植物を育てたい! ミレニアル世代に広がるトレンドを追い風に、急成長するニューヨークのスタートアップ

イライザ・ブランク氏

「これは、わたしたちの世代にとってのガーデニングね」。イライザ・ブランク氏は、Business Insiderに語った

Courtesy of The Sill

  • アメリカでは、ミレニアル世代の間で観葉植物を購入する人がこれまでになく増えている。多くのミレニアル世代が、持ち家をなかなか手に入れることができず、都会の小さな家に住む期間が長引いているため、植物を育てることに関心が向いているという。
  • 室内で育てる植物を消費者に直接販売する「The Sill(ザ・シル)」は、テクノロジーを巧みに使って、消費者ひとりひとりの生活環境に最も適した植物をアドバイスし、自宅まで直接届けてくれる。
  • 同社は先日、レイン・ベンチャーズ(Raine Ventures)が主導する500万ドル(約5億5700万円)の資金調達ラウンドを終了。これまでに750万ドルを調達している。

イライザ・ブランク(Eliza Blank)氏が手がけるビジネスは、初心者への植物の販売だ。

ブランク氏が2012年に創業し、CEOを務める「The Sill」は、それぞれの顧客の生活環境に最も適した植物の種類は何かアドバイスすることで、室内で育てる植物を選び、購入するプロセスをシンプルにしてくれる —— 例えば、部屋は明るいのか、明るくないのか、ペットがいても大丈夫な植物か、こうしたポイントを踏まえて、購入する植物が決まったら顧客に直接届ける。

取り扱っている植物の価格は、6ドルのフィロデンドロンから、60ドルのピレア・ペペロミオイデスの間。

「これは、わたしたちの世代にとってのガーデニングね」

ブランク氏はBusiness Insiderに語った。

「わたしたちは、2018年に40歳以下の"植物好き"でいることの意味を再発見しようとしています」

このメッセージは、共感を呼んでいるようだ。The Sillは先日、レイン・ベンチャーズが主導した500万ドルの資金調達ラウンドを終了。これまでに750万ドルを調達している。同社によると、2018年に入ってから現時点までの販売数は10万点近くにのぼり、年間売り上げは500万ドルに手が届く勢いだという。2017年の売り上げは、170万ドルだった。

室内で育てる植物がブームになる中、同社は大きく成長。アナリストたちは、ミレニアル世代が暮らす生活環境がこうしたブームを支えているという。多くのミレニアル世代が持ち家をなかなか手に入れることができず、都会の小さな家に住む期間が長引いている。そのため、自然を取り入れるべく植物を置きたいと考える人が増えた。

ガーデニング業界のビジネスアドバイザー、イアン・ボールドウィン(Ian Baldwin)氏がニューヨーク・タイムズに語ったように、アメリカではミレニアル世代が家庭用植物の売り上げの3分の1を占めると考えられている。

このトレンドの最大の要因は、スペースだ —— いや、むしろ"スペースのなさ"と言うべきかもしれない。33歳のブランク氏がこのビジネスのアイデアを思いついたのは、最初に引っ越してきたアパートに不満を抱いたときだったという。

「ニューヨークの大半のアパートと同じで、どう考えても陰気な部屋でした。6階建て、エレベーターなし、広さ200平方フィート(約18.6平方メートル)の部屋で、窓から見えるのはレンガの壁だけ」

そこでブランク氏は、現実逃避に植物を置いた。

「心の健康と幸せが、どれほど自然と深く結びついているかに気付かされたんです」

自然を取り入れる

The Sillは、オンラインショップに加えて、ニューヨーク市内で2店舗を営業している。都会にある10階建てのビルの最上階に住む、庭を持たないミレニアル世代の顧客を迎えるには絶好の場所だ。

植物を育てていると、現実逃避の感覚も味わえる。

「日々のあらゆる慌ただしさから離れる、本当に良い機会です。だからこそ、ミレニアル世代の心に最も強く響いたんだと思います」

ブランク氏は言う。

植物の世話をするという行為が、持ち家をなかなか買えないばかりか、結婚や子どもを持つことも先送りせざるを得ないミレニアル世代の心の隙間を埋めているのかもしれないと指摘する声もある。

「植物は、わたしたちに大人になった感覚を与えてくれる。大人であることの従来の証し —— 結婚や住宅の購入、子ども —— が遅れたり、手の届かないものになる中、自分を頼りにしている何かのために家に帰ってくると、慰められるのだ」

ニューヨーク・タイムズの付録雑誌、ニューヨーク・タイムズ・マガジンのアソシエイト・エディター、ジャズミン・ヒューズ(Jazmine Hughes)氏は2017年6月に書いている

The Sillは、顧客を「プラント・ペアレント(植物の親)」と呼ぶことで、こうした思いに応えている。同社はウェブサイトで、月額35ドルの「プラント・ペアレント・クラブ」への入会を呼びかけている。会員になると、新しく購入した植物の世話の仕方を学べるワークショップやオンライン・セミナーに参加できるという。

インスタグラム(Instagram)やピンタレスト(Pinterest)といった、インスピレーションを与えたり、憧れを感じさせるようなプラットフォームも、「購入意欲」を高めているとブランク氏は言う。The Sillのインスタグラムには、28万2000人を超えるフォロワーがいる。

「インスタグラムでこれほど多くのコンテンツを常に投稿してくれる企業がなかったら、わたしがインテリア・デザインにこんなに熱心に取り組んだり、考えたりすることはなかったかもしれません」

ブランク氏は言う。

The Sillは現在、屋外で育てる植物にまでビジネスを拡大することと、新たな顧客の獲得を目指している。

「わたしたちはミレニアル世代に足掛かりを築きました。でも、今後はさらに35歳以上の層だけでなく、次世代も取り込んでいきたいと思っています」

そして、ブランク氏はこの点で大きな期待を寄せている。

「これは一時的なトレンドではありません —— すぐに終わるようなものではありません」

[原文:Millennials are obsessed with raising plants, and one New York-based startup is poised to capitalize]

(翻訳:遠藤康子/ガリレオ 、編集:山口佳美)

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