温暖化のおかげ? コンテナ海運世界最大手、北極海航路をトライアル中

  • デンマークの海運大手APモラー・マースクが保有する「ベンタ・マースク」は、北極海航路を航行する初のコンテナ船となりそうだ。
  • 同社は経済的な実行可能性を検証するのに必要なデータを収集するため、北極海航路のトライアルを実施している。
  • 氷で覆われたこの航路は夏の間、通行量が増加し、すでに天然ガスの輸送タンカーや石油タンカーが定期的に航行している。
  • 北極海の海氷量は2018年1月、史上最低水準を記録した。3月にはベーリング海峡で平均気温が例年を上回り、「異常事態」が宣言された。

ロシア北岸に沿って進む北極海航路を航行する初のコンテナ船が先週、ウラジオストクの港を出航した。地球温暖化によって、北極海航路の航行は以前よりも容易になっている。

北極海航路を試験航行するこの「ベンタ・マースク」は、3600個のコンテナを積んでロシア東部を出発、9月末までにサンクトペテルブルクに到着する予定だ。BBCインディペンデントが伝えた。

同船は、北極海航路の経済的な実行可能性を検証する取り組みの一環として、データを集める予定だ。北極海航路を取ることで、より定着しているインド洋やスエズ運河を経由する南の航路を取るよりも、14日早く目的地に到着できるという。

重さ4万2000トンのベンタ・マースクは、冷凍魚やその他の貨物を運ぶ、「アイスクラス」と呼ばれる階級に属する新しい船舶だ。より冷たい海域を航行するようデザインされていて、強度の高い船体と保護された舵を備えている。

「トライアルは、北極海航路がコンテナ船の航行に利用可能かどうか検討し、データを集めるためだ」と、マースクは説明している。その上で、「コンテナ船のための未知のルートを探り、科学的データを収集するための1度限りのトライアルだ」と強調した。

北極海航路は氷で覆われているため、かつては航行不能だった。だが、気温が上昇し、船舶技術も向上したことで、より現実的になってきた。

2018年1月には北極海の海氷量が史上最低水準を記録、3月には「異常事態」が宣言された。ベーリング海峡でも、海氷量は過去最低を記録し、気温も例年の平均を30度上回った。

アメリカのコロラド州にある国立雪氷データセンターの統計によると、今冬の北極の海氷面積は5年前の3分の1以下だった。

小型の天然ガスや石油のタンカーはすでに定期的に北極海を通るようになっていて、今夏、通行量が増加している。

グリーンピース・ノルディックのスーネ・シェラー(Sune Scheller)氏はインディペンデントに対し、北極海航路の利用を検討する企業が増えているとした上で、こうした変化が「環境にさまざまな形で悪影響を及ぼす」のではないかとの懸念を示した。

「これらの船舶が事故を起こし重油が流出すれば、海洋環境に悪影響を及ぼす。むしろその影響は、北極海でさらに深刻なものとなるだろう。水温が低いと、油の分解スピードが低下したり、停止するからだ。つまり、海洋環境により長い時間、取り残されることになる」

だが、マースクは今回の北極海航路の航行をただのテストだと強調する。

「現時点で、北極海航路が商業的に我々の既存ネットワークの代替になるとは考えていない。それは我々の顧客の需要、貿易パターン、人口分布などによって決まることだ」

マースクは声明文で述べた。

[原文:The world's largest shipping company is trialing an Arctic route — and it's a worrying sign for the future of the planet]

(翻訳:R. Yamaguchi、編集:山口佳美)

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