9カ月でフォロワー432万人。中国インフルエンサーの「売れるためのキャラ設定」

ダンスパフォーマンス

中国にはフォロワー数100万以上のインフルエンサーが約2万人いるという。

SNSマーケティングのアライドアーキテクツと中国のSNS微博(Weibo)の公式マーケティング会社、IMS新媒体商業集団は8月29日、日中の人気インフルエンサーが登壇するイベント「Internet Celebrity Summit 2 ~インフルエンサー新時代への挑戦~」を都内で開催。

中国で数百万フォロワーを持つ人気インフルエンサーやマネジメント会社の幹部が、注目を集める方法や企業とのタイアップ戦略について語った。

「女性フォロワー意識し、女性らしさは封印」

イベントに登壇した張凱毅さんは、メイクアップ動画などを発信し、微博で432万フォロワー、動画共有サイトのTikTokでは710万フォロワーを持つ超人気インフルエンサー。だが、セルフメディアを始めたのは2017年11月28日で、ほんの9カ月前のことだ。張さんは数百万のフォロワーを獲得した「3つのきっかけ」を紹介した。

中国・東北部の瀋陽の音大を卒業後、歌手を目指して北京に出てきた張さんは、生活が苦しく、得意なメイクで何かできないかという軽い気持ちから、昨年11月末に微博で美容ブログを始めた。

張さん

2017年11月にセルフメディアを始め、微博で432万フォロワーを獲得した張凱毅さん

「私は以前からある有名タレントに似ていると言われており、メイクでそのタレントそっくりに“変身”した自分の写真を投稿したら、フォロワーが瞬く間に100万人を超えた」

次に、ECサイトに出店した友人と協力して、動画コンテンツを制作。それが人気を集め、フォロワーが200万人になったという。

フォロワーが伸びるにつれて、知らない人からの批判も増えた。ある朝、張さんは微博に批判のコメントが大量に投稿されていることに気付いた。腹を立てた張さんは、怒りまくる自分の動画を投稿。これが思いがけず受けて、フォロワーが300万人に増えた。

今はコスメ、メイクのインフルエンサーとして広く認知され、自分がセレクトした化粧品の店を、アリババのECサイト淘宝(タオバオ)に開設。毎月、約2000万元(約3億3000万円)を売り上げている。

張さんは、「インフルエンサーになるつもりで始めたわけでなく、わけの分からないまま、フォロワーが増えていった」と振り返る一方、その理由を、「思ったことをはっきり言う、男っぽい性格が差別化につながったのかもしれない。インフルエンサーを目指すにあたって、キャラクターの設定はとても大事」と分析した。

人気をビジネスにつなげるために、フォロワーの質問にきちんと答えたり、「美容」「音楽」という軸を持つことも必要だと語った。

コスメやファッションの情報を発信し、微博で476万フォロワーを抱える滕雨佳さんは、日本のファッション誌をよく読むという。愛らしく女性らしいモデルが好きだが、「自分自身は中国のSNSでは“女子力”を強調しないようにしている」と話した。

「私はインフルエンサー活動を始めて、かなり男性っぽくなった。フォロワーはほとんどが若い女性で、さばさばしたキャラが好まれる気がする」と語った。

中国狙ったオリジナルコンテンツが必要

山下さん

日本人おたくクリエイターとして知られる山下さんは、2014年から中国で動画コンテンツを配信している。

2014年から中国の動画共有サイトのBiliBiliにコンテンツを投稿し、微博で132万フォロワーを持つ日本人インフルエンサーの山下智博さんは、「中国で動画サイトが成長するタイミングで動画投稿を始めたことで、波に乗れた」と振り返る。

日本のアニメやドラマは中国人の若者に人気が高いが、「中国のいいコンテンツが少なかったので、みな日本のニコニコ動画やアニメを見ていたが、中国でも良質のコンテンツが作られるようになり、日本の人気作品が中国でも同じように当たるということは難しくなる」と指摘。中国人の好みを理解した上で、中国人をターゲットにしたコンテンツを作るべきだと話した。

有望分野は、観光やグルメ、化粧、カルチャーだという。

「中国人が知りたいことをオリジナルコンテンツにし、中国のプラットフォームで出していくことが必要になる」と語った。

広告とフォロワーの間で板挟み

トークセッション

日本のYouTuberからは中国人インフルエンサーに対し、ECショップ運営への質問が多く出た。

日本人と中国人のインフルエンサーがそれぞれ質問しあうコーナーでは、両国のビジネスモデルの違いが鮮明となった。

日本の場合は、「フォロワーが若くて購買力がそんなにない」(インフルエンサープロダクションVAZの森泰輝代表)こともあり、企業とのタイアップがインフルエンサーの主要な収入源になる。

一方、中国の場合はフォロワーを獲得したら、企業とスポンサー契約を結びつつ、ECサイトに出店し、商品の売り上げから利益を得るのが主流だ。

ただ、「プライベート情報の発信」と「宣伝」のバランスで試行錯誤を続けているのは両国に共通している。中国人インフルエンサーの1人は、「2015年から2016年は化粧の仕方や自分の生活を発信していたが、フォロワーの増加とともにタイアップが増え、今は広告の比率が増えている。けど、宣伝が多くなるとフォロワーは離れる」と矛盾する気持ちを明かした。

「ECをやる場合は、自分が勧めた商品の品質などもよく考えないといけない」と話す中国人インフルエンサーもおり、「宣伝が多いとフォロワーが逃げるが、生存するためには広告が必要」との本音も聞かれた。

インフルエンサーのランキング調査を行っているTopKlout社によると、中国では100万以上のフォロワーを持つインフルエンサーが2万人おり、1年で23%増加した。インフルエンサーを発掘・育成するプロダクションも数多くあり、すでに産業化している。中国のインフルエンサープロダクション幹部は、インフルエンサーに求める資質として、真っ先に「マネジメント能力」を挙げた。

「毎日コンテンツを更新し、フォロワーとよい関係を築かないといけない。規範ある行動も必要で、インフルエンサーには経営者的なマネジメント能力を求めている」(楼氏集団ファウンダーの袁啄氏)

歌手や俳優、アメリカのYouTuberに比べると社会的立場が低く見られ、インフルエンサーという職業の地位の向上も課題という。

メイクアップアーティストとインフルエンサーの仕事を両立する中国人男性は、「インフルエンサーとは、多くの人が知りたくて、専門性が必要な分野を、誰にでも分かるように翻訳する存在。今後、医者やエンジニアなど、インフルエンサーは多様化、細分化していく」と話した。

(文・浦上早苗、写真・アライドアーキテクツ提供)

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