一風堂接待でエンジニア「囲い込み」メルカリ、LINEも進出の福岡市

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福岡市とビズリーチが開いた、エンジニアを“接待する”ミートアップ。ラーメンと日本酒でエンジニアを囲い込み。

スタートアップの集積地、福岡市で、エンジニアの人材不足が深刻だ。

毎年50〜60社の企業が進出し、LINEやメルカリも福岡に拠点を構えた。

「人をごっそり採用した緑の会社があり、特に人材が枯渇している」「採用希望数の3分の1、4分の1しか、そろわない」(福岡市のスタートアップ社長)

深刻化する人材不足に対し、福岡市とビズリーチは、都内のエンジニアを呼び込もうと、福岡発祥のラーメンチェーン「一風堂」で、エンジニアを“接待”した。

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ミートアップは、20人のエンジニアが参加した。福岡に支社を検討する企業の取締役や福岡市出身者の参加者もいた。

シリコンバレーか福岡か

2013年に福岡市に拠点をオープンしたLINE Fukuoka。外国籍のスタッフがエンジニアの半数を占め、中にはシリコンバレーの競合他社とLINE Fukuokaを比較し、入社を決めるようなスタッフもいる。社員は1000人規模で、(福岡出身者や移住希望者の)UIターンは35%、さらに今後、LINEグループ全体でエンジニアを3000人募集する予定だ。

「UIターンの人が多いので、安心してください」「キャッシュレスFukuoka(電子決済の実証実験)を進めていて、大きなプロジェクトに関われます」

2018年8月21日夜、LINE Fukuoka取締役の鈴木優輔さんは、都内の一風堂で開かれたミートアップに集まったエンジニア20人に語りかけた。

LINE Fukuokaと一緒に登壇した、スカイディスクの橋本司CEOは、「福岡に拠点を作り、人をごっそり採用した緑の会社(LINE)があり、特に人材が枯渇している」とアピール。

同社は2013年設立、IoTのデバイス開発やAIの解析サービスをしており、現在の43人体制から、人員を3倍に増やす予定だ。しかし、特にエンジニアは「採用希望数に対し、3分の1か4分の1くらいしか、そろわない」と橋本さん。求めるスキルに見合う人材獲得に苦戦している。

スタートアップ大手進出で人材不足に拍車

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「スタートアップ都市宣言」から5年がたった、2017年には、九州大学に「起業部」が設立。起業部の第1号で起業した、メドメインの飯塚統代表(左から1人目)。同社は、医学生向けのクラウドサービスをローンチ、1億円の資金調達をしている。起業部は150人が所属、高校生の視察もある。

福岡市は、2012年に「スタートアップ都市宣言」を表明。それ以来、市内に進出する企業への助成金や、起業のノウハウを共有・相談できる支援施設を整備してきた。

関連記事:英語話せないグローバル課長が福岡市をスタートアップ都市にした

企業誘致の実績としては、2013年度から毎年、50〜60社が市内に進出、それに伴い、1000〜3000人の雇用が生まれている。

特に、2013年にLINE Fukuokaがオープン、2017年はメルカリとさくらインターネット、ピクシブ、アカツキの4社が一斉に福岡市の拠点を発表した。

首都圏の大手スタートアップのほか、市内のスタートアップも注目企業に成長。インテリアのネット通販、ベガコーポレーションや、自治体の財源を確保するサービス、ホープなど、株式上場(IPO)をしたスタートアップも出てきた

こうして企業の誘致や起業が進む一方、人材不足の問題が深刻化してきた。

厚生労働省によると、特にエンジニア職(情報処理・通信技術者)は、全国的に有効求人倍率が2.4倍(2018年6月時点)と高く、IT系のスタートアップの多い福岡市にとっても、大きな課題だ。「福岡の中だけで人材を獲得していくのは、そうそう簡単ではない。全国からUターン、Iターンを呼べないか。企業誘致をするなら、人も集積しないと盛り上がらない」(市企業誘致課の山下龍二郎係長)。

市は2018年度からビズリーチとタッグを組み、福岡市限定の求人を見られるアプリをリリース。このほか今秋には、リモートワークをしながら、福岡市のシェアハウスで3週間、移住体験をするプログラムも企画している。エンジニアやクリエイターを対象に、福岡市の暮らしを試してもらい、その体験を発信してもらう。

「移住と転職となると、ハードルが高い」と山下さん。海辺のシェアオフィスでリモートワークを体験し、「福岡もええかな、と思ってほしい」。

エンジニアを育成するコミュニティ

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福岡への転職、移住を具体的に描いた時に、不安なことは。

8月21日夜に一風堂に集まったエンジニアたち。

「今日参加して、めっちゃ帰りたくなりました」(福岡市出身のエンジニアの女性)

転職や移住に積極的な感想が聞こえる一方、不安要素を挙げる参加者もいた。

東京の方がエンジニアがまだ多く、コミュニティが多く感じる」(AIエンジニアの会社員男性)、「エンジニアは横のつながりがないと厳しい。福岡市もミートアップがあるといっても、(頻度は)東京の10倍くらいは違うと思う。エンジニアは、知人のツテで転職をすることも多く、コミュニティは広い方がいい」(情報工学を学ぶ大学3年生の男性)。

具体的に地方への移住を考えた時、ハードルの1つに、仲間と集えるコミュニティが浮かんだ。

「会社と家庭と違う、もう1つの拠点が重要になる。(移住者は)顔を出せる、学べるところに期待している」(山下さん)

福岡市ではこうした背景から8月20日、コミュニティ「エンジニア フレンドリーシティ福岡」を始動。子育て勉強会や秘密会議(起業家や投資家、コンサルが集う)など、同市内のさまざまなコミュニティがあるという。それらを見える化したり、勉強会を開いたりしていく。

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一風堂でのイベント前夜、福岡市内では、「エンジニア フレンドリーシティ福岡」のキックオブイベントがあった。

出典:福岡市

ただ、頻度は未定だ。企業が集積してきた福岡市は、今は「過渡期」(山下さん)。「企業誘致の相談をもらう際は、必ず人材のことを言われる。福岡市はポテンシャルはある」(同)。

福岡市が次の成長フェーズに入れるか。それは、全国各地で奪い合うエンジニア人材を確保できるかどうかに、かかっている。

編集部より:LINEグループのエンジニア採用について、詳細を加えました。 2018年9月5日 00:40

(文・撮影、木許はるみ)

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