プライマークは、アメリカで9店舗を展開している。
Business Insider/Mary Hanbury
- 全米小売業協会の雑誌『Stores』によると、ヨーロッパの低価格アパレルチェーン「プライマーク(Primark)」は今、アメリカで最も成長著しい小売業者だ。
- 『Stores』のランキングは、カンター・コンサルティングの売り上げデータを使って、アメリカ国内での売り上げの前年からの伸び率をもとに作成された。プライマークの2017年の売り上げは、全世界で98億7500万ドル(約1兆900億円)。このうち、東海岸沿いに事業を拡大しているアメリカでの売り上げは、前年から103%増加している。
- プライマークは2015年以降、アメリカで9店舗オープンしていて、今後さらに増やしていく計画だ。
プライマークはすでにヨーロッパを侵略した。そして今、狙いをアメリカに定めているようだ。
全米小売業協会の雑誌『Stores』がカンター・コンサルティングの売り上げデータを使ってまとめた、アメリカで今、最も成長著しい小売業者トップ100ランキングで、ヨーロッパの低価格アパレルチェーン、プライマーク(Primark)が1位に輝いた。
このランキングは、前の年からのアメリカ国内での売り上げの伸び率をもとに作成されている。プライマークの2017年の売り上げは、全世界で98億7500万ドル。このうち、アメリカでの売り上げは前年から103%増加している。
プライマークはアメリカで、ゆっくりだが着実に事業を拡大させている。同社は2015年以降、アメリカで9店舗オープンしていて、今後さらに増やしていく計画だ。
アメリカで価格重視の店が爆発的に増加している今、このチャンスを生かすちょうど良いタイミングでの拡大だ。百貨店が苦しむ一方で、ディスカウントショップや1ドル・ショップは最近、ある種のブームを迎えていて、ビジネスの成長や、国内で店舗を増やす好機となっている。
専門家は、こうした価格重視の小売店の成功の一因として、より大きな社会的変化を挙げる。
「"中間"が消え始めている —— 低・中所得層がディスカウントショップや1ドル・ショップで買い物をすることが増え、かつてこうした客層を対象としていた小売業者は店を畳まざるを得なくなっている」
調査会社ガートナー L2(Gartner L2)のアナリストは、百貨店に関する最新の報告書で指摘した。
プライマークについて、詳しく見ていこう。
プライマークは、アイルランドの首都ダブリンで「ペニーズ(Penneys)」という全く違う名前で創業した。1号店は1969年にオープンした。
Yelp/Gillian C.
1973年にイギリスに進出した際、同社は名前の変更を余儀なくされた。アメリカの百貨店「JCペニー(JCPenney)」がすでに登録されていたからだ。
その際、プライマークという名前が生まれ、それ以来、アイルランド国外の全ての店舗にその名が使われている。
2006年から2013年にかけて、プライマークは急速に成長し、スペイン、オランダ、ポルトガル、ドイツ、ベルギー、オーストリア、フランスと、ヨーロッパ各地で出店した。売り上げは、2009年から2014年にかけて150%増加した。
ドイツのドルトムントにあるプライマーク。
Wikicommons/1971markus
アメリカ1号店は2015年、マサチューセッツ州ボストンにオープンした。
AP Photo/Steven Senne
アナリストたちは当時、プライマークが競合より安く、絶えず新しいスタイルを打ち出していくことで、ギャップやアバクロンビーといったアメリカのアパレル企業を脅かす存在になると予想していた。
モルガン・スタンレーが2016年に実施した調査では、プライマークの平均価格は、アメリカのアパレルの平均価格よりも202%安いことが分かった。
プライマークは、アメリカで拡大を続けていて、東海岸沿いに出店している。2018年7月には、ブルックリンのキングス・プラザ・モールに9号店をオープンしたばかりだ。
ニューヨークのキングス・プラザにあるプライマーク。
Business Insider/Mary Hanbury
同社は現在、12カ国で353店舗を展開している。
新しくオープンしたブルックリンの店舗の様子はこちら。
無駄のない物流システムと限定的な広告によって、プライマークは低価格を維持できている。また、サプライヤーから大量に仕入れることで、価格交渉を有利に進めている。
Business Insider/Mary Hanbury
プライマークは以前、経費を徹底的に削るサプライチェーン戦術や、製品が作られる環境について、批判されたことがある。
2013年、同社はビルの倒壊によって約1100人の労働者が命を落とした、複数の縫製工場が入居するバングラデシュの「ラナ・プラザ」で服を作っていた企業の1つとして取り上げられた。同社は犠牲者の家族に総額1400万ドル(約15億5000万円)を支払い、工場での安全を推進する合意書に署名した。
出典:Primark
服やアクセサリーのマージンは低く、大量販売によって利益を確保している。
Business Insider/Mary Hanbury
価格が安いため、プライマークの顧客は一度に大量購入する傾向がある。この購買習慣を踏まえ、プライマークでは全ての店舗の入り口に買い物カゴを備え、客は新商品でいっぱいにすることができる。
「消費者はプライマークで、多くの小売店とは違った買い物の仕方をする」
投資調査会社バーンスタインのアナリスト、ジェイミー・メリマン(Jamie Merriman)氏は2015年、エコノミスト誌に語っている。「量を重視するコストコで買い物をするのに近い」
バーンスタインの2015年のデータによると、H&Mはイギリスで、年に1平方メートルあたり平均5250ドル相当の服を販売している。その一方で、プライマークの1平方メートルあたりの販売額は、約8200ドル相当だ。
プライマークはまた、オンラインショップをやらないという選択をすることでコストを抑えている。オンラインで製品を見ることは可能だが、その場で購入はできない。
Primark
プライマークの幹部は、商品の配送や返品のコストは高く、現時点でオンライン販売に経済的な合理性はないと話している。低価格を維持するためには、これらの費用を負担していられないのだろう。
「もちろん、我々も自分たちにあったモデルを見つけることができれば、柔軟に検討するつもりだ」
プライマークの親会社、アソシエイテッド・ブリティッシュ・フーズの財務担当、ジョン・バソン(John Bason)氏はウォール・ストリート・ジャーナルに語っている。
カンター・コンサルティングのデータによると、プライマークは今、アメリカで最も成長著しい小売業者だ。2019年にはフロリダ州に新店舗をオープンする。
Sean Gallup / Getty Images
(翻訳:Yuta Machida、編集:山口佳美)