医療分野にも進出した新Apple Watch Series 4実機レポ── 転倒検知機能で救急車を呼べる

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Apple Special Eventで発表内容のサマリーについて語るティム・クックCEO。このあと会場の外で実機に触れられるハンズオンが案内された。

9月12日、アップルは本社にあるスティーブ・ジョブズシアターにてスペシャルイベントを開催。iPhone XS、iPhone XS Max、iPhone XRに加えて、最新の「Apple Watch Series 4」を発表した。

iPhone XSは、2017年発売されたiPhone Xのマイナーバージョンアップのような位置づけであり、革新的な進化はないが、着実に完成度を上げてきた印象がある。iPhone XS MaxはiPhone XSの大画面版だし、iPhone XRは6色展開し、ディスプレイは液晶、カメラはひとつに留めることでコストを抑え、普及を狙ったモデルと言える。

そんななか、前モデルから大きくバージョンアップし、印象がガラリと変わったのがApple Watch Series 4だ。

「熟成」ではなく着実な進化を続けるApple Watch

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左が40mmモデル、右が44mmモデル。デザインのルールは従来のキープコンセプトだが、手首に巻くと、見た目の印象はだいぶ変わった感じがする。

ディスプレイが30%も大きくなって、一度に表示できる情報量が格段に増した。もちろん、デザインも変わったことで、見た目の印象も従来モデルとは大きく違った感覚がある。デザインは違えど、従来モデルで利用できたベルトはそのまま使用可能だ。このあたりは、すでにお気に入りのベルトを持っているユーザーにはかなりありがたい。

ハンズオン会場で、大画面化された44mmモデルを腕に装着してみた。確かに「ちょっと大きいかな」という印象はあるものの、42mmのSeries 3を使っていた身からすると「前のモデルに比べて薄くなった」というインパクトの方が強い。意外と、44mmのサイズ感はすんなり受け入れられた。もちろん「大きい」と感じるのであれば、40㎜を選ぶというのもアリだ。

そして、Apple Watch Series 4は単にディスプレイが大型化されただけでなく、注目すべきは画期的に進化した中身の部分だ。

最大32Gの重力加速度を計測する加速度計とジャイロスコープを内蔵。独自のアルゴリズムにより、手首の軌跡と衝撃加速度を分析することで、「装着者が転倒した」ということを把握できるようになっている。もし転倒し、60秒間、身動きしなかった場合に、自動的にApple Watchが119番に電話、あらかじめ決めておいた連絡先にもメッセージを送るようになっているのだ。

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ジャイロスコープを高性能化してアップルが搭載してきたのは、なんと「転倒検知」。スマートフォンの延長線上だったり、単なるコンパニオンデバイスと考えていては、とても思いつかない機能だ。

機能的な注目は、これまでの心拍センサーに加えて、心電図も記録できるようになったことだ。新たに電気心拍センサーが搭載されたことだ。使い方は、Digital Crownを30秒間、指先で触ることにより、心調律の分類を受け取ることができるという。仕組みとしては、本体側面のDigital Crownと背面のクリスタルにある電気心拍センサーを使って計測する。

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計測方法。このように腕に巻いた状態で、逆側の腕の指先をデジタルクラウンに添えて計測する(ただし日本では……)。

心電図を計測することで、心臓が正常なパターンで鼓動しているか、重大な合併症につながる可能性のある心房細動の兆候があるかがわかる、とアップルは説明する。

ただし、この機能は9月21日の発売時には提供されず、年内に予定されているアップデートで有効になる。しかも、ひとまずはアメリカ国内のみに提供される見込みだ。

なぜ日本では心電計測機能の提供が「未定」なのか?

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電気心拍センサーが仕込んであるデジタルクラウン部分。パッと見ただけでは、センサーが新たに1つ増えたようにはまったく見えない。

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背面。こちらはアルミニウムモデル。モデルを問わず、心電図計測はできるが、日本向けには当面提供されないようだ。

心電図をとる医療機器には当然、許認可などが必要となってくる。Apple Watchに関しては、アメリカではFDA(米国食品医薬品局)でデノボ(De Novo)分類済みのECGアプリケーションを利用する。デノボとは市販前申請のことであり、つまりすでにちゃんとアメリカ内で利用していいという許可がとれているわけだ。

もちろん、日本で心電図機能を提供したければ、同様の国内認証が必要になる。現状、アップルの日本法人に確認したところ「日本での展開は現時点でお伝えできることがない」との回答だった。

ただアップルは、日本市場をとても重視しており、iPhoneでも日本でしか普及していないFeliCaに対応させるなど、ローカライズをしっかりとしてきた経緯がある。時間はかかるかもしれないが、今のアップルであれば、日本でも機能が提供される日が来る可能性はゼロではないのではないか。

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もちろん、実際のところどれくらい精度が高く、医療面において、どれくらい有用性があるのかは、専門家による検証作業が必要になるだろう。検証し、ソフトウェアアップデートをかけることで精度が上がるだろうし、将来的に次世代のApple Watchでセンサーなどが進化すれば、さらに使い勝手が改善されるということも考えられる。

1人暮らしで倒れても救急車を呼んでくれる

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文字盤のデザインもSeries 4向けに新しくなっている。

今回のApple Watchでのバージョンアップを見て感じたことがある。大げさかもしれないが、人生において、これから毎日、Apple Watchを着け続けていたら、ひょっとしたら寿命が伸びるんじゃないかという淡い期待だ。

これまでApple Watchは歩数や運動量などを計測できるなど「体を動かす時の相棒」という位置づけの製品だった。しかし、ここ最近は、体の状態を計測し続ける機能が増えてきており、今回のアップデートで心電図や転倒検知などが盛り込まれた。

例えば、一人暮らしをしていて、意識を突然失い倒れてしまっても、Apple Watchがあれば、勝手に救急車を呼んで助けてもらえるかも知れない。誰もいない夜道でひき逃げにあっても、Apple Watchがあれば助かる可能性がある。

筆者はApple Watchが発売される前は「時刻が知りたければスマホで充分」と思っていたが、初代Apple Watchを購入してからは毎日、着用するようになった。

日々の運動量もApple Watchでなんとなくチェックするし、毎日の運動量のデータが積み重なり、iPhoneで確認できるのは便利だ。

数年前、ウェアラブル機器がもてはやされたが、結局、市場で生き残り、売れ続けているのはApple Watchだけになってしまったように思う。

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Apple Watchは「ユーザーが日々、装着する」という意外と難しい課題を克服した。日々装着することで、体のデータが毎日、少しづつ蓄積されるようになった。

今後も、蓄積できるデータが増えれば、ちょっとした体の変化が出てきたタイミングですぐに病気の予兆を察知するということもある程度可能になるだろう。

(文、写真・石川温)


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。

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