非の打ち所がないGoogle決算、倍増させた設備投資は一体、なんのため?

今日の記事では、Googleの決算を見てみたいと思います。

Alphabet Announces Second Quarter 2018 Results

始めに売上高、営業利益を見ていきましょう。

売上高はYoY+26%と絶好調

2018年の4月から6月の四半期の売上と前年同期比を示す表

売上高は、2018年の4月から6月の四半期で$32.7B(約3兆2,700億円)と、非常に大きな伸びを見せています。前年同期比に直すと+26%という、圧倒的な成長スピードを誇っています。

営業利益が$2.8B(約2,800億円)で営業利益率は9%と、落ち込んでいるようにも見えますが、実はこれにはちょっとした背景があります。

EUから罰金請求が$5.07B(約5,070億円)、営業利益へ一時的なダメージ

2017年・2018年のGoogleの営業利益を示す表

この表の左側にあるのが、今回発表された実際の営業利益ですが、2017年、2018年のそれぞれにおいてEU (ヨーロッパ連合)からの罰金が科されています。

これらの罰金に関しては、Googleは未だに争う構えを見せていますが、決算上は罰金が課されたという前提のもとに、コンサバティブに費用計上してあります。

実際にそれらの罰金がなかったと仮定すると、表の右側のような数字になり、2017年の第2四半期は営業利益率が26%、2018年の第2四半期は24%という具合に、いつものGoogleの高い利益率が実現できていることが、ご覧頂けるかと思います。

ではこのEU、正確にはEuropean Commission (EC) からの罰金というのは、どういった内容かというのを少しおさらいしておきましょう。

初めに、2017年時点での$2.7B(約2,700億円)の罰金というのは、ヨーロッパにおいて、Googleの検索結果画面にGoogleショッピングの商品を優先的に表示した、という事実に対して、独占禁止法に反するという理由で罰金が科されています。

EU slams Google with $2.7 billion fine for abusing antitrust law

今回2018年の罰金は約$5B(約5,000億円)だったわけですが、今度はAndroidというオペレーティングシステムに対して、自社のブラウザーであるChromeや、メールクライアントであるGmailを強制的にインストールさせているという点で、同じく独占禁止法に反するという内容になっています。

EU commissioner on $5 billion antitrust fine: Google has to 'stop this behavior'

ECで、これらの一例の独占禁止法関連の罰金を主導していると言われているのが、Margrethe Vestagerさんです。

ECで独占禁止法関連の罰金を主導していると言われているMargrethe Vestagerさん

彼女のコメントを見ると、

"This is not about Apple, this is not about Android, this is about Google behavior — a behavior that's illegal for a dominant company because it's locking down competition and disabling innovation and choice that we would all like to enjoy," Vestager said.

とあります。特定の製品や会社ではなく、Googleの市場競争を排除するような姿勢そのものが問題だ、という具合に、かなり厳しい口調でインタビューに答えているのが印象的でした。

それを受けて、GoogleのCEOは以下のような形で、自社製品をバンドルできないのであればAndroidのOS そのものを有料化する必要があり、それによって一番の損益を被るのは消費者である」という旨の発言をして、徹底的に戦う構えを見せています。

EUの罰金処置に対し、Google「そんなこと言うなら、有料化しないといけなくなるよ」

Because the fine is not tax-deductible, the charge will reduce Alphabet’s net income and earnings per share by the full amount.

ちなみに余談ですが、これらの罰金というのは税務上は費用計上できないため、純利益に大きくインパクトを与えるものだという指摘もされています。

【余談】「独占禁止」の考え方

少し余談になりますが、独占禁止法の考え方に関して、誤解をしている方が多いので、簡単に書いておきたいと思います(ちなみに私は法律の専門家ではありませんので、細かい点は専門家の方にご確認ください)。

よくある誤解というのは、ある会社が特定のマーケットで独占することそのものが害である、という誤解です。

例えば、Googleが検索エンジン市場でかなり独占に近い地位を占めていたり、スマートフォンのオペレーティングシステム市場でも同じように独占に近い地位を占めている、ということ自体が問題なわけではありません。

少なくても、それらの独占的な地位を築くにあたって、市場でフェアな競争を行った上で勝ったのであれば、それ自体が問題にされることは無いわけです。

今回問題になっているのは、ある分野で築いた独占的な地位を利用して、「周辺分野で競争を排除しようとする」行為の方です。

2017年の例で言えば、検索エンジンで独占的な地位にあるGoogleが、ショッピング、eコマースで自社に特別に有利な操作をしたことが問題にされていますし、2018年の例で言えば、スマホのOS市場で独占的な地位にあるAndroidを利用して、ブラウザのChromeやメールソフトのGmailを、強制的にユーザーに利用するように仕向けたことが問題視されているわけです。

古くから、マイクロソフトのWindowsとInternet Explorerのような思案もありましたし、Googleもこういった点には十分気をつけていた筈ですが、もうこれだけマーケットシェアが大きくなると、避けられない問題なのかもしれません。

Googleの設備投資額が前年比約2倍の$5.5Bへ

余談はこのぐらいにして、話を本題に戻します。Googleの収益力やその成長率は非の打ち所がない、という話を冒頭で書きましたが、今回の決算で明らかになった一番の驚きとしては、Googleの設備投資額が大きく増えているという点です。

2017年・2018年の4月から6月の四半期の決算表

この表の中の「Purchases of property and equipment」という項目を見ていただければ分かる通り、2017年の第2四半期は$2.8B(約2,800億円)だった設備投資額が、2018年の第2四半期においては$5.5B(約5,500億円)まで、約2倍に増えています。

Google parent Alphabet spent a whopping $5.5 billion on capital expenditures in the most recent quarter, nearly doubling that output from a year ago as the company continues to expand its cloud business.

この記事に記載されている通り、主な設備投資の増加分は、Google Cloudのインフラ投資に当てられています。

Alphabet spent ~$5.5B on capital expenditures in Q2, up from ~$2.8B a year ago, as the company continues to expand its cloud business

Google Cloudのネットワーク拡張の様子を示す地図

この地図をご覧いただければ分かる通り、Google Cloudは非常に速いペースでデータセンターを拡張しており、Amazon AWSやMicrosoft Azureとの競争に追いつきつつあるとも言えるのではないでしょうか。

【参考】Amazonの設備投資額は四半期あたり$3.2B

参考までに、クラウド事業の世界最大プレイヤーであるAmazon AWSとの投資額の比較をしておきたいと 思います。

AMAZON.COM ANNOUNCES SECOND QUARTER SALES UP 39% TO $52.9 BILLION

2018年4月から6月の四半期におけるAmazon AWSの投資額を示す表

Amazonの、2018年4月から6月の四半期における設備投資額は、$3.2B(約3,200億円)でした。

ちなみにこれらは、AWSだけではなく、eコマースにおける倉庫や物流センターなどの投資や、社内で利用されるソフトへの投資も含んでいます。

Amazonでさえも、四半期当たり$3.2B(約3,200億円)である投資に対して、Googleは$5.5B(約5,500億円)も投資しているわけですから、いかにGoogleのインフラ投資が急速に増えているか、というのがご理解いただけるかと思います。

Google Cloudの収益力

ちなみにGoogle Cloudの売上は急成長しており、2018年時点で、四半期当たりの売上がGoogle Cloud とG Suiteを合計して、$1B(約1,000億円)を超えたというアナウンスがなされています。

Google says it is recording $1B per quarter in cloud revenue, including G Suite

Amazon AWSの例を見れば分かる通り、クラウド事業は、実は粗利益率や利益率が高いビジネスであり、四半期当たり$1B(約1,000億円)ということは、年間$4B(約4,000億円)程度の売上が既に上がっているわけであり、そう考えると$5.5B(約5,500億円)の投資というのも、そこまで無茶な額ではないのかもしれません。

とはいえ、規模感の参考値として掲載すると、Yahoo! JAPANの年間の利益が約1,856億円という規模なので 、Googleは四半期あたり、Yahoo! JAPANの年間営業利益の3倍程度の額を、設備投資に回している計算になります。

これらの圧倒的なグローバルスケール感を見せつけられて、ワクワクもドキドキもしますが、今後クラウド市場がAmazon、Microsoft、Googleという三者の間でどのように決着していくのか、楽しみにしていきたいと思います。


シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーで SearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中。

決算が読めるようになるノートより転載(2018年8月28日の記事

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