電動車椅子ベンチャーWHILLが50億円を資金調達、シェア事業に本格参入へ

whill001

WHILL代表取締役CEOの杉江 理氏。1982年生まれ。WHILLは2012年5月に設立、これまで総額約34億円の資金調達を実施してきたが、一気に50億円の大型増資をし、MaaS事業の本格化と海外展開を加速する。

写真提供:WHILL

電動車椅子などのパーソナルモビリティの開発・販売を手がけるハードウェアスタートアップのWHILL(神奈川県横浜市)は2018年9月18日、SBIインベストメントを含む複数の企業や投資家から総額50億円の資金を調達した。

これでWHILLが調達してきた資金の総額は、約80億円になった。

杉江理CEOは、「海外展開の加速と、新たな事業の柱としてMaaS※に本格参入するため」と、今回の調達理由を説明した。

WHILLはパーソナルモビリティの個人・法人向け販売を基幹事業としているが、ここに第二の柱としてMaaS事業を本格的に立ち上げる。2020年の実用化を目指す。

MaaSとは:Mobility as a Service(移動のサービス化)などと訳される。乗り物単体を販売するのではなく、月額制や都度課金などの形で新たな移動体験を提供する。いわゆる「シェアリングエコノミー」や自動運転とセットで語られることが増えてきた領域。

whill002

写真提供:WHILL

MaaS事業の全容は現時点ではまだ判然としない部分が多いが、杉江氏は世界観を言い表すフレーズとして、「Uber for Sidewalk(歩道のためのウーバー)」という言葉で説明している。その意味は、タクシーのように呼べば自動的にその場にやってきて、バッテリー残量が低下したら勝手に充電しにいくような世界観を、最終的な完成形として構想している。

こうしたアイデアは、SF的な「モビリティの未来像」ではよく語られるが、そのファーストステップとして杉江氏が語る社会実装は、現実味のある姿だ。

杉江:いま、モビリティに関する明確な社会課題が1つあります。たとえば空港のような大規模な商業施設には、車椅子の人を係員が押して目的地まで移動する“車椅子プッシュサービス”があります。

高齢化社会に向けて、このニーズが非常に高まっています。しかし、(サービス拡充には)機器の購入、係員の雇用と、空港側のオペレーションコストが相当にかかります。特にアメリカでは人件費もどんどん上がっていますし、ますますワークしづらい仕組みになってきているのが現状です。

だから私たちは、将来的にはこれを全部自動化したいと思っています。自動運転に関しては、クルマよりもパーソナルモビリティの方がいろいろな点で実現化しやすい。(WHILLのMaaSで自動運転が実現すれば)彼ら事業者にとっては、オペレーションコストの削減になります。空港などの商業施設での取り組みは、そのファーストステップです。

ゆくゆくはそういったハブになる場所全部に、WHILLが設置されているような世界をつくっていきたいと考えています。

WHILLは2018年初めに羽田空港で、パートナー企業と共同開発した衝突防止機能搭載のデモ車両「WHILL NEXT」の公開実験を実施している。MaaSの自動運転・追従走行機能の本格実装は、羽田での取り組みをさらに前進させる形で進めていく方針だ。

MaaS事業は日米欧の3地域で開始予定

whill003

2017年4月に発表した実質2世代目のWHILL「Model C」。2018年6月にはアメリカに引き続き、ヨーロッパ(イギリス、イタリア)でも発売開始した。日本向け仕様の価格は希望小売価格45万円。

whill02

日本本社は横浜市鶴見区にある。今回の資金調達をきっかけにオフィスの移転は?と聞くと、「試験には広い場所も必要ですし、浮足立たずに考えて判断したい」と、慎重なコメント。

WHILLは現在、第1世代のパーソナルモビリティ「Model A」、小型軽量にした最新型の「Model C」をベースに、各国向けのローカライズモデルを販売する形をとっている。

MaaS事業への本格参入にあたっては、「これまで培ったハードウェアとソフトウェアの知見を活かして機能を拡張していく。サービス提供地域は、既存事業を展開する日本、アメリカ、ヨーロッパの3つの地域で開始する予定」(杉江氏)という。

MaaSの提供形態は、上記のような空港、スポーツ施設、商業施設、駅といった公共施設のサービスとして提供するパターンのほかに、シェア自転車のような一時利用での提供もあり得そうだ。

投資家一覧。参画する新規投資家 ・SBIインベストメント株式会社(SBI AI&Blockchain投資事業有限責任組合) ・大和証券グループ(大和企業投資株式会社、大和PIパートナーズ株式会社) ・株式会社ウィズ・パートナーズ ・Mistletoe株式会社 ・Endeavor Catalyst ・日本材料技研グループ(JMTCキャピタル合同会社) ・株式会社エスネットワークス 参画する既存投資家 ・三井住友海上キャピタル株式会社 ・株式会社産業革新機構 ・Eight Roads Ventures ・日本ベンチャーキャピタル株式会社 ・株式会社DGインキュベーション ・みずほキャピタル株式会社

プレスリリースをもとにBusiness Insider Japanが作成

WHILLの社員・スタッフの規模は2018年8月時点で約70名と、前年から10名増えた。開発は今後も日本をベースにし、ビジネス開発や営業はそれぞれの地域拠点にオフィスを設けるというスタイルをとっていく。

今回の資金調達に合わせ、採用もさらに積極化していく。いま特に求めている職種は「サーバーサイドエンジニア、アプリエンジニア、メカエンジニア、プロダクトマネージャーなど」(杉江氏)とのことだ。

MaaS事業についての詳細の公表時期については次のように答えた。

杉江:2019年1月にラスベガスで開催されるCES 2019で、WHILLのMaaS事業の詳細を初披露する予定です。CESのWHILLブースと新しい発表に期待してください。

(文、写真・伊藤有)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中