決済端末をテストするロボット
Adyen
「仕事の未来」をテーマにした記事は多数あるが、確実なことが1つだけある。ロボット化の波は、すぐそこまで来ているということだ。
ロボット工学やAIの進化は、今後数十年にわたって、世界中の雇用を劇的に変化させていくだろう。そして、多くの仕事が時代遅れのものになる。
例えば、世界経済フォーラムは、2020年までに500万もの雇用がロボットによって奪われると推定している。また、オックスフォード大学(Oxford University)とシティグループ(Citigroup)は、イギリスでは35%、アメリカでは47%の雇用がロボットによって危機に瀕していると述べた。
ロボット化(自動化)の危機に最も瀕しているのは、通常、コールセンターのスタッフや工場労働者だと考えられている。単調な肉体労働はロボットに任せた方が早く、安価で、ベターだ。しかし、ロボットに依存しているのは、自動車工場などの製造業だけではない。
フィンテック関連の企業もロボットを活用する。決済サービスを提供しているAdyenは、アムステルダム本社に6機のロボットを所有し、決済端末のテストを行っている。
同社のCCO(最高営業責任者)、ローラント・プリンス(Roelant Prins)氏は、Business Insiderに以下のように語った。
「(ロボットは)24時間365日、あらゆるカード、あらゆる組み合わせ、あらゆる事態を想定してテストを続けている。決済端末を、いかなる取引にも対応できるようにしておくためだ」
同社は、企業に対して、あらゆる種類の支払いに対応できる決済サービスを提供している。世界中のあらゆる場所で、オンライン、オフライン、双方の決済に対応している。特にオンラインビジネスの事業者には人気が高く、Uber、Airbnb、Netflix、スポティファイ、Facebookなどが顧客として名を連ねている。
また同社は、カード読み取り端末やレジなどの物理的な端末市場にも積極的に参入している。
「カードを読み取り端末に通したり、端末の上にかざしたり、多くのボタンを押したり、さまざまな種類の支払い方法があり、さまざまな組み合わせが考えられる」
「人は疲労する」
同社は、ロボットを約18カ月前から使い始めた。最初は1台からスタートし、その効果が明らかになった現在、導入台数を増やしている。
「人間には問題が多い。なぜなら人は疲労するし、必ずミスをする。だがロボットは決してミスをしない。当社にとって非常に有益だ」
これはつまり、我々の仕事が減るということだろうか? Adyenは、昨年、従業員1人あたりの売り上げが140万ドル(約1億5000万円)に達したと発表した。比較的少人数の企業にもかかわらず、多くの売り上げを生み出している。
AdyenのCOO、ローラント・プリンス(Roelant Prins)氏
Adyen
プリンス氏は「当社は競合相手よりも少ない人数で運営している。その方が効率的であり、競争が激化するマーケットでは当然のことだ」
「同時に、顧客が世界中に事業を展開できるようにすることが我々の役目。我々が顧客の事業展開を手助けする。顧客はさらに多くの人や市場を獲得することができ、結果として経済が活性化する」
プリンス氏が言わんとしていることは、ロボットを認めるか否かで、自動化の波に乗れるか否かが決まる。つまり、(仕事を)自動化して効率化するか、あるいは(仕事が自動化されて)廃れるかのどちらかだ。また、富める者がより富むことで、経済全体が活性化するかどうかも決まる。Adyenは、ロボットを活用した効率化によって低コストでサービスを提供し、顧客の収益アップを実現、事業拡大を促進している。
厳しい小売業
「我々はロボットによる自動化を進めている。だが小売業者にとっては厳しい時代だと考えている。彼らは一方で、アマゾンのようなEコマースと競合し、もう一方で、店舗を抱え、店舗をいかに変えていくべきかという課題に直面している」
「最終的には、決済は重要な役割を担う。我々は店舗、オンラインともに支払いを処理し、全てを一元管理する。オンラインで購入した商品を店舗で返品するようなケースでも、我々のサービスなら対応可能だ。我々は小売業者がビジネスに必要な戦略を実行できるよう、微力ながらサポートをしていく」
Adyenは、オートメーションから多大な恩恵を受けている。同社は2月、取引額が昨年から80%増の900億ドルに達したと発表、また最近、売上高が2015年の3億6500万ドルから2016年は7億2700万ドルに増えたと発表した。
また同社は、Facebookのマーク・ザッカーバーグやTwiterの共同創業者ジャック・ドーシーが資金を出しているシリコンバレーのファンド、Iconiq Capitalから2015年に出資を受けた際、企業価値を23億ドルと評価されている。
少なくとも短期的な視点では、自動化が新たな雇用を創出するか否かは分からない。
シティのグローバル・エクイティ・プロダクト部門の責任者、ロバート・ガーリック(Robert Garlick)氏は、昨年、レポートの中で以下のように述べた。
「過去のイノベーションとは異なり、テクノロジーの進化による恩恵は広く共有されていない。収入の中央値は生産性の伸びを下回り、格差は広がった」
イングランド銀行総裁のマーク・カーニー(Mark Carney)氏も、今年の初頭のスピーチで同様の指摘をした。
「多大な利益とともに、あらゆる技術革新が無慈悲にも雇用と暮らしを破壊している。つまりは、アイデンティティを破壊している。しかも、新しいアイデンティティが生まれる前にだ」
[原文:It's not just manufacturers using robots — even this fintech business is using them]
(翻訳:Wizr)