匿名通貨は禁止、ICOは事前に審査 —— 仮想通貨取引の自主ルール案まとまる

匿名性の高い仮想通貨は禁止、ICOプロジェクトは実現可能性を審査し、レバレッジは4倍までとする —— 。

仮想通貨取引所の業界団体、日本仮想通貨交換業協会が2018年9月12日、自主ルールの概要を明らかにした。金融庁でこの日開かれた仮想通貨交換業等に関する研究会で、同協会の奥山泰全会長(マネーパートナーズ社長)が説明した。

今回、協会がまとめた自主ルールは、金融商品取引業の事例などを参考にまとめたもので、取り引きに関する詳細なルールが定められている。ルールを明確化することで、いわば「なんでもあり」だった業界に一定の落ち着きをもたらすとみられている。

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撮影:今村拓馬

自主ルールの整備をめぐっては、低迷する仮想通貨市場の活性化につながる期待感もあるが、厳格にルールを実施するには相応の人員や資金が求められることから、交換業者の淘汰がさらに進む可能性もある。

信頼回復目指す業界団体

日本仮想通貨交換業協会は、登録済みの交換業者16社が3月に立ち上げた。8月には、正式な自主規制団体としての認定を金融庁に申請した。現在、自主ルールのあり方などについて、金融庁との調整を進めている。

2018年2月以降、金融庁が交換業者やみなし業者に立ち入り検査した結果、内部の管理態勢や顧客保護などについて、多くの問題が浮かんだ。協会としては、こうした問題点を整理し、ルールを明確化することで、業界への信頼回復と取引の活性化につなげたい考えだ。

匿名性の高い仮想通貨は禁止

金融庁

撮影:今村拓馬

新たな仮想通貨の取り扱いについては、発行状況や取引状況、管理者、保有者などについて協会が審査する。交換業者が新たな仮想通貨の取り扱いを始めるときは、金融庁も審査するが、協会が事前に審査し、協会が異議を述べたときは取り扱いができない制度とする。

どのように移転したかなどについての追跡ができないよう設計されている仮想通貨や、追跡が難しい仮想通貨の取り扱いは禁止する。コインチェックは、仮想通貨の流出事件が起きる前、多くの仮想通貨を扱っていたが、事件後の2018年5月、匿名性の高さなどが指摘されていたMonero(モネロ)、Zcash(ゼットキャッシュ)、Dash(ダッシュ)、Augur(オーガー)の取り扱いを取りやめた。

取り扱いを認めた仮想通貨については、概要の説明書も公表する。

相場操縦への対策や情報管理の強化

日本国内で仮想通貨が取引されるようになって、5年ほどだが、当初はルールが存在しなかった。このため、取引所の関係者が事前に特定の仮想通貨を買い、その後、取引所での取り扱いを始めることで、価格の上昇を狙う行為もあったと言われる。

2017年4月に資金決済法が施行されて以降も、取引所側のこうした行為が疑われるとネット上で指摘されたケースがあった。

このため、交換業者内部の重要情報や、売買の判断に影響しうる情報の取り扱いについてもルールを定める。不適正な取引が疑われる場合は、協会への報告も義務付ける。

レバレッジ取引は4倍まで

仮想通貨のマイニング施設

コソボにある仮想通貨のマイニング施設。

REUTERS/Hazir Reka

レバレッジ取引は、証拠金を取引所側に預けることで、小さな資金で、多額の取引ができる仕組みだ。

手元に10万円の資金があったときに、10倍のレバレッジの場合は、100万円の取引ができる。レバレッジ取引で、100万円分の仮想通貨を購入すると、値上がりした場合は、多くの利益を得ることができる。

反対に、値下がりしたときは損失も大きくなるが、利用者が多額の借金を抱えずに済むよう、一定の損失が出た場合に、自動的に決済をさせる「ロスカット」が導入されている。

レバレッジ取引は、仮想通貨価格の変動が激しいことの要因とも指摘されていることから、4倍を「協会指定水準」とした。

ICOは協会が審査

仮想通貨で資金を集めるICO(Initial Coin Offering)は、2017年以降、世界各地で実施され、数千億円規模の資金を集めるICOもあった。一方で、プロジェクトの実現性が不確かなICOや、資金を集めたまま立ち消えになったプロジェクトもあると指摘されている。

このため、協会がICOプロジェクトの実現性などを事前に審査。技術的な安全性も検証するという。ただ、国内ではICOの法的な位置づけなどが定まっていないため、事実上、ICOは実施できない状態だ。協会による審査が実施されるとしても、金融庁の方針が定まって以降のこととなる。

協会は、業者ごとに経営状況などが異なるため、システム改修や人員の確保などが必要となるルールについては、経過措置を設け、段階的に施行することにしている。

金融庁によれば、現在、160社を超える企業が仮想通貨交換業への参入の意向を示しているという。自主ルールの策定は、低迷気味の仮想通貨市場の環境整備を進めることで、市場の再活性化を目指す意味もある。

(文・小島寛明)

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