ソニーモバイルの2018年後期のフラグシップ「Xperia XZ3」は有機ELの画面が左右の縁まで広がり、いままでの同シリーズとは思えないデザインだ。
- 新発表のXperia XZ3は、シリーズで初めて有機ELディスプレーを採用
- 狭額縁を活かしたショートカット機能やカメラの起動動作もブラッシュアップ
- ただし、流行のデュアルレンズカメラやお買い得なミドルレンジ機はなし
ソニーモバイルコミュニケーションズ(以下、ソニーモバイル)は、ドイツ・ベルリンで8月30日(現地時間)に、2018年後期のフラグシップスマートフォン「Xperia XZ3」を発表した。
40万円のテレビにも遜色ないディスプレー画質
Xperia XZ3のカラーバリエーションは、ブラック、ホワイトシルバー、フォレストグリーン、ボルドーレッドの4色。
出典:ソニーモバイル
Xperia XZ3の最大の特徴は、シリーズ初の有機ELディスプレーを採用しているところだ。画面サイズは約6インチ。解像度は縦長のQHD+(1440×2880ドット)で、ネットフリックスなどのHDRコンテンツの再生にも対応している。
グループ会社にテレビ事業を持つ同社らしく、ディスプレーの画質にはかなりの“こだわり”が詰め込まれている。
同社は今回の発表で初めて、Xperiaと有機ELテレビの画質を横並びで比較。担当者は「約40万円ほどのBRAVIA A1シリーズの画質と遜色ないものを目指している」と話している。
実物を見てみると確かに黒はより黒く、明るいところは白飛びしないぐらい明るく表示され、前述したようなHDR対応のコンテンツを再生してみると、あっと息を呑むほどだった。
ユーザーの利用シーンに根付いたスマート機能
新搭載の「サイドセンス」は、ディスプレー縁をダブルタップすると表示される。
また、機能面においても大幅なブラッシュアップが見られる。
XZ3は画面の大型化に伴い、片手で画面の上下へタッチするのが難しくなった。その打開策として、同社は「サイドセンス」と呼ばれるユーザーインターフェイスを開発した。
サイドセンスは、画面の縁を2回タップすることで表示される小さなショートカット画面のことで、よく使うアプリのリストとWi-FiやBleutoothなどのオンオフといった簡易設定アイコンが並ぶ。
よく使うアプリの表示には、同社独自の予測エンジンを活用している。XZ3はユーザーの最大7日間の使用履歴を分析し、「曜日や時間帯」「アプリ同士の関連性」「アプリの起動する推定場所」によって最適なアプリをレコメンドする。
新しいカメラ起動機能は、意図しない起動を防ぐため、起動後に表示される丸いエリアをタップしないと完全には起動しない仕組みになっている。
さらに、カメラ機能の起動にも工夫が見られる。従来でも右側面のカメラキーを長押しすることで素早くカメラを起動できたが、XZ3ではポケットからスマホを横向きに構える動作を検知すると自動でカメラが起動するようになっている。
端末の完成度は高いが、依然として逆風は強い
Xperia XZ3の背面。カメラ機能はXperia XZ2相当でシングルレンズ仕様。
Xperia XZ3の端末としての完成度は非常に高いものではあるが、この端末単体のリリースによって同社の先行きが明るくなるかと言われると、やや疑問が残る。
ソニーの2018年度第1四半期連結業績によると、同社のモバイル・コミュニケーション分野の売り上げ、営業利益ともに下落傾向にある。同社はこの原因を「欧州・日本を中心としたスマートフォンの販売台数の減少」と明らかにしている。
ソニーのスマートフォンやISPとしての業績を示す「モバイル・コミュニケーション分野」は右肩下がりの現状。
出典:ソニー
現在のスマートフォン市場を見てみると、競合他社の多くのハイエンド端末はデュアルレンズの背面カメラを採用。さらに日本では、3万円台程度のお買い得なミドルレンジ機が人気を博している。
Xperia XZ3は、カメラ性能自体はよいもののシングルレンズで、しかもハイエンド機であるため登場当初は価格が下がりにくい。
また、日本においては4K液晶&デュアルレンズカメラを採用した「Xperia XZ2 Premium」のドコモ版が7月27日、au版が8月10日に発売されたばかりで、製品のライフサイクルの短さに戸惑うユーザーや販売店スタッフも多いだろう。
これらを踏まえると、XZ3単体で同社の業績が改善するとは考えにくく、販売促進材料として魅力的なプロモーション活動ができるかが鍵になってくる。
なお、同社広報によるとXZ3の日本導入について「予定あり」と答えている。例年通りであれば、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの2018年秋冬モデルとして展開される見通しだ。
(文、撮影・小林優多郎)