レノボは液晶+電子ペーパー搭載Windows PCなどを発表した。
出典:レノボ
PCメーカー大手のレノボは、ドイツ・ベルリンで8月30日(現地時間)、新製品発表会「Lenovo Tech Life」を開催。ノートPCやスマートホーム関連などの新製品を発表した。
今回発表された製品はYoga、ThinkPad、Chromebookと多岐にわたるが、中でもYogaブランドの2製品の存在感が大きい。
Yogaブランドは今まで、ヒンジ部が360度回転してタブレットとしてもノートPCとしても使えるコンバーチブル型のPCを示していたが、今回から薄くて軽いプレミアムPCを示すブランドに統一された。
Yogaの中で“C”から始まる品名は従来のコンバーチブル型、“S”はスレート型(ここではコンバーチブル型以外の物)を指す。
液晶+電子ペーパーで3つの役割を1つのデバイスに集約
上が液晶、下が電子ペーパーの「Yoga Book C930」。ヨーロッパ、中東、アフリカなどで9月末から999ユーロ(約13万円)で販売予定。
多数の新製品の中、最も異彩を放っているのと言えるのが「Yoga Book C930」と「Yoga C630 WOS」だ。
Yoga Book C930は、2016年9月に発表された「Yoga Book」の後継機にあたる端末。10.8インチのQHD(2560×1600ドット)解像度液晶に加え、同じく10.8インチのフルHD(1920×1080ドット)解像度のEインク(電子ペーパー)ディスプレーを一緒に搭載しているのが最大の特徴だ。なお、液晶とEインクの両方を搭載するノートPCは世界初。
このEインクディスプレーは、文字を入力したい際はキーボード、付属のデジタイザーペンを使って絵を描きたい時はペンタブレット、PDFの文章を読みたい時は電子書籍リーダーとしての役割を果たす。
キーボード表示時は、キーを押すと画面が震え押したアニメーションをするため、リアルに近い感覚がある。なお、キーボードの開発には日本にある開発拠点、大和研究所のリサーチチームが携わっている。
モードを切り替えることで、電子書籍の表示にも対応。現状の対応フォーマットは、PDFのみ。
ハッキリ言うと、Yoga Book C930の外観は非常に奇抜だ。使う人を選ぶと言ってもいい。
しかし、本体の厚さはわずか約9.9mm、重さは約775g(LTE版は約799g)と非常に薄型・軽量。外出先でペンやキーボードを使ったクリエーティブな作業をする人なら、持ち運ぶべきものがこれ1台で済むため、非常に快適になると言えるだろう。
25時間連続駆動が可能なSnapdragon搭載Windows PC
世界初のSnapdragon 850搭載Windows PC「Yoga C630 WOS」。11月に発売予定で、価格は999ユーロ(約13万円)~を予定。
一方、「Yoga C630 WOS」は13.3インチのフルHD(1920×1080ドット)解像度液晶を搭載した、一見すると従来のYogaシリーズとほぼ変わらない製品だ。
しかし、Yoga C630 WOSの真価は中身にこそある。SoCはスマートフォンなどでもお馴染みのクアルコム製Snapdragon 850を採用。同社によると、Yoga C630 WOSが世界で初めて同SoCを採用したノートPCとなる。
OSは標準でWindows 10 Sを搭載。Office製品を含むMicrosoft Storeで公開されているアプリを利用できる。
出典:レノボ
これにより、Yoga C630 WOSは連続駆動時間25時間(公称)および4Gの高速モバイルネットワークへの接続を実現。厚さは約12.5mm、重さは約1.2kgとYoga Bookに比べればやや見劣りはするが、画面サイズを考えれば十分薄型・軽量と言えるだろう。
狙いはPC事業の安定化とスマートホーム事業の立ち上げ
同社は現在、経営戦略として「3-Wave Strategy」を掲げている。PCなどの既存事業の安定的な収益化(1st Wave)、スマートフォンやサーバー事業といった現在同社が存在感を示せていない分野の強化(2nd Wave)、そしてデバイスとクラウドを活用した新しいイノベーションの創出(3rd Wave)がそれだ。
今回の発表はこのうち、1st Waveの強化と3rd Waveへのアプローチといった意味合いが大きい。
同社PC事業はいまだに安定している。2018年第2四半期のシェア率はIDCの調査によると、首位のHP(23.9%)に次いで2位の22.1%。前年同期比では+1.7%と好調だ。
Yoga Book C930やYoga C630 WOSなどの特徴的かつ最先端なデバイスで存在感を示しつつ、比較的安価なモデルからプロフェッショナル向けの高級モデルまで幅広いラインナップを用意する盤石な布陣で挑もうというわけだ。
写真左からSmart Camera、Smart Bulb(電球)、Smart Plug。アメリカでは11月、ヨーロッパや中東、アフリカなどを含むその他の地域ではその後発売予定。
そして、同社は今回、スマートホーム向けの電球、プラグ、カメラも発表している。これらにはYogaのような同社独自といった要素は薄いが、「Lenovo Link app」と呼ばれるスマートフォン向けアプリで一括管理できたり、GoogleアシスタントやAmazon Alexaといったスマートアシスタント経由での操作も可能と、実用的な使い勝手を提供する。
同様の構想はサムスンなど多くの企業も発表しているが、家電事業を持たない同社にとっては、既存のプラットフォームにも対応することで製品価値をアピールしていく狙いがある。
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なお、レノボ・ジャパン広報によると今回発表された製品の日本展開時期はいずれも「未定」となっている。早期の日本導入に期待したい。
(文・撮影、小林優多郎/取材協力、レノボ・ジャパン)