比較は以下のとおり。

巨大マゼラン望遠鏡と他の望遠鏡の大きさ比較

巨大マゼラン望遠鏡(GMT)と他の望遠鏡の大きさの比較。

Cmglee/Wikipedia (CC BY-SA 3.0)

GMTの優れた分解能は、地球外生命の雰囲気を“嗅ぎ取る”ことができるかもしれない。

「惑星が恒星の前を通過する際、GMTは惑星の大気中にある微粒子の特徴をスペクトルで調べることができる」とGMTプロジェクトのリーダー、パトリック・マッカーシー(Patrick McCarthy)氏は以前、Business Insiderに語った

スペクトルとは、星の光に含まれる色の分布のこと。光が惑星の大気を通過する際、化学物質を吸収し、一部を放出する。このとき、その存在につながる特有のパターンを残す。

例えば、地球型惑星と同じような酸素とメタンガスの混合物があれば、それは太陽系外惑星に生命が存在していることの「明確な特徴」となる。

マッカーシー氏はまた、GMTのような巨大で強力な望遠鏡なら、何兆マイルも離れた惑星の気象システムや地表の特徴を推定できるかもしれないと語った。

そしてロシアのビリオネア、ユーリ・ミルナー(Yuri Milner)氏のプロジェクトがうまく進めば、人類は今後数十年のうちに、生命の存在する可能性が最も高い惑星に小型で、高速の宇宙船を送り込めるかもしれない。

[原文:A $1 billion telescope that will take pictures 10 times sharper than Hubble's is now officially under construction

(翻訳:R. Yamaguchi、編集:増田隆幸)

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