ウーバー“脱・白タク”の衝撃、国内初の「ウーバー配車」を名古屋で体験してわかったこと

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除幕したラッピング車両の前で拍手をする二人。左がフジタクシーの梅村尚史社長、右がUber Japanのモビリティ事業ゼネラルマネージャーのトム・ホワイト氏。

ウーバー(Uber)は2018年9月6日、名古屋のタクシー会社フジタクシーグループと協業し、Uberアプリによるタクシー配車サービスを国内で初めて、正式に開始した。

ウーバーは7月に淡路島で、タクシー会社と淡路県民局ら三者共同による配車サービスの実証実験を始めている。そこから1カ月強という短期間で、同様の「配車サービスのみを提供」の形で正式サービスにこぎつけた。

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名古屋のタクシー会社が決断した「ウーバー協業」

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Uber Japanのトム・ホワイト氏。DiDiなどの競合が先行して正式参入発表をしてはいるものの、「彼らはまだサービスインしていない。楽観的に見ている」とコメントした。

名古屋市内で行われた会見に登壇したUber Japanのモビリティ事業ゼネラルマネージャーのトム・ホワイト氏は、

「(トヨタをはじめとする大企業がある)名古屋は日本の経済でも重要な場所。これまで交渉を続けてきたが、フジタクシーはイノベーションに熱心な会社。(互いの)意図が合致して初めてのパートナーを実施することになった」

と語った。

フジタクシーは、約60年にわたって名古屋地域にタクシー事業を展開する老舗企業。現在保有車両は550台、そのうち350台をウーバー対応にする。

フジタクシーの梅村尚史社長によると、今回の協業交渉を開始したのはフジタクシー側からで、2018年に入ってからのこと。10カ月かからずに、導入が実現した。

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梅村社長は会見のなかで

「(スマホ配車については)他社とも模索してきたし、自社でも『フジどこ』という配車アプリを使ってきた。お恥ずかしい話だが、設備投資・技術革新の点で自社だけで進化するのは難しいだろうと(判断した)。(ウーバーは)現実的に、業界ではほとんどのところから、今回の提携にあたり総スカンという状況だ。だが、私はなにも臆することはないと。どんどん革新して、お客様の利便性を求めていくことが、会社(フジタクシー)にとっても、ウーバーにとってもプラスだと思う。今後とも、ウーバーとはファミリーのように接していきたいと思っている」と、日本で初の正式導入に踏み切った決意を語った。

フジタクシーでは従来、迎車料金をとらない運賃体系をとってきたが、中部運輸局の公示に基づき、2017年4月21日から初乗り450円、迎車料金200円へと運賃を改定している。

運賃改定

梅村社長によると、この影響は大きく「同一運賃化のなかで(迎車料金をとるようになり)、配車回数が減っているのが現状」で、迎車料金の設定以降、迎車回数は40〜50%減という大幅な減少になっていると明かした。

こうした状況を踏まえ、ウーバーとの取り組みの効果への期待として「(あくまで)目標として年で(配車回数を既存の)130%以上は増やしたい」というのがフジタクシーの期待だ。

先に書いたとおり、フジタクシーは、自社の配車アプリ「フジどこ」を持っており、外部企業と連携した開発着手から含めれば、足掛け丸9年、スマホ配車にかかわってきた。乗務員は他社に比較するとアプリ配車に慣れているというが、今後ゆくゆくはフジどこを止め、ウーバーに一本化していく考えだという。

また、現時点ではウーバーを呼ぶと迎車料金がかかるが、現在、アプリ経由の場合は迎車料金をとらない中部初の新運賃体系を申請中で、「1〜2カ月で認可が降りるのではないか」とした。

ウーバー正式サービスに初乗り、ドライバーの感想は「緊張感が違いますね」

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会見後、さっそくサービスインしたばかりのウーバーアプリを使って、発表会場のヒルトン名古屋から名古屋駅までを「ウーバー」してみた。

アプリを起動すると、海外で使うときと同じように、複数のウーバー車両(この場合はフジタクシー)がマップ上に表示される。行き先にピンを立てて待つこと数分、無事タクシーがホテルの車寄せに到着した。

車両の周囲をみると、ラッピング車両とは違って「ウーバー」対応であることがわかる表示はない。海外で見かける「ウーバーのロゴステッカー」なども貼られていない。

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こちらはラッピング車両。特別なもので、すべてのウーバー対応車両がこのカラーになっているわけではないという。

「今朝、本日からサービスインということで、改めてウーバーの使い方の講習をしました。お客様が今日から実際に使われるとなると、やっぱり緊張感が違いますね」

ドライバーのAさんは、ウーバー本格運用初日の感想をこう語った。

Aさんによると、今日は複数件の迎車をしてきたが、「ウーバーを利用した方は、お客様が初めてですよ」と言う。

Aさんと雑談をしながら、今後海外からのインバウンド旅行者の利用が増えることを考えると車両にロゴ掲出をしたほうが良いのでは? などと考えていると、すぐに駅に到着した。

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前回乗車はちょうど1年前、シリコンバレー周辺。日米の乗車履歴が並ぶのは新鮮。

多少の道路の混雑のため、当初の予想時刻からは6分遅れで目的地に到着した。初乗客ということで、多少、操作に戸惑うところもあったものの、レシートだけを受け取って降車。支払いは海外同様キャッシュレスだ。

やはり、世界水準で磨き上げられたユーザー体験は、使いやすさ、一連の乗車・降車のスムーズさで一日の長があると感じる。

去っていくタクシーの後ろ姿をみながら、色々話を聞かせてくれたAさんには「星5」評価を送った。

日本独特の「同一料金」が生む、ウーバーの機能制限

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少子高齢化、エコの推進という文脈では、ウーバーによってタクシー業界の「効率化」が進むのかどうかも注目だ。たとえば、ドライバーの勘に頼らない需要予測のような機能は入るのか?

アメリカ版のウーバーは、「ダイナミックプライシング」という料金変動制をとっており、需要の高い地域では通常料金の1.5倍や2倍といった形で瞬間的に料金を上げ下げすることで、需給のバランスをとっている。

ドライバーからすると、料金の高い地域に向かえば乗車1回あたりの利益率が大幅に高くなるため、実質的に「ドライバーに対する高需要地域情報の提供」という側面も持っている。

ウーバー関係者によると、日本は規制にのっとり同一運賃での実施になるため、この機能は動作しないという。

つまり、ドライバー側からみると、あくまで他のタクシー配車アプリと同様に「迎車連絡待ち」をするアプリとしてのみ、機能することになる。

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ウーバーのトム・ホワイト氏によると、ウーバーは複数の国内のタクシー会社と交渉を進めているという。タクシー会社の手数料負担について、フジタクシーの梅村社長は、「詳細はいえないが、十二分にタクシー会社が運営していける手数料」だと、タクシー業界にとってもフェアな取り組みであることを強調した。

ウーバーによると、ウーバーアプリは、サービスイン前の最近の3カ月でも、40万人の訪日客が日本で起動されているという。

そうした機会損失が、タクシー会社のインバウンド収入になるのであれば、梅村社長の言うように「臆することはない」という前向きな成果の出せる取り組みになるのではないだろうか。

(文、写真・伊藤有)

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