The Ocean Cleanup
ついに海へ。
現在24歳のオランダ人イノベーター、ボイヤン・スラット(Boyan Slat)氏が立ち上げたNPOオーシャン・クリーンアップ(Ocean Cleanup)は過去5年にわたって、世界の海からプラスチックごみを回収するシステムの開発に取り組んできた。
海には膨大な量のプラごみがあり、その量は毎日増え続けている。毎年少なくとも800万トンのプラごみが海に流れ込んでいる。だが、この数字には、例えば漁網は含まれておらず、実際にはこれ以上のプラごみが流れ込んでいると推定されている。
プラごみはより小さな破片となり、その大部分は最終的に地球上に5つある巨大な海域のうちの1つに運ばれる。プラごみが集まり、「太平洋ごみベルト(Great Pacific Garbage Patch)」と呼ばれるようになった海域だ。
2018年9月8日(現地時間)、オーシャン・クリーンアップは初のプラごみ回収装置、全長約610メートルの「システム001(System 001)」を太平洋に送り出した。
システム001は「Maersk Launcher」号がけん引し、サンフランシスコ湾を抜け、ゴールデン・ゲート・ブリッジをくぐり抜けて最終試験が行われる海域に向かった。試験がうまくいけば、太平洋ごみベルトに向かう。システム001は1年目には、50トンのプラごみを回収すると期待されている。
スラット氏らはこの装置を使えば、少なくともごみベルトに浮かぶ大きなゴミは回収できると期待している。装置は最大60個をつなぎ合わせることができ、5年以内にごみベルトのプラごみの50%を回収できると語った。
だが今のところ、彼らのテクノロジーはまだ実証されていない。計画通りに機能するかどうかも分からない。
オーシャン・クリーンアップの計画は、極めて重大かつ醜悪な問題に取り組もうとしている点で多くの人を刺激した。
だが一方で、プラスチックの研究者たちからは大きな批判を受けている。研究者たちは、装置は小さな破片となって海に沈んだプラごみの多くは回収できず、効果は期待できないだろうと語った。
また研究者たちは、装置が海洋生物に悪影響を及ぼす可能性、厳しい海の環境によって装置が壊れる可能性、さらにはプラスチックの全面的な使用禁止と、まず第一にプラごみの海への流入を防ぐ取り組みへの妨げになるのではないかとの懸念を示した。
スラット氏は、まずプラごみによる海の汚染を止めることが世界的な最優先課題だが、すでに海に存在するごみの回収についても同様に何らかの対策が必要と語った。だが、回収装置の初の実証試験に世界と科学者たちが注目していることも理解していると語った。
「まだ実証されたテクノロジーではない。今後数カ月でやるべきことをやらなければならない」とスラット氏はBusiness Insiderに語った。
オーシャン・クリーンアップはこれまで、試験機を動かしてシミュレーションを行い、また回収装置を水中でテストしてきた。だが、装置をフルサイズで組み立て、太平洋でテストするのは初めて。
スラット氏は8日、「試験機は試験機」、参考になったが実際の場における完全なデモンストレーションになったわけではないと語った。
「エキサイティングな6カ月になる」
オーシャン・クリーンアップの初のプラごみ回収装置「システム001」を見てみよう。
システム001はサンフランシスコのベイエリアにある造船所で組み立てられた。
The Ocean Cleanup
固いパイプが装置を海に浮かべる。
The Ocean Cleanup
灯火、レーダー・リフレクター、ナビゲーション・シグナル、GPS、衝突防止用ビーコンが装備されている。
The Ocean Cleanup
ソーラーパネルで電力を供給。
The Ocean Cleanup
パイプの下には長さ約3メートルの水を通さない素材でできたスカートが取り付けられ、海に浮かぶプラごみを集める。
The Ocean Cleanup
2018年はじめ、オーシャン・クリーンアップは全長約120メートルのテスト用装置を組み立て、海に浮かべる実験を行った。
The Ocean Cleanup
2018年5月18日、テスト用装置は海に浮かべられた。
The Ocean Cleanup
2週間のテストに耐えた。
The Ocean Cleanup
フルサイズの回収装置は全長約610メートル。
The Ocean Cleanup
初のフルサイズのプラごみ回収装置の開発費用は約2300万ドル(約25億6000万円)。だが、将来的には製造コストは600万ドル以下(約6億7000万円)まで下がるとオーシャン・クリーンアップは考えている。
The Ocean Cleanup
システム001は約390~480キロ沖の試験海域まで運ばれる。3日程度かかる予定。
Kevin Loria/Business Insider
回収装置は真っすぐ、長く伸びた状態で運ばれるため、さほど手間はかからない。
Kevin Loria/Business Insider
だが、最終試験が行われる海域に到着したら、まずU字型に形を変え、約2週間の試験に臨む。
Kevin Loria/Business Insider
スラット氏は、最終試験の海域にシステム001を配置した後、U字形の形状と予定どおりの機能を維持することができるかどうか、そして海の中での動作状況をチェックすると語った。
Kevin Loria/Business Insider
試験がうまくいけば、さらに1000海里(約2000キロ)先の太平洋ごみベルトに向かう。
The Ocean Cleanup
プラごみ回収装置が太平洋ごみベルトに到着した後は、集められたプラごみは約6週間ごとに船で回収する。
The Ocean Cleanup
だが回収装置は第1号であり、オーシャン・クリーンアップは装置やプラごみの回収方法を微調整、もしくは再設計する必要があると考えている。
The Ocean Cleanup
太平洋ごみベルトに到達した後、プラごみをどれくらい効率的に回収できたかもチェックする。
Kevin Loria/Business Insider
冬には、巨大な波や嵐に耐えられるかどうかもチェックする。
Kevin Loria/Business Insider
最初のプラごみ回収装置が成功しても、取り組みはまだ始まったばかり。
Kevin Loria/Business Insider
(翻訳:R. Yamaguchi、編集:増田隆幸)