ここから次のシリコンバレー?築地、茅場町など続々。渋谷、五反田に次ぐ“バレー構想”

築地

市場が移転した後の築地は、「築地バレー」に!?

撮影:西山里緒

2018年7月の「五反田バレー」の発表以降、都内の各地で、“バレー構想”が続々と持ち上がっている。

シリコンバレーから転じて、スタートアップの集積地の通称となった“バレー”。

国内ではすでに、渋谷のビットバレーに始まり、大阪の西中島のにしなかバレー、五反田バレーなどが存在する。そんな先陣に次ごうとするのが、茅場町と築地だ。

オン・ザ・エッヂ時代のビットバレーに原体験

築地

ねこじゃらし社社長の川村ミサキさん。

撮影:西山里緒

もともと僕は2000年代始め、大学生の時に、ライブドアの前身であるオン・ザ・エッヂでアルバイトをしていたんです

「築地バレー」を掲げるねこじゃらし社社長の川村ミサキさんは、自らの原体験をそう語る。

同社は、動画や音楽などの大容量ファイルをクラウド上で共有するサービスなどを提供するベンチャーだ。2018年4月、赤坂から築地にオフィスを移転した。

川村さんがオン・ザ・エッヂで働いていた当時は、ビットバレーブームの全盛期。起業を志す若者、実際に起業した若者が渋谷に集まり、そこからサイバーエージェントなどのIT企業が育っていった。

オン・ザ・エッヂも、「靴を脱いであがるような雑居ビルから、オフィスがどんどん拡大していった」という。

築地市場の跡地に新たなアイデンティティ

築地

実は汐留からも銀座からも近く、豊洲からも通いやすい、築地。

撮影:西山里緒

「築地バレー」と言い始めたきっかけは2017年、川村さんの母親が病気で聖路加国際病院に入院したことだ。看護のために築地に部屋を借りたとき、川村さんはこの街の良さを実感することになる。

築地本願寺や築地市場など、日本の伝統や食文化を象徴する街でもあり、訪日外国人も多い。一方で、2018年10月に豊洲に移転する築地市場をめぐり「ひとつの大きなアイデンティティを喪失する」場所でもある。

築地市場を失ったあとのこの場所を、川村さんは「ITとクリエイティブの拠点」にしたい、という。

街も変化してきている。ニチレイの本社があるなど、古くから築地は加工食品・水産加工食品の会社が多くあった。しかし市場移転に伴い、水産系の会社の中には築地から撤退する社もある。その代わりに入居しているのがIT企業、と川村さんは感じている。

築地

築地バレーの課題は「夜遅くまでやっている飲みに行けるところが少ない」?

撮影:西山里緒

しかしまだまだ、ITベンチャーの集積地としては未開拓。

「築地は家電量販店が近くにない」(川村さん)という悩みもある。それでも、川村さんは築地バレーの夢をこう語る。

「(市場が移転するので)ゼロからつくれるのが良い。築地市場の跡地はまだ何になるかわからないが、eスポーツやVRのスタジアムになるのでは?という噂も出ている。汐留にも近く、銀座にも近いこの場所は、いろいろなものの中心地になれる場所だと思う

レガシーとスタートアップが入れ替わり

茅場町

カヤバレーの構想が進む、茅場町周辺。シェアオフィスやカフェが新たにできている。

一方、茅場町周辺に広がるカヤバレー(仮称)は、「フィンテックの集積地」をテーマにしている。

茅場町エリアには東京証券取引所(日本橋兜町)があり、伝統的に証券会社や大手金融機関が集まっていた。証券取引が電子化されて以降は、それらの企業が各地へ移転し、街の再開発が進んだ。

今やエリア内に、約20ものシェアオフィスやコワーキングスペースが集結。東京証券取引所の物件オーナーの平和不動産は、2017年からシェアオフィス「FinGATE」(フィンゲート)を、茅場町と日本橋兜町に3軒オープン、10社を誘致した。

規制業界ならではのコミュニティの価値

茅場町

カヤバレーの構想を語る関係者たち。規制の厳しいフィンテック業界には、コミュニティが重要のようだ。

カヤバレーの最大の魅力は、「コミュニティ」だ。

毎週のようにフィンテック関連の勉強会や交流会など、イベントが盛んに開かれている。コミュニティを牽引するのは、資産運用イノベーション協会(FINTOKYO)やFintech協会などだ。

FINTOKYOのハッカソンから3社のベンチャーも誕生。両協会が拠点にするFinGATEは、毎月20〜30件のイベントが開かれている。

Fintech協会の桜井駿事務局長は、フィンテック業界では特にコミュニティが大切になる、と話す。

「フィンテック業界は規制が厳しいという、業界特有の悩みがある。それを解決するためには、規制に詳しい人とつながればいい」(桜井さん)

「専門家と一緒に金融のホットなトピックを議論する拠点」、その役割をコミュニティが担っている。FINTOKYOの代表理事のロボット投信の野口哲社長も「(カヤバレーでは)コミュニティが価値になっている」と認識している。

日本の現状を視察するために、中国の著名なベンチャーキャピタルや韓国のフィンテック関連の協会も訪れているという。

明治時代のベンチャーの集積地

茅場町

茅場町周辺は、故・渋沢栄一氏のゆかりの土地。

東京証券取引所の物件オーナー平和不動産の荒大樹さんによると、茅場町エリアは生涯で500社近い企業の育成に関わった、故・渋沢栄一氏(1840年ー1931年)のゆかりの地。

第一国立銀行のあった銀行発祥の地(日本橋兜町)は現在、みずほ銀行が建っている。その向かいのビルには、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のDigitalアクセラレータの拠点が入居。スタートアップの事業支援をするハブになっている。

荒さんは、「東京電力や第一国立銀行など、渋沢氏が明治時代に設立した会社も当時はベンチャーだった。茅場町は、いろんな“初めて”が生まれた街。これからも人が成長する街にしたい」と話す。

「バレー連合」を作りたい

五反田バレー

2018年7月、五反田バレーが設立。その数日後、「シブヤ・ビットバレー」のプロジェクトが発表された。大阪には、御堂筋線の新大阪から西中島南方、中津の駅周辺に、にしなかバレーが存在する。

撮影:木許はるみ

各地で沸き起こるバレー構想。それぞれのバレーが連携しない手はない。大阪のにしなかバレーは、地方のバレーとプレゼン対決をする企画を毎年実施。五反田バレーとも連携しているという。

「バレー連合を作りたい」

カヤバレーの関係者は取材の中で、冗談交じりに語った。荒さんは、五反田バレーの関係者と「一緒にイベントでも」などとアイデアを交換しているという。

バレーの発祥地である渋谷のIT企業も、2018年7月に新たにビットバレーの活動を発表したばかり。各地のバレーが活気付き、それぞれが連携をすれば、日本全体のスタートアップが盛りがるかもしれない。

(文・撮影、木許はるみ・西山里緒)

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