月に約11万円、黒人シングルマザーに注力した初のベーシックインカム実験がミシシッピ州でスタート

ミシシッピ州:ベーシックインカム

Springboard to Opportunities

  • ミシシッピ州の州都ジャクソンで2018年12月、ベーシックインカムのパイロットプログラムが始まる。黒人シングルマザー15人に月1000ドルを支給する。
  • プログラムの責任者、アイシャ・ニャンドロ氏によると、期間は1年。ベーシックインカムが対象者に与えた影響を研究者が分析する。
  • 「マグノリア・マザーズ・トラスト」と名付けられたパイロットプログラムには、リーダーシップに関するトレーニングやソーシャルワーカーとの面談も含まれる。
  • 同トラストは、慈善事業ネットワーク「Economic Security Project」から支援を受ける。同ネットワークは、カリフォルニア州ストックトンで行われる別のベーシックインカム実験にも100万ドルを拠出した。

ミシシッピ州の州都ジャクソンでベーシックインカムのパイロットプログラムが始まる。黒人シングルマザー15人に、1年間にわたって月1000ドル(約11万円)が支給される。

ここ数年、北米、ヨーロッパ、アフリカでは少なくとも6件の主要なベーシックインカム実験が進められた。今回、ミシシッピで行われる「マグノリア・マザーズ・トラスト(Magnolia Mother's Trust)」と名付けられたプログラムは、低所得の黒人女性に注力した初めてのベーシックインカム実験となる。

ミシシッピ州はアメリカでも最も貧しい州として知られ、州都ジャクソンは住民のうちの80%以上を黒人が占める。アメリカ全体で見たときに、黒人女性は他のどの社会的グループよりも、貧困率が最も高くなっている。

マグノリア・マザーズ・トラストは12月開始予定、慈善事業ネットワーク「Economic Security Project」から支援を受けた。同ネットワークの共同会長は、フェイスブックの共同創業者の1人、クリス・ヒューズ(Chris Hughes)氏と、シェアリングエコノミーで働く人々の支援団体「Peers.org」の共同創設者、ナタリー・フォスター(Natalie Foster)氏らが務めている。

今回のプログラムを統括するのは、低所得者向け住宅に住む家族を支援する「Springboard To Opportunities」のCEO、アイシャ・ニャンドロ(Aisha Nyandoro)氏。

ニャンドロ氏は、支給対象を15人よりも多くしたかったが、プログラム開始前に資金を確保する必要があり、それは困難だったとBusiness Insiderに語った。

マグノリア・マザーズ・トラストは、ベーシックインカムに関する広範な調査研究にも参画している。ニャンドロ氏は、今回のパイロットプログラムがきっかけとなって、今後行われるプロジェクトに、より多くの資金が集まることを期待していると語った。

同氏は最終的に、100世帯を対象に3年間のプログラムを行いたいと考えている。

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ジャクソンでの実験を進める中で、Springboard To Opportunitiesはベーシックインカムが対象者の暮らしを変えるのか、地域社会への関わりが深まるのかを検証するとニャンドロ氏は語った。

加えて同団体は、対象となるシングルマザーに向けて、互いに交流する機会やリーダーシップに関するトレーニングを受ける機会を月1回設ける予定。ソーシャルワーカーによる面談もある。

「特にこうした低所得コミュニティーでは、トラウマとなるような事件や出来事が起こり、家族が対応を強いられるケースが多いことが判明している。不幸なことだが」とニャンドロ氏は語った。

ジャクソンのプログラムは、世界中で増えているベーシックインカム実験に続くもの。だが、実験の中には最近になってさまざまな理由で、延期や中止に追い込まれたものもある。

シリコンバレーの最大規模のスタートアップ・アクセラレーター、Y Combinatorは、カリフォルニア州オークランドでのパイロットプログラムの後、より大規模な実験を行う予定だったが延期した。その一因には、実験参加者がすでに受け取っている補助などを失うことがないよう、万全を期す必要があったことがある。

2018年7月には、カナダのオンタリオ州政府が4000人を対象に3年の予定で行われていた実験の終了を決定。地元紙トロント・スターは8月末、実験は予定を1年以上短縮し、2019年3月で終了すると伝えた。開始からわずか1年で打ち切りが発表されたことに、住民たちは衝撃を受け、激怒した

Economic Security Projectの共同会長を務めるフォスター氏は、オンタリオ州の実験が州トップの交代によって終了したことに失望したとBusiness Insiderの取材に語った。

「パイロットプログラムの参加者に対する約束を守れるよう、万全を期すことが最も重要」とフォスター氏。

「Economic Security Projectは関わっているあらゆるプロジェクトで約束を守るよう万全を期している。それが我々の役割」

Economic Security Projectはまた、2019年にカリフォルニア州ストックトンで開始予定の、1年半、100人を対象にしたベーシックインカム実験にも100万ドルを拠出した

フォスター氏によると、これらの実験はそれぞれ異なっているが、Springboard To Opportunitiesは低所得者支援の経験が豊富であり、ベーシックインカムのパイロットプログラムを運営するための「完璧な条件が整っている」。

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連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board:FRB)の2018年5月のレポートによると、400ドル(約4万4000円)の予期せぬ出費に対応できないと答えた人は40%にのぼった。また、シンクタンクのルーズベルト・インスティチュート(Roosevelt Institute)の2017年のレポートは、ベーシックインカムはアメリカ経済を刺激すると記した。

フォスター氏は、マグノリア・マザーズ・トラストや他の実験が良い結果を出せば、より多くの都市が独自のベーシックインカム実験を開始するだろうと語った。

「アイシャはジャクソンで、シングルマザーが多少の余裕を持つことができたら、何が起きるかを示してくれるだろう。ようやくユニフォームが買えるようになり、子どもがサッカーを始められるかもしれない。あるいは、3つめの仕事をかけ持ちする必要がなくなって、家族と過ごす時間が少しでも増えるかもしれない」とフォスター氏。

「こうしたストーリーがジャクソンから生まれることを大いに期待している」

ニャンドロ氏は、自身も含めベーシックインカム推進者は互いに学び合っていると語った。同氏によると、パイロットプログラムの運営は、飛行機を組み立てながら飛ばしているようなもの。

ニャンドロ氏は、ジャクソンのベーシックインカム実験は開始前に必要な資金を確保したので、参加者は途中で打ち切られることを心配する必要はないと語った。

[原文:A basic income pilot in Mississippi will provide 15 black mothers with $1,000 for free every month, and it could lead to a much bigger experiment

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:増田隆幸)

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