StructureCraft
高層、あるいは大型の木造ビルに取り組む北米の建築家やディベロッパーが増えている。
木材は二酸化炭素を吸収して固定化し、コンクリートよりも火に強く、鉄やコンクリートを使うよりも費用が抑えられることもある。木造建築物には大型のプレハブ化された部材が使われる。
だが、高層、あるいは大型の木造建築はまだ簡単には作れない。多くの都市で、木造建築物の高さを制限しているためだ。
2018年9月、オレゴン州は従来6階までとしていた高さ制限を廃止し、高層の木造ビルを合法化した最初の州となった。
他の多くの都市でも、大型の木造ビルの許可を求める動きや資金集めが進められている。北米の有名な木造建築物を見てみよう。
グーグルの親会社アルファベットはトロントのウォーターフロントで木材を活用した再開発を計画。
Sidewalk Labs
アルファベットの都市イノベーション子会社「サイドウォーク・ラボ(Sidewalk Labs)」は、カナダ・トロントでハイテクエリアを整備する再開発を計画している。
トロントのウォーターフロントで計画中の「キーサイド(Quayside)」は、木造建築物を活用した世界最大規模の開発計画となる。費用は約10億ドル(約1100億円)、道路を温める技術など革新的な技術を導入する。
キーサイドの建築物は持続可能性を高めるために屋上緑化が取り入れられる。サイドウォークラボは建築物をモジュール化する予定、これにより既存の建物物よりも費用が抑えられるとしている。
開発計画によって住宅価格が高騰し、収入格差が広がると懸念する住民もいる。
Sidewalk Labs
オレゴン州ポートランドでは今年の夏、ある木造高層ビルの計画が無期限停止となった。
LEVER Architecture
2017年、オレゴン州ポートランドでアメリカ初となる木造高層ビルが許可された。
だが2018年7月時点、このプロジェクトは無期限停止となっている。
小売店舗、オフィス、住宅が入居する複合施設となる予定だった。
KPFF Consulting Engineers
レバー・アーキテクチャは当初、「フレームワーク(Framework)」と名付けたビルの完成を2018年末と見込んでいた。ポートランドでの建設コストが上昇したため建築が停止されたと報じられた。
シカゴの設計事務所は、80階の木造高層ビルを提案。
Perkins+Will
「リバー・ビーチ・タワー(River Beech Tower)」と名付けられた建物は、シカゴの中心街近くに計画された建物の1つ。
Perkins+Will
設計事務所リバーラインの開発計画には、ビル10棟、緑地、川沿いの遊歩道の整備が含まれていた。開発期間は10年、2016年にスタートした。
ニューヨークに計画された10階建てのコンドミニアムは中止に。
SHoP Architects
中止にはニューヨークの規制が関連したようだ。
SHoP Architects
だがブルックリンでは、2棟の大規模木造オフィスビルの建築が進んでいる。
Flank
この「ウィリアムズバーグ(Williamsburg)」プロジェクトには、サイドウォークラボのキーサイドと同じカナダ産木材が使われている。
Flank
ビルに使われる木材は、トロントのキーサイドで使われる木材と同じ森から伐採された。
カナダ・ケベックの12階建てコンドミニアムには、主に直交集成板(CTL)が使われている。
Stephane Groleau
当初は特別な許可が必要だった。だがケベック州政府は木造高層ビルに関する規制を変更した。
Stephane Groleau
ブリティッシュコロンビア大学の学生寮も木造。
Michael Elkan/Acton Ostry Architects and University of British Columbia
「ブロック・コモンズ・トールウッド・ハウス(Brock Commons Tallwood House)」はわずか66日で完成。
Michael Elkan/Acton Ostry Architects and University of British Columbia
集成材(GLT)と直交集成板を使用、ファサードはプレハブ。わずか66日で完成した。
使用された木材は吸収した二酸化炭素は1753トン、建築費は同じ大きさのコンクリート・ビルとほぼ同じ。
ミネアポリスの7階建て木造高層ビル「T3」は2016年後半に完成。
Ema Peters
T3は「Timber」「Technology」「Transit」の頭文字。
木材が吸収した二酸化炭素は数千トン、排出量を削減できた。
Corey Gaffer
T3のウェブサイトによると、建物に使用された木材が吸収した二酸化炭素は3600トン以上。T3は鉄やコンクリートではなく木材でできており、1000台近くの車を削減したことと同等の効果となった。
1階はミーティングスペース、その他、屋上デッキ、フィットネスセンターがある。
(翻訳:R. Yamaguchi、編集:増田隆幸)